国会には、多くの議員がいます。
法律、予算、外交、社会保障、教育など、扱う問題も広大です。
もし全議員が集まる本会議だけで、すべての資料を読み、専門家の話を聞き、細かな条文を確かめ、最後の表決まで行うとしたらどうなるでしょう。
単純に、時間はいくらあっても足りません。
逆に、少人数だけですべてを決めれば、国民の代表による正式な決定とは言いにくくなります。
そこで国会は、仕事を二段階に分けます。
委員会で少人数が専門的に深く調べ、本会議で全議員がその院の最終的な意思を決める。
国会の運営は、「深く考えること」と「正当に決めること」を分担しているというわけです。
また、以下のように国会に関するルールは、「なんのために」「なぜ」に注目する必要があります。
| 国会が解く問題 | 仕組み | 意識するべき理由 |
| 一つの案を詳しく調べたい | 委員会 | 専門的・具体的な審査をする段階だから |
| その院として正式に決めたい | 本会議 | 全議員に参加の機会を与える最終段階だから |
| 少なすぎる人数で決めたくない | 定足数 | 決定に最低限の代表性を持たせるため |
| 民主政治の土台を簡単に変えたくない | 出席議員の3分の2 | 通常の過半数より重い同意を求めるため |
| 決定をいつまでも未確定・不安定にしたくない | 会期の二原則 | 審議と議決に時間の区切りを置くため |
委員会から本会議へ――国会は「調べる」と「決める」を分ける
法律案などの議案は、原則として次のように進みます。
議案の提出 → 委員会への付託 → 委員会での質疑・審査・表決 → 本会議で委員長報告・討論・表決
付託とは、議案の審査を担当する委員会に任せることです。
委員会では、提出者や担当大臣から説明を聞き、一問一答の形で質問します。
必要に応じて、参考人や公述人から国会の外の知識や意見も集めます。
その結果を本会議へ報告し、最後は本会議がその院として可決するか、否決するかを決めます。
委員会は最終決定の代わりではありません。委員会で深く審査するからこそ、本会議は根拠をもって最終決定できます。
常任委員会と特別委員会は、「時間の長さ」で分ける
委員会には、常任委員会と特別委員会があります。
常任委員会は、法務、外交、予算など、分野ごとに常設される委員会です。
同じ分野を続けて扱うことで、専門性を高めます。
特別委員会は、その会期に特に必要な特定の案件を審査するために設けられます。
常任委員会=分野ごとに継続して置く/特別委員会=特定の案件のために設ける。
公聴会は「いつも任意」ではない
公聴会とは、重要な案件について、利害関係者や学識経験者などから意見を聞く場です。
多くの場合は、委員会が必要と判断したときに開きます。しかし、総予算と重要な歳入法案については、原則として公聴会を開かなければなりません。
「公聴会は必ず任意である」というわけではありません。
・総予算・重要な歳入法案は原則必須
・それ以外の重要案件は必要に応じて開く
と分けて考えます。
委員会は「いつも秘密」でも「いつも自由に傍聴できる」でもない
憲法は、両議院の会議を公開すると定めています。
一方、国会法では、委員会は議員以外の傍聴を原則として許さず、報道関係者などは委員長の許可を得て傍聴できるとしています。
現在は、インターネットで中継される委員会もあります。
本会議=公開が原則。
委員会は、委員長の許可を得た報道関係者などが傍聴できるため、「委員会は必ず秘密会である」というわけではなく、あくまでも原則非公開です。
閉会中審査は、会期不継続の例外になる
委員会が閉会中も自由にすべての議案を審査できるわけではありません。各議院が特に付託した案件は、閉会中審査を行うことができます。
そして、閉会中審査に付された議案などは、次の会期へ継続します。
この例外を知っておくと、後で学ぶ会期不継続の原則を「会期が終われば、すべてが必ず消える」と誤解せずに済みます。
政党と党議拘束――まとまって動く力と、一人で考える力
現実の国会は、議員が一人ずつ完全に別々に動くのではなく、政党や会派を中心に運営されます。
政党が表決について方針を決め、所属議員にその方針に従うよう求めることを党議拘束といいます。
党議拘束があれば、政党は選挙で示した政策をまとまって実現しやすくなります。どの政党が何に賛成したかも分かりやすくなり、政権運営は安定します。
一方で、議員個人の判断や、委員会で議論した結果が表決に表れにくくなることがあります。
政党には「政策をまとまって実現する役割」があり、議員には「全国民の代表として自分で考える役割」があります。
党議拘束は、この二つが両立する内容です。
党議拘束は、憲法や国会法が定めた表決の条件ではなく、政党内部の政治的な決定です。
党の方針に反した票も、国会で無効になるわけではありません。
ただし、政党から処分を受けることはあります。
また、案件によって党議拘束を外し、議員個人の判断に任せる場合もあります。
本会議の定足数――「開ける人数」と「可決する人数」は違う
定足数とは、会議を開き、議決するために最低限必要な出席者数です。
衆議院・参議院の本会議は、それぞれ総議員の3分の1以上が出席しなければ、議事を開いて議決できません。
ただし、定足数を満たしただけで議案が可決されるわけではありません。憲法に特別な定めがなければ、議事は出席議員の過半数で決めます。可否同数なら、議長が決めます。
たとえば、総議員90人の議院なら、30人以上の出席で会議を開けます。30人が出席し、全員が表決するなら、通常の議案は16人以上の賛成で可決です。
定足数=総議員の3分の1以上/通常の議決=出席議員の過半数。ただし、同じ議決の問題でも、分母が変わります。
会期不継続と一事不再議――未決と決定済みの両側に線を引く
国会には会期という活動期間があります。この会期を一つの決定単位として扱うために、二つの原則があります。
| 原則 | どの案件か | どうなるか | 目的 |
| 会期不継続の原則 | 会期中に議決まで至らなかった案件 | 原則として次の会期へ自動的に継続しない | 未決の案件をいつまでも持ち越さない |
| 一事不再議の原則 | すでに議決した同一の案件 | 原則として同じ会期中に蒸し返さない | 決定を安定させる |
まだ決まっていない案件は、会期が終わったところで区切ります。すでに決めた案件は、同じ会期中に何度もやり直しません。
会期不継続には例外がある
国会法は、会期中に議決に至らなかった案件は後の会期に継続しない、と定めています。ただし、各議院の議決で閉会中審査に付され、閉会中に審査した議案などは、次の会期へ継続します。
したがって、「会期が終わると、未決の案件は例外なく消滅する」という文は強すぎます。原則は不継続、閉会中審査は例外と判断します。
一事不再議は、法律に書かれた絶対禁止ではない
一事不再議の原則は、同一の案件を同じ会期中に何度も審議しないという議会運営上の原則です。
国会法に同じ言葉で明記された規定ではなく、事情が大きく変わった場合などには例外が問題になります。
出席議員の3分の2――民主政治の土台を変えるときは、重く決める
通常の議事は、出席議員の過半数で決めます。しかし、憲法は四つの重要な場面で出席議員の3分の2以上を求めています。
| 場面 | 何をするか | どの土台を動かすか |
| 議員の資格争訟 | 議員の資格を争い、議席を失わせる | 選挙で選ばれた代表を議院から外す |
| 議員の除名 | 院内の秩序を乱した議員を最も重く懲罰する | 選挙で選ばれた代表を議院から外す |
| 秘密会 | 公開が原則の会議を非公開にする | 国民が審議を見る機会を閉じる |
| 法律案の再可決 | 衆議院が参議院と異なる結論を押し切る | 二院制による再考の機会を乗り越える |
四つをそのまま並べると、覚えにくく見えます。しかし、共通点は明確です。
議員を議院から外すこと・非公開にすること・法律を再可決することは、「国民のための政治」という民主政治の根幹に反する可能性があるため、普通の過半数ではなく、出席議員の3分の2以上という重い同意を求めます。
ここでの四つは、すべて出席議員の3分の2以上です。憲法改正の発議は、各議院の総議員の3分の2以上であり、分母が違います。
憲法だけは扱いが大きく異なることに注意が必要です。
共通テストでは「段階・分母・例外」を確認する
国会運営の正誤問題では、次の三つを見ます。
2.分母――総議員か、出席議員か。
3.例外――閉会中審査、公聴会、逮捕許諾などがあるか。
| 記述 | 判定 | 見抜く部分 |
| 委員会が可決すれば、その議院の最終的な可決となる | 誤り | 最終決定は本会議 |
| 本会議は、出席議員の3分の1で開くことができる | 誤り | 定足数の分母は総議員 |
| 公聴会は、どの案件でも委員会の自由な判断で開く | 誤り | 総予算・重要な歳入法案は原則必須 |
| 会期中に未決となった案件は、どんな場合も次の会期に継続しない | 誤り | 閉会中審査の例外がある |
| 秘密会を開くには、出席議員の3分の2以上が必要である | 正しい | 公開原則を外す重い決定 |
正誤問題では、「必ず」「すべて」「例外なく」という言葉に注意します。国会の制度は、原則を守りながら、必要な例外を置くことで実際に動けるように作られています。