【資本主義と労働契約】
現在の多くの国は資本主義を採用しています。
資本主義経済とは、世の中が資本家と労働者に分かれる経済システムを指します。
なお、資本家はお金を生み出す手段を持っていて、労働者はお金を生み出す手段を持っていないという違いがあります。
そのため、労働者は自分の労働力を売ってお金を稼ぐことになります。
逆に、資本家は労働者を雇い、労働力を買ってお金を生み出す手段をより効率的に利用し、さらにお金を生み出すことを考えます。
そこで、資本家は労働者を雇い、労働者は資本家に雇ってもらうという、資本家と労働者がお互いに納得して雇う・雇われるの関係が成立することになります。この関係が成立した状態を労働契約と言います。
【より円滑で充実した労働契約のために】
ある労働者が資本家と労働契約を無事結んで就職することができたとしましょう。
ところが、全員が自分の希望した納得する職業に就けるわけではありません。自分の希望する職業に就けている人の割合は約半分だと言われています。
また、学生生活が終了して意気揚々と就職しても辞めてしまう若者も多くいます。中卒は7割が、高卒は5割が、大卒は3割が3年以内に離職すると言われます。
ちなみに、離職の理由第1位は「思っていたものと違う」だそうです。
ということは、労働者は採用された後も、自分の労働に対して苦しむ可能性があるわけです。
ただし、自分の収入面やキャリアなどのことを考えると、簡単に仕事を辞めることはできません。
だとしたら、「職場内で仕事の面白さを感じられればいいのでは?」という発想はどうでしょうか。
仕事は幸せの全てではありませんが、幸せの一部を担う可能性は高いです。
なので、仕事で幸せが得られるならそれはとても良いことです。
もし、職場の様子が思っていたものと違うなら、思っていたものにすればいいのです。
そこで、現在の日本では法律の充実の検討が考えられます。
つまり、法律を用いて資本家と労働者がお互いに納得する落としどころを見つけていきましょう、というわけです。
(基本的に、資本家と労働者を比較したときにどうしても労働者のほうが、立場が弱くなってしまいます。そこで、資本家と労働者がなるべく対等に労働契約を結ぶことができるように考えられたのが法律の制定というわけです。)
労働に関する大きな法律は全部で3つです。労働組合法・労働関係調整法・労働基準法がまとめて労働三法と呼ばれます。
【労働組合法について】
労働三法の1つめは労働組合法です。
労働組合とは、労働者どうしが手を組んで作られた団体のことです。
資本家と労働者が対等な関係なら良いのでしょうが、やはり給料をもらう立場である労働者が不利になってしまうと良くないので労働者どうして手を組もうという話です。
そこで、労働組合には3つの権利が労働組合法で決められており、まとめて労働三権(労働基本権)と呼ばれます。
1つめは労働組合として労働者どうしで手を組む権利(団結権)です。
2つめは労働組合が資本家と交渉できる権利(団体交渉権)です。
3つめは労働組合が資本家に対して争うことができる権利(団体行動権/争議権)です。
ちなみに、争議権として具体的にどのような方法で争うのでしょうか。
争議権の手段はストライキ・サボタージュ・ピケッティングの3つです。
ストライキは仕事を完全にやらないこと、サボタージュは仕事の質や生産性を下げることを指します。(サボタージュから派生した言葉が「サボる」ですね。)
また、ストライキを継続している状態をピケッティングと呼びます。
一方、使用者の争議権に対抗する手段はロックアウトの1つしかありません。
ロックアウトとは作業所を閉鎖することで、「仕事をさせない」という対抗手段を取ることになります。
なお、労働組合の正当な争議の場合は刑事上・民事上の免責が認められています。つまり、ストライキやサボタージュなどが処罰や損害賠償の対象とはなりません。
また、労働組合は、昔は産業ごとにつくられていましたが、現在は企業ごとに作られるのが一般的です。さらに、現状は労働組合の組織率も低下し、20%を下回っている状態にあります。
また、労働組合法では、労働組合は資本家と労働協約を結ぶことが可能となります。
労働協約は資本家と労働組合との間での取り決めのことを指します。
ちなみに、労働者個人が資本家と結ぶのが労働契約です。個人が契約、組合が協約ですね。人々が協力して組合ができているので。
さらに、労働協約のほうが労働契約より強いという特徴もあります。(強さは労働協約>労働契約となります。)
ただし、公務員の労働三権だけは制限がかかっており、一般の公務員は労働協約と争議権が認められていません。
さらに、警察消防や自衛隊などの治安維持に関わる公務員は労働三権全てがありません。
そして、使用者が労働組合の邪魔をすることは許されていません。これを不当労働行為の禁止と呼びます。
不当労働行為の例は、「組合に加入しないなら雇う」という条件をつける(これを黄犬契約と言います。) / 使用者が労働組合との話し合いに応じない / 労働委員会に労働者が告げ口をしたらクビ / 労働組合の活動資金を援助すること(労働組合の活動資金の援助は、労働組合の自主性を使用者が奪ってしまうことになるため、ダメだとされています。)などです。
これらは全て不当労働行為として禁止されています。
なお、不当労働行為の対応は行政委員会の一種である労働委員会というところが担当します。労働委員会は使用者委員、労働者委員、公益委員の3者で構成されています。
このように、労働組合という形で資本家と仲良くなりましょう、と労働組合法が機能しています。
しかし、それでも普段の人間関係と同じでどれだけ仲の良い友人や恋人だとしても、ケンカしてしまうことはあるでしょう。
そこで、法律では資本家と労働者がケンカした場合の対策を考えています。
それが2つめの労働関係調整法です。
【労働関係調整法について】
労働者と資本家が争う場合を労働争議と言いますが、この労働争議を調整するので労働関係調整法です。
調整は「斡旋→調停→仲裁」の全部で3段階です。
まずは、当事者同士で自主的に解決することを目指します(斡旋)。
それでもダメなら調停委員会というのが間に入って積極的に解決を目指します(調停)。
それでもダメなら労働争議の結論を仲裁委員に委ねます(仲裁)。
ただし、病院・電力・電車などの公益事業と呼ばれる事業が大規模な争議を起こすことで人々の経済や生活に大きな影響があると認められる場合は、内閣総理大臣が公益事業に対して50日間のストライキ禁止をさせることができます。これを緊急調整と言います。
なお、公益事業はそもそも「抜き打ちでストライキを行うこと」が禁止されており、ストライキを行う場合にはストライキを行う10日前までに予告しておく義務があります。それだけ、公益事業のストライキはインパクトが大きいというわけです。
このように、労働関係を調整して、資本家と労働者が仲良くやっていきましょうという話になるのですが、思い出しましょう。
仕事を辞める理由の1位は「思っていたものと違う」でした。ということは、資本家や労働者同士のやり取り以外にも改善点がありそうです。それが「働き方」です。
近年は、コロナの影響などもあり、職場の働き方が多様になってきています。そのため、「働き方が自分に合わない」ということが「辞めてしまう原因につながる」のは十分に考えられます。
そこで、働き方について決められた法律が3つ目の労働基準法です。
【労働基準法について】
労働基準法では、労働条件の最低基準を規定しています。
・労働時間は1日8時間(週40時間)以内である
・休日は必ず週に1日は入れる
・男女同一賃金である(同一労働同一賃金ではありません)
・15歳未満を働かせることの禁止、解雇の際は事前に予告義務が必要である
などの基準です。
(給与については最低賃金法で、安全については労働安全衛生法で決められており、労働基準法の範疇にはなりません。)
ちなみに、労働基準が適切に守られているかどうかを監督するのが労働基準監督署と呼ばれるところです。
なお、労働基準法に違反した場合は、違反部分だけが無効になります。
ただし、労働基準法で大事なのは「近年の働き方の多様化に合わせて労働基準法が改正されてきた」という点です。その結果、いくつかの特例が誕生しました。
1つめは、フレックスタイム制です。
この制度のおかげで企業によっては「午後から出社して午前中を有意義に過ごそう」/「朝早くから出社して午後の時間を自分の趣味にあてよう」などといったことが可能になります。
つまり、フレックスタイム制とは、「1日の労働時間を守れば、始業と終業は自由に決めてよい」という制度です。
2つめは、変形労働時間制です。
この制度のおかげで企業によっては「月曜は10時間働くけど火曜は6時間だけ働こう」/「1日10時間働くことにして金曜を休みにすれば週休3日が実現する」などといったことが可能になります。
つまり、変形労働時間制とは、「1日の労働時間を変形し、1か月単位や1年単位で見て労働基準を満たせばOK」という制度です。
3つめは、裁量労働制です。
この制度のおかげで企業によっては「今日は6時間だけ働いたけど8時間働いたことにして帰ろう」などといったことが可能になります。
つまり、裁量労働制は「どれだけ働いたとしても一定時間を労働したとみなす」という制度です。そのため、別名をみなし労働制と呼びます。
また、当然ですがみなし労働制は「今日は10時間も働いたけど8時間だけ働いたことにしてしまう」というように逆もあり得ます。そのため、裁量労働制では残業代が出ないことも考えられます。
その他にも、近年は規制緩和が進み、以前は、女性は時間外労働の制限や深夜労働の禁止などの規定もあったのですが、現在は撤廃されています。
また、差別労働の禁止も規定されており、たとえ不法就労であった人にも差別労働の禁止は適用されます。
これだけ働き方が多様化している現代社会で、どのような企業で働くことが幸せにつながるのでしょうか。
【※参考:労働組合の歴史】
労働組合は世界と日本でそれぞれ別の動きを見せました。
世界では、最初にインターナショナルと呼ばれる労働者や社会主義者が集まる団体が作られました。この団体は2度登場したため、第1インターナショナルと第2インターナショナルがあります。その後は、国際労働機関(ILO)が国際連盟とともに登場し、労働に一層の目を向けるようになりました。
日本では、労働組合期成会と呼ばれる、労働組合を準備する団体が登場しました。ただし、この団体は治安警察法や治安維持法によって取り締まりを受けたため、総評(日本労働組合総評議会)と同盟(全日本労働総同盟)と呼ばれる別の二大勢力の労働組合が登場しました。(総評は春闘を定着させたことで有名になっています。)ただし、二大勢力は解散し、連合(日本労働組合総連合会)に再編成されました。また、連合とは別路線の全労連(全国労働組合総連合)も結成されています。