経済とは何か:「時間」と「お金」の視点から幸せについて考えてみる(機会費用/効率性と公平性)【4-1】

ある調査によると、高校生のお年玉の平均額は約1万円だそうです。

もし、1万円を使って「自分の満足度や幸福度を最も高めてください。」と言われたら、どのようにお金を使うのがよいのでしょうか。

そして、今考えたお金の使い方を実践した場合、満足度や幸福度を点数化すると何点になるでしょうか。
上限無しで点数をつけると何点がつけられるでしょうか。

金額が1万円なので回答がある程度制限されそうですが、誰しもがそれなりに幸福度を高めることが予想されます。

 

では、もし「自分の満足度や幸福度を最も高めてください。」の質問に対する金額が100万円となった場合、どのようにお金を使うのが良いのでしょうか。

そして、実際にそのようにお金を使った時の満足度や幸福度は何点になるでしょうか。
上限無しで点数をつけるとどうでしょうか。

 

ここで確認したいのが、「金額が100倍になったときに、なぜ幸福度や満足度は100倍にならないのか」です。

多くの人が満足度や幸福度がぴったり100倍にならなかったと思います。
むしろ、多くの人は金額を100倍にしても幸福度や満足度は100倍より低かったかもしれません。

仮に「お金の量=幸福度」だとするならば、金額と満足度や幸福度は比例するはずです。
比例しないとするならば、それはなぜなのでしょうか。
また、どのようにお金を使えばより高い満足度や幸福度を得られるのでしょうか。

これを考える分野を経済と呼びます。

 

【経済とは/意思決定の基本:トレードオフと機会費用】

改めて、経済とは「限られたお金でより多くの幸福度や満足度を得る方法を考えること」です。

経済を考える際には、様々な視点があります。

ここでは、経済の基本となる意思決定の2つの視点を確認します。

 

〈トレードオフと機会費用:「選ばなかった最善の利益」まで含む考え方〉

代表的なものに、「トレードオフ」という考え方があります。
これは、「何かを選ぶと、別のなにかを失う」という関係を指します。

そして、何かを選ばなかった場合に得られた利益を「機会費用」と呼びます。

ただ、これだけだとよくわからないので、具体的な数字と事例で確認します。

 

〈トレードオフと機会費用の具体的な考え方(計算の例)〉

〈トレードオフと機会費用の例〉
例えば、今日の17時~19時まで時給1500円のアルバイトを2時間する予定だったのですが、友達から同じ時間帯にカラオケに誘われたので、アルバイトを断ってカラオケに行き、2000円を払ったとします。この事例では、本来アルバイトで3000円稼ぐはずだったところを、アルバイトに行かずにカラオケに行ったことで、2000円を使ったということになります。この場合、「カラオケを選び、アルバイトでの3000円を失った」ので、アルバイトとカラオケの選択がトレードオフの関係となります。

そして、カラオケを選択した場合に、アルバイトで稼げるはずだった3000円を失っています。しかも、カラオケで2000円を使っています。
つまり、カラオケに行くことで2000円だけでなく、アルバイトで稼げるはずだった3000円も失っていることになります。

この「本来得られるばずだったお金」と「実際に使うことで失ってしまったお金」の合計金額の5000円が機会費用です。

 

このような例は、日常生活から人生の大きな選択まで、あらゆる状況で発生します。
そのため、人々は機会費用を考えながらトレードオフの状況で常に選択し、日頃からより少ないお金と時間で幸福度や満足度を高めていくことになります。

 

 

【経済の前提知識:財・サービス/生産の三要素/経済主体】

そして、これから経済を考えていく上で、前提となるのは「財」と「サービス」です。

食品や衣類など、形が有るものを「」、教育や医療など、形が無いものを「サービス」と呼び、財とサービスの取引によって、経済が成立しています。

 

また、経済に必要な財やサービスを生むために必要なものを「生産の三要素」と呼び、資源(土地や水や石油など)労働力(人間が働くこと)資本(機械や設備/それらを調達するために必要なお金)の3つが生産の三要素とされます。

そして、経済に関わる中心となるものを経済主体と呼びます。
経済主体は、家計企業政府の3つですが、企業が生産し、家計が消費し、政府が企業と家計を調整する、というようにそれぞれがやり取りをする状態を経済循環と呼びます。

これらの経済に関する前提知識をベースに、実際の経済の様々なしくみに注目していくことになります。

 

 

【経済の基本的な考え方(2つの論点)】

論点①:〈「効率性」と「公平性」の考え方〉

経済学には基本的な大きな考え方が2つあります。
1つは「効率性」か、「公平性」か、です。

〈「効率性」と「公平性」とは〉
ある人にある仕事を任されたとしましょう。
このとき、その仕事の成果に合わせて給料を払うということをすれば、効率よく人は働いてくれるでしょう。
ただし、その仕事自体の内容の高度さなども考えると、一概に成果だけで判断することはできません。
その仕事自体の給料が高いとすれば、その仕事に携わる人々は同じように一定程度の給料をもらえるという意味で公平性が保たれるでしょう。このように、資源をムダなく利用しているかどうか」を考える基準を効率性と呼び、「様々な立場の人達が、その立場に合わせて等しく扱われているか」を考える基準を公平性と呼びます。この効率性と公平性はトレードオフの関係とされており、経済学の基本的な考え方とされます。

 

論点②:〈人はインセンティブで動く〉

もう1つの考え方はインセンティブです。

1つ例を考えましょう。
近年、全国各地で教員不足が叫ばれていますが、どうすれば教員不足が解消できるのでしょうか。

教員不足の原因は残業代が出ないことや土日を含めた勤務、長時間労働などが挙げられています。
だとすれば、それらを解消すれば教員不足も解消する可能性が高まるでしょう。
つまり、給料を増やして労働時間を減らせば教員になるという行動を引き起こす人が増えると考えられます。
このように、人々がある行動を引き起こす原因のことをインセンティブと言います。

経済の世界に注目すると人々の行動を引き起こすことができる可能性があるというわけです。

 

経済分野でのこれからの学習では、経済の世界におけるいろいろな考え方を活用しながら、「限られたお金でより多くの幸福度や満足度を得る方法を考えること」をベースに、多くの事象や理論を分析・検討していくことになります。

 

 

【内容の要点まとめ】

① そもそも「経済」とは?

私たちが使えるお金・時間・資源には限りがある

限られたものをどう使えばより大きな満足を得られるか?

これを考えるのが経済

つまり経済の基本は「限られた資源をどう配分するか」

 

② トレードオフと機会費用

何かを選ぶ ↔ 別の何かをあきらめる =  トレードオフ

例)勉強する ↔ アルバイトする
旅行する ↔ 貯金する

選ばなかった選択肢のうち、最も価値の高いもの 機会費用

※選択には「目に見える費用」だけでなく「あきらめた利益」もある

★経済では「何を選ぶか」+「何を失うか」をセットで考える

 

③ 財とサービス

人々の欲求を満たすもの

=形があるもの(例:食品・衣服・自動車)
サービス=形がないもの(例:教育・医療・交通)

財・サービスの生産・消費・交換によって経済が動く

 

④ 生産の三要素

財・サービスを生産するために必要なもの

1.土地(自然資源) … 土地・鉱物・水など
2.労働 … 人間が働くこと
3.資本 … 機械・設備・お金など生産に利用するもの

生産の三要素=土地・労働・資本

 

⑤ 経済主体と経済循環

経済活動の中心となる3主体

1.家計 …  労働力を提供+財・サービスを消費
2.企業 …  財・サービスを生産
3.政府 …  公共サービスの提供・経済活動の調整

この3者が、お金・財・サービスなどをやり取り経済循環

 

⑥ 効率性と公平性

経済を考える重要な2つの視点

A:効率性 … 限られた資源をムダなく活用する
B:公平性 … 所得や機会などをどのように公平に分配するか

例)成果に応じて給料を変える → 効率性を高めやすい
  格差を小さくするために再分配 → 公平性を高めやすい

※「効率と公平」は両立が難しい場合もある = トレードオフの関係

★経済政策では「効率性と公平性のバランス」が重要

 

⑦ インセンティブ

インセンティブ=人々の行動を変化させる誘因

例)
・給料UP → その仕事を希望する人が増える
・税金を高くする → 対象となる行動が減る可能性
・補助金を出す → 対象となる行動が増える可能性

つまり
制度や価格が変化 → インセンティブが変化 → 人々の行動も変化

 

【入試チェック】

トレードオフ
→ 何かを選ぶと、別の何かをあきらめる

機会費用
→ 選ばなかった選択肢から得られたはずの最大の利益

生産の三要素
土地・労働・資本

経済主体
家計・企業・政府

効率性
→ 資源をムダなく利用

公平性
→ 所得・機会などの公平な分配

インセンティブ
→ 人々の行動を変化させる誘因

★ 経済の基本
限られた資源 → 選択 → トレードオフ・機会費用

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