政治とは、物事の優先順位を決めることです。
現在の様々な国において、物事の優先順位を決めるためには、大きな3つのしくみがあります。
そのしくみを「①国民主権」・「②議会制民主主義」・「③多数決原理と権力分立」と呼びます。
【国民主権】
民主政治は「基本的人権の尊重と国民主権に基づく」とされています。
(リンカンは「人民の、人民による、人民のための政治」と表現しました。)それくらい、政治には国民主権が重要であるということです。
では、もし政治で国民主権を実現していくとしたら、どのような方法が考えられるのでしょうか。
現状、政治で国民主権を実現する方法の1つが「参政権の保障」です。
つまり、国民が選挙を通して政治に参加することで、議員に国民主権を実現させてもらうように働きかけていこうという話です。参政権の保障は国民の権利の実現のためにとても重要だと言われていますが、
なぜ、参政権の保障がそんなにも重要なのでしょうか。
それは、どの国も昔は選挙制度が制限選挙だったからです。
制限選挙とは、選挙で投票する権利を持っている人に条件がついていることを指します。(昔の日本は、「直接国税15円以上を納めた男性のみ」などの制限がありました。)
つまり、投票できる人に制限がかかっていたので制限選挙です。
ただし、それだと一部の人しか政治に参加せず、一部の人の主権を保障するだけになってしまい、本当の国民主権とは言えません。
そこで、制限選挙を辞めて制限をなくす形の普通の選挙を実施しようとしました。これを普通選挙と呼びます。
制限をなくすことで、本当の国民主権が実現できると考えられています。
つまり、参政権の保障のために世界各国は選挙制度を「制限選挙から普通選挙に移行させた」ということになります。
ちなみに、制限選挙から普通選挙に移行するきっかけとして有名なのは、イギリスのチャーティスト運動だとされます。(チャーティスト運動と呼ばれる運動で普通選挙の実現につながりました。)
【議会制民主主義】
議会制民主主義とは、「間接民主制」のことだと思ってください。世の中で物事を決めるときの基本原理です。
ちなみに、対義語を「直接民主制」と呼びます。
直接民主制は「物事を自分たちで直接決める」ので直接民主制です。そのため、物事を決めるのに全員参加になります。
間接民主制は「物事を決めるのに誰かが間に入る」ので間接民主制です。そのため、物事を決めるのに代表者の参加になります。この代表者が集まる場所が議会なので、議会制民主主義です。
【多数決原理と権力分立】
複数人で物事を決定する時の基本は「多数決」です。
ところが、多数決にはいくつかの問題点があります。それはなんでしょうか。
多数決の問題点の1つは、「少数意見が排除される」ことです。
当たり前といえば当たり前ですが、その分、多数決の裏ではやはり少数意見の尊重が必要になります。
もう1つは、「よくわからない意見に支配される可能性がある」ことです。
多数決の際に、様々な情報を全員が持っていて、全員が真剣に相当な時間をかけて話しあえば、多数決でもある程度納得のいく方向性が見えるかもしれません。
しかし、政治の世界などでは物事をよく調べず、なんとなくで立候補者に投票する人も多くいるわけです。
そのため、なんとなくで投票するような人達のほうを向いた政治を行うと、議会が知識を持たない人達に支配されてしまう可能性が考えられます。
知識を持たない労働者や農民などの集まりを大衆と呼びますが、大衆が知識を持たずに投票する政治の状況を大衆民主主義と呼びます。
そして、大衆民主主義が進むと、大衆の支持を一気に得て独裁政治が進んでしまうということも否定できません。
「大衆民主主義から独裁が生まれるのか?」という疑問を抱くかもしれませんが、多くの大衆がある政党やリーダーを支持して成立した政治体制をファシズムと呼びます。(ドイツのヒトラーなどはファシズムの代表的な人物です。)
ただし、独裁政治を行なってしまうと、また絶対王政のように王様に苦しめられる人々が出てきてしまうかもしれません。そこで、安易にファシズムにならないように対策が必要となります。
そこで考えられたのが権力分立です。
ファシズムの大きな問題は権力が集中している状態だということです。(権力が集中しているからこそ、独裁として振る舞えているわけでもあります。)
だとしたら、権力については、独裁のように権力を1つに集中させるのではなく、権力を複数に分けあい、お互いの権力がお互いに抑制し合い、それぞれの権力が偏ることなくバランスをとる状況が必要になるはずです。
この状況を「チェック&バランス(抑制と均衡)」と表現します。
つまり、権力を分けて「抑制(チェック)」と「均衡(バランス)」することが重要だというわけです。
この考え方を具体化した有名人がモンテスキューという人であり、この人が『法の精神』という著書で「立法・行政・司法」の3つに権力を分けるべきであるとする三権分立という考え方を示しています。(日本も立法・行政・司法の三権に分立しています。)
なお、社会契約説のロックはモンテスキューと同じように権力を分けるべきだとしていましたが、権力は「立法権と執行権の2つに分け、立法権を優先すべきである」としました。(モンテスキューは三権とも同じバランスの扱いだと考えています。)
はたして、物事(意見)を決定するのに、最も良い方法はなんなのでしょうか。また、話し合いに参加する人々が最も意識すべきことはなんなのでしょうか。
【※参考:日本の選挙権の歴史】
日本の選挙権は、制限選挙→男子普通選挙→完全普通選挙の順で拡大していきました。
ちなみに、選挙権で制限される要素は年齢・性別・納税額の3つです。
最初は、1889年の「25歳以上の男子/直接国税15円以上」でした。
また、1900年に「直接国税10円以上」、1919年に「直接国税3円以上」と納税額が減っていきましたが、「25歳以上の男子」が条件であることは変わりませんでした。
そして、1925年に普通選挙法が成立し、選挙権(投票)の条件が「25歳以上の男子」のみで、納税の条件がなくなりました。
その後、1945年に「20歳以上の男女」まで拡大され、完全普通選挙が実現しました。
初めての女性参政権は1945年ということになります。
なお、2015年に「18歳以上の男女」まで選挙権が拡大し、現在も続いています。
つまり、「25歳以上の男女/直接国税15円以上→10円以上→3円以上→なし」→「20歳以上の男女」→「18「歳以上の男女」と選挙権が拡大していきました。