2-10. 「国民」が「国」に請求できることとは(請求権/請願権・国家賠償請求権・裁判を受ける権利・刑事補償請求権)

もし、あなたや家族が、国や自治体のミスで大きな損害を受けてしまったら。
もし、警察や検察の間違いで、やってもいない罪で長いあいだ拘禁されてしまったら。

そんなときに「仕方ない」で終わらせず、国に対してちゃんと文句を言ったり、やり直しを求めたり、補償を求めたりできる権利があります。
それが、日本国憲法で保障されている「請求権」です。

このページでは、
・4つの請求権(請願権・国家賠償請求権・裁判を受ける権利・刑事補償請求権)
・免田事件を通して見る、裁判と刑事補償請求権の意味

を、重要なポイントとあわせて整理していきます。

なお、自由権・参政権・社会権といった基本的人権の全体像は、
こちら(「市民革命後、人々は国に何を求めたのか?」)で整理しています。

 

【請求権の4つの内訳(請願権・国家賠償請求権・裁判を受ける権利・刑事補償請求権)】

請求権は大きく4つを確認しましょう。

 

① 請願権

1つめは「請願権」です。

請願権は、国などに対して「自分の希望を述べる権利」だと思って下さい。

方法の例としては署名を集めることなどが考えられるとされています。

 

② 国家賠償請求権

2つめは「国家賠償請求権」です。

これは、公務員が法律に反する行為をして、国民が不利益を被った場合に国に損害賠償を請求することができる権利です。

「国家」に「賠償」を「請求」できるので国家賠償請求権と呼びます。

 

③ 裁判を受ける権利

3つめは「裁判を受ける権利」です。

名称の通り、裁判を受けることができる、という権利です。
裁判を受ける権利を憲法で保障しているという話ですね。

 

④ 刑事補償請求権

4つめは「刑事補償請求権」です。

これは、裁判と一緒に確認していきましょう。

 

 

【免田事件と刑事補償請求権】冤罪と補償の意味

免田事件のあらすじと判決 ― 自白だけで死刑判決、それでも無罪に

[判例:免田事件

熊本県人吉市というところで、強盗殺人事件が発生しました。
その時に犯人であろう人が免田さんという男性だったので免田事件と呼びます。

免田さんは犯人の疑いがあったので、取り調べを受けることになりました。
ところが、免田さんにはアリバイがあり、免田さんが犯人であるという証拠が全く出てこないため、免田さんが強盗殺人をしていない可能性が高まってきました。
すると、取り調べの際に拷問に近いような、脅しに近いような状況が発生しました。

その結果、免田さんは取り調べに耐えきれず「私がやりました。」と自白しました。
つまり、この事件の証拠は「免田さんの自白のみ」という状況です。

このような状況で、免田さんにどのような判決を出すべきでしょうか。

 

裁判所は、この事件に対して免田さんに死刑判決を出しました。

そのため、免田さんは死刑執行までの間、刑務所に入れられることになったのですが、免田さんは死刑判決がおかしいと思い、改めて裁判をしてほしいこと(これを再審と言います)を要求しました。

その結果、実に32年後に再審が行われ、無罪判決が出ました。

このときに、「32年も刑務所に入れてしまっていてごめんなさい」ということで国が免田さんにお金を払うために、免田さんが用いた権利を刑事補償請求権と呼びます。

つまり、「犯罪の可能性があるために禁されたが無罪だった時に、拘禁していた期間のお金を補償します」という権利を刑事補償請求権と呼びます。

 

免田事件から分かること ― 裁判と補償の重さ

また、今回の事例のように、誰かに対して無実の罪を着せること冤罪とも表現します。

 

※なお、免田事件のような冤罪を防ぐためのルール(令状主義・黙秘権・一事不再理など)は、こちら(「裁判のときに憲法が守ってくれるものとは(人身の自由/令状主義・黙秘権/外国人と人権)」)でまとめています。

 

ちなみに、今回の事例の場合、免田さんに刑事補償請求権ではいくら支払うのが良いのでしょうか。

 

実際に、免田さんに支払われた金額は約9千万円とされています。(金額が高いか安いかは議論の余地がありますが。)

このようにして、免田さんが無罪となって安心した、という意見もあると思います。

 

でも、もし免田さんが犯人ではないとしたら、免田事件の真犯人は誰なのでしょうか。

 

【あわせて読みたい】

 

【参考:4つの請求権を一気に整理】

このブロックで確認すること

– 請求権とは何か
– 4つの請求権の中身と条文番号
– 免田事件と刑事補償請求権の意味

 

1.請求権とは?

– 国に対して「こうしてほしい」と具体的な行為を求める権利。
– 請願権(16条)・国家賠償請求権(17条)・裁判を受ける権利(32条)・刑事補償請求権(40条)の4つが代表。

 

2.4つの請求権

– 請願権 … 国や地方公共団体に希望・意見を伝える権利。署名などで行う。
– 国家賠償請求権 … 公務員の違法な行為で損害を受けたとき、国や公共団体に損害賠償を求める権利。
– 裁判を受ける権利 … 自分の権利が侵害されたとき、裁判所に判断を求めることができる権利。
– 刑事補償請求権 … 無罪なのに拘禁されていた人が、その期間について補償を求める権利(冤罪と深く関わる)。

 

3.免田事件と刑事補償請求権

– 自白だけを証拠に死刑判決→32年後の再審で無罪となった事件。
– 無実の人を長期間拘禁してしまったことへの補償として、刑事補償請求権が使われた。
– それでも失われた時間は戻らないことから、冤罪を防ぐしくみの重要性も分かる。

 

請求権は、「国に向かって何かを求める人権」として、自由権・社会権などとあわせて整理しておくと、人権全体のイメージがつかみやすくなります。

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