9-3.【要点まとめ】 南北問題と格差是正の3つの視点について

格差とは、「階層が固定化された状態」を指します。
そして、世界には地域、医療、教育、情報など様々な格差が存在します。
なかでも根強く残る大きな格差の問題に南北問題があります。

 

【国際的格差の事例検討(南北問題の例)】

国際面で見られる格差の代表例に南北問題発展途上国と先進国との経済格差問題)があります。

南北問題を理解するにあたって、まず前提として「先進国の多くは発展途上国を植民地にしていた」ということを確認します。

そして、多くの植民地は単一栽培(モノカルチャー経済)を行っていました。ただし、発展途上国は工業やサービス業などを盛り上げるだけの土台も整っていません。そのため、植民地の多くはモノカルチャー経済で一次産品(自然から採れた加工していない産品)を生産していました。

この状況を利用して、先進国は植民地に先進国用の農産物を作らせ、貿易相手国を宗主国(植民地支配している側の国)に限定し、特定の一次産品を宗主国のみに販売させるという構造を作りました。

ところが、先進国は石油危機によって経済が停滞し、不景気となってしまいました。その結果、宗主国が商品を買えない事態となりました。宗主国が商品を買えないとなると、植民地は商品を買ってもらえるように商品の価格を下げるしかありません。これがモノカルチャー経済の問題点とも言われていますが、1つの商品の販売状況でその国の経済が左右されてしまうことになってしまいます。

そして、商品を買ってもらえない(または非常に安い値段で販売する)状況だと、国の存続にもかかわってくるくらい経済が厳しくなるため、植民地の多くは借金を増加させてなんとか国を維持してきました。しかし、一次産品の価格が下落している状況では借金が増えていく一方です。そして、デフォルト(債務不履行)やリスケジューリング(債務繰り延べ)などの累積債務と呼ばれる問題が深刻化しました。

 

なお、近年は南南問題も話題になっています。南半球に多いのが発展途上国でしたので、発展途上国間の経済格差を南南問題と呼びます。なお、南南問題の大きな要因の1つは「その国に石油という資源があるかないか」だとされています。

また、南南問題における最貧国を後発発展途上国(LDC)と呼びます。

 

このように、南北問題や南南問題などの国際的な格差の問題が根強く残っており、これらの解決方法が模索されています。

 

【発展途上国と先進国との格差を是正するには(前提)】

具体的に先進国と発展途上国との格差を是正していくために、前提として必要になるのは、「3つの援助への注目」です。ここでいう援助は「①貿易」と「②開発」と「③生活」です。

 

【格差是正の視点①:貿易の援助】

貿易の援助の1つめは、国連貿易開発会議(UNCTAD)の設立です。この会議で、プレビッシュ報告(プレビッシュというアルゼンチンの経済学者が出した理論)が出されました。この報告は、先進国による援助と貿易の充実を発展途上国が要求するものでした。つまり、発展途上国が素直に助けを求めたという話です。

その際、求めたのが特恵関税と呼ばれるものです。先進国が発展途上国と貿易をする時は発展途上国に対して特別に引き下げた関税を設定することで、発展途上国の貿易を活性化しようという考え方でした。つまり、一部だけ特別に恵まれた関税を設定しようという考えで援助をしようとしたわけです。

また、貿易の援助の2つめは、新国際経済秩序(NIEO)の樹立宣言です。当時、石油危機の影響があり、資源ナショナリズム(自分達の持つ資源を自分達で管理しようとすること)の動きが出てきました。資源を持っている発展途上国は「先進国が援助をしてくれないなら資源を売らない」という強気のスタンスを取るようになりました。

貿易の援助の3つめは「輸入代替型から輸出指向型への貿易の方針の変更」です。発展途上国の工業を守るために、輸入を制限し、輸出を拡大させることを考えました。輸入を制限して国内で工業製品を作ることで国内経済の発展を狙う政策輸入代替型と呼び、国内で作った製品の輸出を拡大する政策輸出指向型と呼びます。なお、輸入代替が多かったのはメキシコ・ブラジル・アルゼンチンなどの中南米NIEsで、輸出指向が多かったのはアジアNIEs(韓国・香港・台湾・シンガポール)だとされます。

 

【格差是正の視点②:開発の援助】

開発の援助の方法は政府開発援助(ODA)だとされています。これは、各国が発展途上国の開発のための様々な援助を行う内容の総称を指します。

ちなみに、日本は2022年度で2兆2968億円を援助にあてていますが、政府開発援助(ODA)には支出目標があり、GNPの0.7%とされています。ちなみに、日本のGNPは約500兆円なので、0.7%は約3.5兆円となります。(目標に1兆円以上届かない状態です。)また、ODAの支出目標を策定しているのがOECD(経済協力開発機構)DAC(開発援助委員会)というところです。なお、OECDは先進国クラブとも呼ばれ、先進国の国々が参加しています。日本の場合はODAの枠組みが考えられているODA大綱というものを開発協力大綱に改めています。

 

また、日本のODAの使い道として、現状日本は贈与を行っていますが、金額は多くないとされます。(ほとんどの国が贈与で大部分を占めます。)そのため、日本の場合、2兆円の大部分は借款(国際間でのお金の貸し借り)が占めています。つまり、政府開発援助という名称ですが、日本は発展途上国にお金を貸し付けているのが現状ということです。

そこで、日本はODAの一種として資金面の援助だけでなく人的資源による援助を行っています。(代表的な団体にJICA青年海外協力隊などがあります。)

そして、近年の日本のODAは資源獲得の狙いでアフリカ向けが多いとされます。

さらに、ODAで日本が貸したお金を発展途上国が使ってなにか作ろうとするときに発生する工事を日本に受注するようにしています。これをひもつき援助と呼び、現在増加しています。

 

【格差是正の視点③:生活の援助】

世界では、生活の援助として人間の基本的ニーズ(BHN)の充足を援助政策に導入することが提唱されるようになりました。

人間の基本的ニーズとは、basic human needsと言われ、「人間生活にとって最低限かつ基本的に必要とされるもの」とされます。また、人間の基本的ニーズは一義的(最も重要なもの)と二義的(次に重要なもの)に分けられます。世界では、「衣食住などの物質」を一義的とし、「水、衛生環境、教育、コミュニティなど」を二義的としています。

また、国連開発計画(UNDP)という機関が、人間開発指数(HDI)を導入しました。国連開発計画は、貧困層に直接届く援助を意識し、「貧困の定義」について改めて考えました。

人間開発指数では、「健康」・「収入」・「教育」の3つの不足を貧困とし、これら3つの不足を解消することが貧困の克服につながると考えました。

 

【※参考①:その他の取り組み】

その他の取り組みの1つは、「フェアトレード」です。先進国が発展途上国と貿易をする際に、労働に見合った対価を提供できるよう、適切な収入の獲得に努める動きです。

また、「マイクロクレジット」も注目されています。「無担保かつ低利子」で融資することで、貧困層を救おうというものです。代表的な機関にグラミン銀行があります。なお、このような社会的なビジネスをソーシャルビジネスと呼びます。ちなみに、発展途上国の貧困層はBOP(base of pyramid)市場として規模が大きいため重視されると言われています。

さらに、近年注目されているのが「MDGs(ミレニアム開発目標)」です。ポイントは、MDGsは2015年に「SDGs(持続可能な開発目標)」として、現在特に世界が注目している現状がある、という点です。

 

【※参考②:用語の正式名称】

・国連貿易開発会議(UNCTAD) … united nations conference on trade and development

・政府開発援助(ODA) … official development asisstance

・経済協力開発機構(OECD)… organization for economic cooperation and development

・開発援助委員会(DAC) … development assistance committee

・JICA …Japan international cooperation agency

・新国際経済秩序(NIEO)… new international economy order

・人間の基本的ニーズ(BHN)… basic human needs

・人間開発指数(HDI) … human development index

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