【司法権とは】
司法権とは、法を司る権利です。もう少し言うと「法の支配」を実現する権利です。
なお、法の支配を実現する方法として、訴訟が用いられます。
また、訴訟の種類は全部で3種類あります。
民事訴訟・刑事訴訟・行政訴訟の3種類です。
(ちなみに、刑事訴訟は検察官(訴える側)と被告人(訴えられる側)との争いになります。)
そして、司法権は「司法権の独立」が保障されています。
要は、裁判官は誰にも邪魔されないという話です。
それを保障するため、裁判官は「良心に従ひ、独立してその職権を行ひ、この憲法と法律にのみ拘束」されるとなっています。
また、司法権の独立は「対外的独立」(立法や行政などの他の国家機関から邪魔されない)と「対内的独立」(司法内部から邪魔さ入れない)の2つを保障しています。
さらに、裁判官が罷免される理由は全部で3つです。
1つめは「心身の故障」です。心と身体が壊れたら罷免という話です。
2つめは「弾劾裁判所の決定」です。国会の判断で裁判官を罷免される可能性があります。
3つめは(最高裁判所裁判官のみの)「国民審査」です。衆議院議員選挙のときに、否決の投票を行います。
〈※参考:「司法権の独立」に関する事件〉
対外的独立に関する事例を大津事件、対内的独立に関する事件を平賀書簡問題と言います。
大津事件とは、1891年に来日中のロシア皇太子が滋賀県大津市で警察官の津田三蔵という巡査に襲われて負傷した事件を指します。(津田巡査は、ロシア皇太子が日本に来たのは日本を侵略するための準備である)という噂を信じたためにロシア皇太子を襲ったと言われています。)この事件に対して、日本政府は襲った警察官に死刑を求刑しました。(ロシアとの外交を考えた時に、死刑にしておいたほうがよいだろう、という日本政府の判断です。)ところが、本来の日本の法律に従うと死刑は出せず、無期懲役の判決となります。そこで、担当の裁判官が日本政府と本来の法律のどちらに従うべきか悩んでしまいました。その時、大審院(当時の最高裁判所)の長であった児島惟謙という人が「司法権は独立しているから、日本政府の干渉を判断基準とする必要はない」として激励し、本来の法律に従って判決が出されたという出来事がありました。この出来事は、日本政府という対外的なものから「司法権の独立を守った」として有名な事件になっています。なお、日本史では、大津事件を受けて当時の外務大臣だった青木周蔵という人が責任を取って辞任したということも扱われます。
また、平賀書簡問題とは、札幌地方裁判所で行なわれた長沼ナイキ基地訴訟(自衛隊の基地建設について、憲法9条違反であることを根拠に止められるかという訴訟)について、担当となった裁判官に当時の札幌地方裁判所の所長であった平賀健太という人が「国が裁判で負けるのはまずい」と考えて、判決の方向性をまとめたメモ(このメモを書簡と言う)を担当の裁判官に渡したという問題です。本来、裁判官は良心に従い、独立してその職権を行うことになっているのにもかかわらず、書簡を渡したことは裁判の干渉に該当して司法権の独立に反するのではないか、ということで注目されました。この問題は裁判官が別の裁判官に干渉したという対内的独立を侵害しているとして話題になりました。
【日本の裁判制度】
裁判所は、「最高裁判所」と「下級裁判所」の大きく2種類に分かれます。
また、下級裁判所は「高等裁判所」、「地方裁判所」、「家庭裁判所」、「簡易裁判所」の4つをまとめて表現します。
(現在、高等裁判所は知的財産を専門に扱う知的財産高等裁判所もあります。)
なお、裁判所については禁止されていることが2つあります。
1つは、特別裁判所の設置の禁止です。
特別裁判所とは、戦前の行政裁判所・皇室裁判所・軍法会議という3つを指しますが、これらは全て設置が禁止されています。
もう1つは、行政機関が終審(最終的な判決)を出すことの禁止です。
そのため、戦後から現在まで行政裁判所は存在しません。ただし、行政裁判は現在も行なわれること、終審の前段階までであれば行政機関の裁判はOKであることには注意が必要です。
また、裁判の監視として、裁判は原則公開になっています。(裁判官の判断で、場合によっては非公開もありえます。)
そして、「裁判を受ける権利」が保障されています。
さらに、「三審制」という制度が設けられており、1つの裁判について同一事件で3回まで裁判することができるとされています。
なお、1回目の裁判に納得いかず、2回目の裁判に行うことを「控訴」と呼び、2回目の裁判に納得いかず、3回目の裁判を行うことを「上告」と呼びます。
【憲法と裁判に関連する用語】
[違憲審査権]
裁判所が、法律や命令などについて違憲かどうかを判断する権利のことです。担当は全ての裁判所ですが、最終的に判断する権限は最高裁判所が持ちます。
そのため、最高裁判所を別名で「憲法の番人」と呼びます。
また、日本の違憲審査権は「具体的な事件を前提として、その事件を解決する上で必要な限度でのみ違憲審査を行う」ことになっています。このような制度を付随的違憲審査制と呼びます。(アメリカもこの制度を採用しています。)
つまり、「具体的事件を前提とせず、法令や国家行為に関し憲法判断を行う」わけではないということです。
そのため、日本で違憲審査権を出した場合、その事件にのみ法律が無効となります。要は、法律が違憲だからといって法の削除は行わないということです。(法の削除は国会の仕事だからです。)
なお、具体的事件を前提としない違憲審査制を抽象的違憲審査制と呼びます。(ドイツやフランスはこの制度を採用しています。)そのため、法律が成立後にすぐ憲法裁判所で審査し、違憲の場合は作られた法律がすぐに無効となります。
また、イギリスはそもそも違憲審査権がありません。
[統治行為論]
高度に政治的な問題は違憲審査の対象外とする考え方を指します。(司法の判断を回避しているのと同じ状態です。)
統治行為論の例として、砂川事件や長沼ナイキ基地訴訟などがあります。