2-12. 日本はどうやって「平和」を維持している?(日本の平和と安全保障)

「平和」とはどのような状態を指すのでしょうか。

そもそも「平和」とは、「その地域が混乱したり、争乱に巻き込まれたりしていない状態」です。

また、現在の日本は、
憲法で戦争を放棄しながら(平和主義)、
現実の安全保障のために自衛隊を持ち、
さらに日米安保体制で抑止力を補っています。

 

この定義と日本の現状から考えると、日本は平和であると言えるのでしょうか。
また、これからも日本は平和を維持できるのでしょうか。

ただし、仮に日本が平和を維持できているとしても、世界全体で平和が脅かされることも多くみられるようになったため、日本が平和を維持できなくなるという可能性も否定できなくなりました。

 

そこで、「平和」について、現代社会では様々な論点から考える必要が出てきてしまいました。

この記事では、憲法・自衛隊・日米安保など、日本の平和における様々な論点を考えます。

▶ 日本国憲法の概要について先に確認したい方はこちら(日本国憲法の三大原理とは?)をご覧ください。

 

【「平和」の出発点:日本国憲法の平和主義】

日本は、平和を維持することを宣言するために、平和維持を文章にしました。
その文章のことを「日本国憲法」と呼びます。

日本国憲法では、徹底した平和主義を理念とし、
前文で「平和的生存権」を規定しています。
また、第9条で「戦争放棄戦力の不保持、国の交戦権の否認」をうたっています。

 

 

【自衛隊はなぜ生まれた?成立の流れと背景】

日本は、自国を守るための組織として自衛隊を創設しています。

日本は、1950年の朝鮮戦争という出来事をきっかけに警察予備隊という組織を作りました。

その後、1951年に日米安全保障条約を締結したことをきっかけに1952年に保安隊という組織を創設しました。

そして、MSA協定(mutual security act/相互安全保障を日米で約束した協定)と防衛二法(自衛隊法+防衛省設置法)の影響で、1954年に自衛隊が誕生しました。

つまり、朝鮮戦争→「警察予備隊」→日米安全保障条約→「保安隊」→MSA協定+防衛二法→「自衛隊」という流れで組織が誕生し、それぞれの組織の誕生にきっかけがあるということが分かります。

 

 

【自衛隊は憲法違反?政府見解と「実力」の考え方】

自衛隊については、大きな議論が存在します。

それは、「自衛隊は憲法に違反するのではないか?」という議論です。

どうして、そんな議論が発生してしまうのでしょうか。

 

それは、日本国憲法との関係にあります。

 

争点は「戦力」か「必要最小限度の実力」か

日本国憲法の第9条には「戦力の不保持」という記載があります。
もし、自衛隊が戦力に相当すると考えられるのであれば、自衛隊は9条違反になると考えられます。

一方、自衛隊はあくまでも「自衛」の組織であるため、「憲法は自衛権までは否定していない」という発想もあり、この発想が「自衛隊は憲法に違反しない」根拠になります。
つまり、「自衛隊は自衛だけで他の国を攻撃する戦力にはあたらない」という考え方です。

はたして、自衛隊は憲法違反に該当するのでしょうか?

 

自衛隊に対する政府の見解

なお、現状で日本政府は自衛隊について戦力にあたらないとしています。

その理由は「自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力であるから」だそうです。
つまり、戦力≠実力だという発想ですね。

 

では、もし自衛隊を「実力」だとするならば、実力の範囲はどこまで認められるのでしょうか。

 

 

【自衛隊に関する判例:統治行為論を考える】

長沼ナイキ基地訴訟の構図

[自衛隊と判例:長沼ナイキ基地訴訟

日本政府は、長沼ナイキ基地という自衛隊のミサイル基地を作ることを考えました。
ところが、近隣住民は自衛隊の基地建設に反対しました。
その際、近隣住民は「自衛隊は違憲である」という主張を根拠にしました。

はたして、自衛隊が違憲であることを理由に、ミサイル基地の建設を辞めさせることはできるのでしょうか。

 

長沼ナイキ基地訴訟の判決(統治行為論とは何か)

この裁判に対する、裁判所の判断は「統治行為論」でした。

これは、「高度に政治的な内容については、違憲かどうかを裁判所では判断できない(司法での判断を回避する)」という考え方です。

つまり、「自衛隊が違憲である」と裁判所は判断できないため、合憲となっています。

 

 

【日本の防衛の前提:シビリアンコントロール(文民統制)という考え方】

文民統制の意味

日本の防衛の前提は「シビリアンコントロール」です。

「シビリアン」とは「文民(=軍人以外)」のこと、「コントロール」とは「統制」のことを指します。
そのため、シビリアンコントロールを別名「文民統制」と表現します。

要は、軍人以外が軍を統制する考え方です。
(そのため、現状で自衛隊の最高指揮権は内閣総理大臣が持っています。

では、なぜ、軍人以外が軍を統制する必要があるのでしょうか。

 

文民統制が必要になった歴史的背景

それは、戦前に「軍部が独走して戦争に向かっていった」という歴史的背景があるからです。(軍部独走の歴史は日本史の範囲を深く学習する必要があります。)
そのため、軍部の独走を防止するという狙いで軍人以外が軍を統制するシビリアンコントロールが考えられました。

なお、現在の日本では、防衛について国家安全保障会議を設置し、防衛について話し合う場の用意もされています。

 

 

【日米安保体制とは:なぜ同盟が必要なのか】

▶ 日米安保を「国際政治の基本原理」から先に理解したい方はこちら(国際平和を維持するための基本的な考え方(国際政治の概要と導入))をご覧ください。

同盟が必要になった歴史的背景

日米安保体制を理解するために、以下の問題を考えます。

ある地域に、A、B、C、日本という4つの国があるとします。
また、AvsB・Cというにらみあいがあります。
そして、A・B・Cの3つの国は、すべて日本をにらんでいるとします。(にらんでいるだけで具体的な攻撃はありません。)この状況で、日本が平和維持のために考えた戦略はなんでしょうか。

 

答えは、「Aと協力する」でした。つまり、A・日本vsB・Cという2対2の構図になるというわけですね。

ちなみに、AをAmericaとすれば、日本とアメリカの協力関係を「日米安保体制」と呼べます。

 

旧日米安保の特徴

日米安保体制のポイントは「米軍の駐留を許可した」という点です。

なお、米軍の日本駐留は片務性が強い(=片思いの性格が強い)とされています。
(1951年に日米安全保障条約と同時締結でサンフランシスコ平和条約を締結しており、日本の独立を認めています。)

 

新日米安保で何が変わった?

ところが、1960年に日米安全保障条約が「日米相互協力及び安全保障条約」に改定されました。
新日米安全保障条約とも呼ばれるこの改定は、日米安全保障条約と比較して双務性が強い(=両思いの性格が強い)とされています。その結果、日本も米軍に協力するようになりました。


つまり、新日米安保のポイントは「日本とアメリカとの関係がより強力な関係になった」ということです。

 

なお、新日米安保条約の双務性を代表する例に事前協議制があります。
これは、在日米軍の装備や施設に大きな変更を加える場合、日本とアメリカで事前に協議を行うという制度を指し、新日米安保によって整えられました。
しかし、現時点で事前協議制は一度も実施されたことがないという特徴もあります。

 

このように、「旧安保=片務性」から「新安保=双務性」へ変化していき、事前協議制などが盛り込まれた点がポイントになります。

 

また、日米の強力な関係が生まれたことで、様々な論点も生まれるようになりました。

 

 

【日米安保体制と論点:思いやり予算と日米地位協定】

日米安保体制については、いくつかの論点があります。

 

論点①:思いやり予算の意味と問題意識

1点目は「思いやり予算」です。
日本は米軍の駐留費用を負担しており、駐留費用に関する予算を思いやり予算と呼びます。

ちなみに、年間いくらくらいの費用を負担しているのでしょうか。

2023年の当初予算では約8000億円となっています。5年間で約4兆円の計算です。

はたして、これだけの予算を米軍に払うのは正解なのでしょうか。それとも、もっと多くの金額をアメリカに支払うべきなのでしょうか。

5年間で約4兆円を払うのであれば、自国でなんとかするという考え方があってもいいのかもしれませんが、アメリカのような軍事力を自国で用意できるのか、と考えると難しいのかもしれません。
また、アメリカとの関係性もあるでしょうし…などと考えていくと、結論が見えづらい論点でもあります。

 

論点②:具体例を通じた日米地位協定の認識

2点目は「日米地位協定」です。在日米軍に関する細かい取り決めを指します。

日米地位協定に関する事例を確認しましょう。

[事例:日米地位協定
1995年に、沖縄米兵3人が少女を暴行(強姦)したという出来事がありました。
大前提のルールとしてアメリカ人が起こした事件はアメリカの裁判で裁くというのがありますが、この出来事に関しては事件が起きた場所が日本であり、日本人が被害を受けているため、日本が犯人の身柄引き渡しをアメリカに要求しました。
(身柄引き渡し:米兵を日本の法律で逮捕するために、犯人を渡してもらうことを指します。)しかし、アメリカは身柄引き渡しを拒否しました。
その理由はなんでしょうか。

それは、(アメリカ国内でその人が起訴だという話に至らなければ、)関与が明らかでもアメリカ兵の身柄を日本側に引き渡すことができないという取り決めがあるからだとされています。
この取り決めが書かれているのが日米地位協定でした。

(実際に、日米地位協定には、「米軍基地内では日本の法律適用が不可」であること、「米軍人犯罪者を日本側で拘束することが不可」であることが定められています。)

 

この取り決めをそのままにしておいてよいのか?という議論も行われています。

 

日本の平和については、様々な論点がありますが、はたして日本の防衛について今後どうしていくのがよいのでしょうか。

 

【あわせて読みたい】

 

 

【※参考 : 日本の平和と安全保障を一気に整理】

〈このまとめで確認すること〉

– 日本国憲法の平和主義(前文・9条)
– 自衛隊はなぜ「合憲」と説明されているのか
– 長沼ナイキ基地訴訟と統治行為論
– 文民統制の意味
– 日米安保(旧→新/片務性→双務性/事前協議制)

 

1.平和主義の土台

– 前文には「平和的生存権」の考え方がうたわれている。
– 9条は
①戦争放棄
②戦力不保持
③交戦権否認
のセットで整理する。

 

2.自衛隊と政府見解のポイント

– 争点は「自衛隊は9条のいう“戦力”か?」
– 政府は、
自衛隊は自衛のための“必要最小限度の実力”であり、戦力には当たらない
という立場で説明している(戦力≠実力の整理)。

 

3.長沼ナイキ基地訴訟と統治行為論

– 自衛隊基地建設に対し、住民が「自衛隊は違憲」と主張して争った。
– 裁判所は、高度に政治的な問題には司法が踏み込みにくいという
統治行為論の考え方がポイントになる。

 

4.シビリアンコントロール(文民統制)

– 軍人以外が軍を統制するという考え方。
– 戦前の軍部独走への反省から、民主政治の前提として位置づけられる。

 

5.日米安保の整理

– 日本は安全保障の現実に対応するため、米軍の駐留を認める日米安保体制をとっている。
– 旧安保は片務性が強い。
– 1960年の新安保は双務性が強まり、日本も協力する関係になった。
– 新安保の象徴的な仕組みとして事前協議制がある。

このような形での整理が考えられます。

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