4-15. 財政の3つの役割を一気に理解(資源配分・再分配・財政政策)

自分の住んでいる都道府県や市町村が抱えている課題や改善点をあげるとすると、なにが考えられるでしょうか。

人口減少による地域の過疎化、高齢化による社会保障の問題など、それぞれの市町村でそれぞれの課題を抱えています。
しかし、課題はそのまま放置しておくわけにはいきません。いずれは解決する必要があります。

 

では、自分の住んでいる町で考えられる課題や改善点は、どのようにしていけば解決するのでしょうか。

解決方法についても(実際に効果があるかどうかは別ですが)様々なアイデアが考えられます。
ただし、そのアイデアを実現するためには「誰が」「どのように」実現していくか、という具体的な部分まで考える必要が出てきます。

そこで、地域に存在する問題点や改善すべき点を具体的に対応する方法の1つとして、財政というものが考えられます。

 

そして入試で問われる財政は、結局この3つの機能に集約されます。
①【資源配分の調整】…市場に任せると作られないものを政府が用意する
②【所得の再分配】…格差を小さくして、生活の安心をつくる
③【景気の安定化】…税と政府支出で景気のブレをならす(財政政策)

この記事では、3つの機能をまとめていきます。

 

【財政とは】: 歳入と歳出/歳出の役割(機能)

財政=「歳入」+「歳出」という考え方

そもそも財政とはなんでしょうか。

財政とは、政府(国や地方)の歳入と歳出」のことです。

国や地方公共団体がお金を手に入れた場合を歳入、お金を使った場合を歳出と表現します。
(「歳入」と「歳出」という表現は、企業でいうところの「収入」と「支出」を表しています。つまり、「歳入」や「歳出」が出てきたら、都道府県や市町村のお金についての話題だということになります。)

 

では、国や地方は、歳出をすることでどのような役割(機能)を担うのでしょうか。

 

歳出の機能3つの基本的な考え方

国や地方が歳出をすることで担う機能は大きく3つあります。

その際の視点は、

①市場原理でカバーできない資源をどうやって補充するか
②所得が少ない人の生活をどうやって救うか
③景気をどうやって調整するか

の3つです。

 

【役割①:資源配分の調整】: 公共財の供給

〈定義〉市場だけでは資源配分が上手くいかない場合 → 政府が調整

「公園を使って儲ける」としたら、アイデアはなにが考えられるでしょうか。

 

「①市場原理でカバーできない資源をどうやって補充するか」という視点に対応する国や地方の役割を資源配分の調整と呼びます。

本来の市場原理にもとづく経済活動だけで資源(資本、労働、土地など)が上手く配分されない場合に、政府が介入して資源の配分を調整することを指します。

 

公共財 = 儲からないが、無いと困るもの

政府が配分を調整する資源の代表的なものは公園や灯台などです。

これらは、人々の生活には必要でしょうが、全く儲けることができない(公園を使った人から使用料を取ることは難しい)ので、市場にまかせると誰も作らないでしょう。そこで、代わりに政府が資源を提供することになります。

このように、儲からないけど無いと困るもの公共財と言います。資源配分の調整の例の1つが公共財となるわけです。

 

【役割②:所得の再分配】: 累進課税と社会保障で格差を縮める

なぜ所得の再分配を行うのか(=所得格差の縮小を目指す)

「②所得が少ない人の生活をどうやって救うか」という視点に対応する国や地方の役割を所得の再分配と呼びます。

国や地方が人々からお金を集め、改めて人々に分配することを指します。

 

では、なぜ国や地方は所得の再分配を行うのでしょうか。

 

所得の再分配の目的は、収入が多い人からお金をたくさんもらい、収入が少ない人へお金を配ることで、収入面での格差を縮めることだと言われます。これを所得格差の縮小と表現します。

つまり、所得格差の縮小のために所得の再分配を行うことで、収入が少ない人でも安心して暮らせるようにすることが狙いとして考えられます。

 

では、具体的にどうやって所得の再分配を行うのでしょうか。

 

所得再分配の方法①:累進課税(収入が多いほど税率が高い)

政府は所得の再分配の政策として、主に2つ実施します。

1つは、税金に注目する方法です。
例えば、代表的な税金に所得税というものがあります。収入の一部を税金として払う制度です。

ちなみに、年収400万円の人と年収2000万円の人は、それぞれいくらくらいの所得税を払う計算になるのでしょうか。

所得税の計算は単純ではないのですが、日本人の平均年収である約400万円を例にすると2024年現在の日本では約40万円を年間に所得税として納めます。割合でいうと収入の約10%を払います。
ところが、年収が2000万円の人は約800万円を所得税として納めます。割合でいうと収入の約40%を払います。このように、収入が多い人ほど多くの税金を払うしくみ累進課税と呼びます。累進課税を使えば、手元に残る収入の差が小さくなります。ただし、先ほど日本人の平均年収が400万円と言いましたが、当然平均年収よりも少ない人もいるわけです。

 

所得再分配の方法②:社会保障(税を集めて必要な人へ回す)

仮に、収入が0円だった人がいる場合、その人の所得税はどうなるのでしょうか。

もちろん収入がないので、所得税を払うことができません。そこで、逆に累進課税で集めた税金の一部を収入が0円の人に渡すことで、年収が400万円や2000万円の人達と、さらに所得格差が縮まることになります。代表的な制度を生活保護と言いますが、このような制度を作っておくことで収入が多い人から税金を集め、収入が少ない人へ税金が行き渡り、全体として所得の再分配が実現します。

これが、所得の再分配のもう1つの方法です。
つまり、国や地方が社会保障制度を充実させることで所得の再分配を実現することができ、所得格差の縮小につながるというわけです。

 

 

【役割③:景気の安定化(財政政策)】: 景気調整

財政政策とは = 財政で景気を安定化させる考え方

3つ目の国や地方の役割は、景気調整と呼ばれます。

財政を用いることによって景気を安定化させようという発想です。この発想による政策を財政政策と呼びます。つまり、財政の面から景気をゆるやかに上昇させていこうと考えるわけです。

 

では、どうやって財政の面から景気に影響を与えることができるのでしょうか。

 

財政政策①:ビルトインスタビライザー(意図のない財政政策)

財政政策は、大きく2つを考えます。

1つは、ビルトインスタビライザーという政策です。

ビルトインは「組み込まれた」、スタビライザーは「安定のための装置」という意味です。

つまり、「景気を安定させるために組み込まれた装置(しくみ)」をビルトインスタビライザーと呼びますが、果たしてそんな都合の良い政策があるのでしょうか。

 

実は、そんな都合の良い政策については本稿ですでに触れています。

 

所得の少ない人から集める税金を少なくすることで、手元にお金が残り、たくさんお金を使ってもらえるでしょう。
また、所得の少ない人に税金が行き渡ることで、所得の少ない人もお金を使えるようになるでしょう。

 

ビルトインスタビライザーの方法(自動で効くしくみを作る)

つまり、ビルトインスタビライザーの方法は「累進課税」と「社会保障」の2つです。
この2つのポイントは、一度しくみを作ってしまえば意図せずとも勝手に景気を安定化させてくれるという点ですね。「累進課税」と「社会保障」は所得の再分配にもビルトインスタビライザーにも貢献してくれるわけです。

ところが、もし本当にビルトインスタビライザーだけで景気が調整できるとするならば、世界全体はほっといてもずっと好況が続くことになります。でも実際はそうなっていません。そこで、もう1つの政策の使用を検討することになります。

 

財政政策②:フィスカルポリシー(意図のある財政政策)

もう1つは、フィスカルポリシーという政策です。
フィスカルとは「財政」、ポリシーは「政策」という意味です。つまり、意図的に景気を調整するような政策を実施するのがフィスカルポリシーです。

 

フィスカルポリシーを考える際に注目すべき点は「税金」と「政府支出」です。

 

景気をよくする財政政策 = 「減税」+「政府支出の増加」

一般的に、その国や地域の景気を良くするためには「減税」と「政府の支出の増加」が必要だと言われています。

そもそも、「景気が良い」とは「世の中で多くのお金が出回っている状態」を指します。つまり、人々がたくさんお金を稼いでたくさんお金を使っている状態を「景気が良い」と表現するわけです。

ということは、もし景気が悪い時は「税金を減らす」ことで、人々の手元に残るお金が増えて実際に使えるお金も増えるため、人々の消費が増えることにもなります。

さらに、政府がたくさんお金を使うことで、世の中により多くのお金が出回るようになり、企業や個人の儲けや収入が増えることが期待できます。

そのため、一般的には「減税」と「政府支出の増加」が景気回復につながるとされます。

 

逆に、景気が良すぎる時は「税金を増やし、政府支出を減らす」ことで、先ほどと逆の現象が発生します。

つまり、増税によって人々の手元に残るお金が減り、消費も減ることが考えられます。
さらに、政府支出が減ることで、世の中に出回るお金も減り、企業や個人の儲けや収入の減少も考えられます。

このように、その国や地域の景気を抑えるためには「増税」と「政府の支出の減少」が必要だと言われています。

▶「なぜ減税や政府支出が景気に効くのか」は、景気の仕組み(お金が回るイメージ)を先に押さえると理解しやすくなります。
景気について先に理解したい方はこちら(景気はどうすれば良くなる?経済成長・インフレから政策を考える)をご覧ください。

 

 

【※参考:不景気に増税するのはなぜか】(現実の制約という理由)

ただし、現代社会では基本的な考え方にあてはまらないことも起きています。

日本は1990年代から大局的に見て景気が良くなっているとはいいがたい状況にあります。にもかかわらず、日本政府は消費税の増税を続けています。

 

なぜ、政府は景気が悪い時に消費税を増税するのでしょうか。

 

そもそも、政府支出をするためにはその分のお金が必要です。お金がなければ借金をして政府支出を増やすことも考えられますが、借金は最終的に返済することになるため、簡単にはできません。
そこで、一度増税して政府支出を増やすためのお金を集めて、実際に政府支出を増やすことができて景気に影響を与えられるようになってきたところで減税することで景気の安定化につなげるという発想も考えられるわけです。

▶政府の支出については財源が必要になります。財源(税・公債)について確認したい方はこちら(租税のしくみと公債について(日本財政が抱える課題とは))をご覧ください。

このように、ビルトインスタビライザーとフィスカルポリシーを組み合わせて、景気を安定化させます。

ポイントは、この2つの違いは「意図があるかないか」だということです。

 

ちなみに、一般的に景気は金融政策と財政政策の2つを混ぜて調整するとされているので、金融政策と財政政策の融合ポリシー・ミックスと呼びます。

 

財政には、これらのように「資源配分調整 / 所得の再分配 / 財政政策」の3つの機能があります。

あなたが住む町をより住みやすい町にしていくとしたら、どのような政策を用いるのが良いのでしょうか。

 

 

※参考:財政のしくみの基本的な考え方のまとめ

○【財政】=政府(国・地方)の「歳入(入る)」と「歳出(使う)」。

○国や地方が歳出で担う機能は3つ
(1)資源配分の調整=市場だけで資源配分がうまくいかないとき、政府が介入して調整する。
・代表例:【公共財】(公園・灯台など、儲からないが無いと困る)。

(2)所得の再分配=税などで集めたお金を必要な人へ回し、「所得格差の縮小」を狙う。
・方法①【累進課税】(収入が多いほど税率が高い)
・方法②【社会保障】(生活を支える制度の充実)

(3)景気の安定化(景気調整)= 財政で景気を安定させる「財政政策」。
1)ビルトインスタビライザー = 仕組みが自動で効く(累進課税+社会保障)
2)フィスカルポリシー = 意図的に動かす(税金+政府支出)。
※2つの違い=【意図があるかないか】。

 ●フィスカルポリシーの判定
○不況→【減税】+【政府支出増】(景気回復)
○好況すぎ→【増税】+【政府支出減】(景気抑制)

○【ポリシー・ミックス】=金融政策と財政政策を組み合わせて景気を調整する考え方。

タイトルとURLをコピーしました