商品を買うときは、騙される消費者が悪いのか(消費者主権と消費者問題)【6-4】

人々が買い物をするときに気を付けていることはなんでしょうか。

 

人々は多くの買い物をしますが、その際に不必要に商品を買ってしまったり、場合によっては商品の販売者に騙されて商品を購入したりするなんてことがあるのかもしれません。

もし、消費者が商品の販売者に騙されているとしたら、騙されてしまうのは消費者が悪いのでしょうか。

 

逆に、「SNSの広告を信じて契約したのだから、騙された自分が悪い」

本当に、それだけで終わる問題でしょうか。

商品を売る企業は、商品の特徴やリスクをよく知っています。
一方、消費者は限られた情報から短時間で判断しなければなりません。
さらに、広告や周囲の人の行動によって「欲しい」という気持ちそのものがつくられることもあります。

つまり、消費者問題は単純な自己責任論だけでは説明できません。

そこで必要になるのが、消費者の選択を市場の中心に置く消費者主権と、その実現を支える権利・行政・法律です。

 

この記事では、消費者主権というテーマについて、

・消費者問題が起こる原因
・ケネディの4つの権利
・消費者庁・国民生活センター・消費生活センター
・クーリングオフやPL法などのルール

を、流れで整理します。

 

【消費者主権とは?=「消費者が生産を方向づける」という考え方】

〈消費者主権とは―消費者の選択が生産を方向づける〉

私たちは、食料品、衣服、スマートフォン、動画配信サービスなど、さまざまな商品やサービスを購入しています。
一方で企業は商品を自由につくっているように見えますが、消費者がまったく買わない商品をつくり続けることはできません。
ある商品が多く買われれば、企業はその商品の生産を増やそうとします。反対に、ほとんど買われなければ、生産を減らしたり、商品を改良したり、市場から撤退したりします。

このように、消費者の選択が、何をどの程度生産するかを方向づけるという考え方を、消費者主権といいます。

選挙で有権者が一票を投じるように、消費者は買い物を通じて企業や商品を選んでいると考えることもできます。

〈自由な選択が成り立つための条件(消費者問題とは)〉

ただし、商品を購入したという事実だけで、消費者が本当に自由に選択したとは限りません。

消費者主権が実質的に機能するためには、少なくとも次の条件が必要です。

  • 商品の安全性が確保されている
  • 重要な情報が正しく伝えられている
  • 複数の商品やサービスから選択できる
  • 強引な勧誘や誤解を招く表示がない
  • 被害に遭ったときに相談や救済を受けられる

情報を隠されたり、虚偽の説明を受けたり、解約しにくい仕組みに誘導されたりした結果として契約したなら、それを消費者の自由な選択と呼ぶことはできません。

ただし、現在の社会では消費者の自由な選択の中に潜む問題が多様化してきています。

そんな消費者が巻き込まれてしまう可能性があるものを消費者問題と呼びます。

 

〈消費者問題の例①:多重債務〉

消費者問題の代表例としては、多重債務が上げられます。

 

突然ですが、大学生の借金の理由第1位はなんでしょうか。

第1位は、他の理由を圧倒的に引き離して奨学金や生活費になります。
なぜ、若者が多重債務を考える必要があるのか。
それは、奨学金の返済などに苦しんでいる現状があるからです。

 

〈消費者問題の例②:食の安全〉

また、消費者問題としては食の安全の問題もあります。

日本はフードロス(本来食べられたはずの食品の廃棄)が多いとされています。
しかも、日本の廃棄の多さは、食料廃棄で世界の飢餓を解決できるくらい多いと言われています。

それだけ日本が多くのフードロスを発生させるとしたら、品質を落としたり、消費期限が切れたりすることへの配慮をしなかったりするのでもいいのでは?という発想も出てきています。

そこで、消費者が品質を少しでも確認できるように、という観点からトレーサビリティー制度が進められています。
トレーサビリティーとは「追跡」という意味で、商品の流通経路を自分で確認できます。

 

〈消費者問題の例③:薬害〉

さらに、近年は薬害なども注目されるようになりました。

昔、ある整腸剤を飲んだら死んだ人が続出し、スモン病と呼ばれたあたりから、薬害が話題となりましたが、あくまでもこれは昔の話です。なぜ今になって薬害が注目されるのでしょうか。

それは2020年から流行した新型コロナウィルスの影響です。コロナワクチンの副作用が薬害に該当するのでは?ということが話題になったため、近年薬害の話題が再び盛り上がってきました。

 

〈消費者問題の例④:悪徳商法〉

他にも、悪徳商法も問題となっています。

悪徳商法は、商品を勝手に送りつけるネガティブオプション、相手を勧誘して増やしていくマルチ商法、電話で会う約束をしてから販売するアポイントメント商法など、多様化しています。

 

このように、消費者問題は様々な視点から考えられるのですが、なぜそもそも消費者問題というものが発生してしまうのでしょうか。その理由はなんなのでしょうか。

 

【消費者の判断を阻害する要因】

消費者問題が発生する原因を心理学的な観点から分析します。

 

〈阻害要因の例①:売り手と買い手の情報の非対称性〉

まずは、情報の非対称性です。
市場の失敗の1つで扱われた情報の非対称性と同じです。商品を売る側と買う側で持っている情報量に差があることを指しますが、当然情報量の少ない買う側は売る側に騙されて買ってしまう可能性は否定できません。

 

〈阻害要因の例②:広告が欲望をつくる依存効果〉

また、依存効果も有名です。
最近、なにか商品を買った経験はありますか?なぜ、その商品を欲しいと思ったのでしょうか?

要因の1つに、SNSなどの広告宣伝があげられます。なにげなくSNSを見ていた時に入ってきた広告に引っ張られて買ってしまうことは容易に想像できるでしょう。
このような、企業の広告や宣伝に依存して商品を買ってしまうのを依存効果と呼びます。

 

〈阻害要因の例③:他人の消費に影響されるデモンストレーション効果〉

さらに、デモンストレーション効果も有名です。
友達や恋人とコンビニへ買い物に行き、友達や恋人が買っているモノを見て欲しくなり、つい買ってしまうとしたら、デモンストレーション効果が発動しています。
このように、他の消費者に左右されて買ってしまう心理的効果をデモンストレーション効果と呼びます。

 

これらを考えると、商品を買う側と売る側のどちらが悪いという結論を出すのが難しいです。

そこで、現在は消費者自身が消費者問題に対して対策することができるのが重要だとされます。

 

では、消費者問題に対してどのような対策ができるのでしょうか。

 

 

【消費者問題と消費者主権の対策例】

〈対策例①:消費者運動〉

対策例の1つに、消費者運動があげられます。
アメリカのケネディ大統領は「消費者の4つの権利」を提唱しました。
「安全への権利」、「知らされる権利」、「選ぶ権利」、「意見を聞いてもらう権利」の4つです。

また、日本では「生協(=生活協同組合)の結成」なども消費者運動としてあげられます。

 

〈対策例②:消費者行政〉

その他の対策例としては、行政に頼ることが考えられます。日本では、消費者問題に対応する組織として3つが用意されています。
ポイントは、それぞれの組織がどこの管轄か、という点です。

1つめは消費者庁です。国の行政として機能します。

2つめは国民生活センターです。独立行政法人(民間を一部導入した公共部門)が担当します。

3つめは消費生活センターです。各地方公共団体にありますが、幅広く様々な相談に対応してくれます。そのため、消費者問題の対策として「消費生活センターに頼る」という選択は十分にあり得ます。

 

ただし、消費者運動や行政への関わり以上に注目する必要があるのが、法律です。

 

【消費者問題と法律】

〈消費者問題と法律を考える際の大前提〉

消費者問題に関する法律として、前提を確認しましょう。

消費者問題で最も大事な法律に消費者保護基本法というのがあります。
名称の通り、消費者問題に巻き込まれた消費者を守りましょう、という法律ですね。この法律で大事なのは、現在は存在しない、ということです。

現在は消費者基本法に変わりました。
つまり、「消費者保護基本法→消費者基本法」へ法律が切り替わったということになります。
なお、消費者基本法は「保護」がなくなった分、自立支援を重視しています。つまり、自立支援が消費者問題の前提となっています。

 

これを踏まえ、具体的に5つの法律に注目します。

 

〈法律例①:特定商取引法〉

1つめは、特定商取引法(※1999年までは訪問販売法)です。
この法律のポイントは「クーリングオフ制度」の存在です。クーリングオフは「訪問販売」は「8日間」「無条件で」契約解除できる制度です。

 

〈法律例②:製造物責任法(PL法)〉

2つめは、製造物責任法(PL法)です。
この法律のポイントは「企業の過失の有無にかかわらず損害賠償の責任を負う」という点です。
つまり、企業の無過失責任を認める、ということになります。
この法律によって、消費者は欠陥商品の証明だけでOKとなりました。

 

〈法律例③:消費者契約法〉

3つめは、消費者契約法です。
スマホの購入、電子書籍や音楽配信の利用、賃貸住宅の契約などが該当します。ポイントは、「事業者の不当な勧誘は取り消しが可能である」こと、「消費者の権利を不当に害する契約は無効である」ことがあげられます。

なお、消費者契約法に伴って、2006年に消費者団体訴訟制度が開始しました。
この制度によって、国が認めた団体が個人に代わって訴訟を起こせるようになりました。

 

〈法律例④:金融商品販売法〉

4つめは、金融商品販売法です。
金融商品の販売の際に、リスクがあること/契約の期間など、の説明がなければ契約解除や損失の補填をしてもらうことができるという法律です。

 

〈法律例⑤:預金者保護法〉

5つめは、預金者保護法です。
カードの盗難や偽造によって預金を引き下ろされた場合、金融機関に補償義務があるという法律です。

 

これらのように、消費者問題に対して様々な法律が存在します。そう考えると行政の存在や法律など、消費者を守る仕組みを多く知る必要がありそうです。

 

はたして、消費者自身が自分を守るためには、今後何が必要なのでしょうか。

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