8-2. 円高・円安ってそんなに生活に影響するの?(外国為替のしくみ)

近年、為替という言葉が注目されるようになってきました。為替とは現金を使わない支払いのことを指します。

金融機関の間で行われる決済などは為替の代表例ですね。

この為替は、国内で行うか、国外とも行うかで名称が変わります。国内の場合を内国為替、国外の場合を外国為替と呼びます。そして、外国為替による取引を行う場を外国為替市場と呼びます。ただし、外国為替市場では、その国で用いる通貨の価値に合わせないと、いくらを為替で支払ってよいかわかりません。そこで、様々な要因によって為替でいくら支払うかが決まっていき、それに合わせて為替を行っていくことになります。

ここでは、たくさんの国が登場するとややこしくなるので、日本とアメリカだけの取引を考えましょう。その際に用いるのが「円高ドル安」や「1ドル=○○円」などと呼ばれる表現です。これらのしくみの理解を目指します。

 

【外国為替市場のしくみ(2つの前提)】

まず、外国為替市場の前提の2つを確認しましょう。

1つは「シーソーの関係」です。日本で使っている通貨が円、アメリカで使っている通貨がドルなので円高やドル安などといった表現を使います。2つの国だけで考えた場合、「一方が高ければもう一方は安い」というシーソーの関係が成立しています。円とドルで比べた場合にドルよりも円の価値が高まっているから円高、円よりもドルのほうが価値が安いからドル安、というだけの話です。つまり、円高ドル高/円安ドル安など、両方が高い・安いという表現は考えられないというわけです。

もう1つは「需要と供給の関係」です。円高というのは円の価値が高いから人々の需要が高い、という話です。例えば、円高ドル安の場合は、円のほうが需要が多いと考えられます。

この2つの前提をもとに1問考えましょう。

「日本のアメリカへの輸出に有利なのは円( )ドル( )である」

この文章の空欄に入るのは「高」でしょうか。「安」でしょうか。

 

【外国為替市場のしくみ(具体的な考え方)】

1ドル=200円を基準としましょう。もし1ドル=50円になったら、円高ですか?円安ですか?

これは円高ですね。逆に、1ドル=1000円になったら、円安ですね。そうすると、一部の人が混乱します。「なんで1ドル=200円から50円に円の数字が小さくなったのに円高なんだ?」と。そこで、もう少し具体的に考えましょう。

日本の自動車をアメリカに輸出することを考えましょう。もし日本の自動車が200万円だったとした場合、1ドル=200円ならアメリカドルでは1万ドルで購入することになります。(1ドル=200円なので、200万円÷200円=1万ドルです。)では、1ドル=50円になったとき、1ドル=1000円になったとき、アメリカドルでは日本の自動車200万円はいくらで購入することができるのでしょうか。計算すると、1ドル=50円のときは4万ドルですね。(200万円÷50円=4万ドル)また、1ドル=1000円のときは2千ドルですね。(200万円÷1000円=2千ドル)

この状況をアメリカ人の立場から考えましょう。アメリカ人は200万円の日本の自動車を購入するのに1ドル=200円の場合は1万ドルを支払います。ところが、1ドル=50円になると、同じ200万円の車でも4万ドルを支払うことになります。アメリカ人から見たら、本来1万ドルのところを4万ドルも支払わないといけないくらい、日本の商品が高いと考えられます。つまり、本来より円(日本の商品や価値)が高いので円高と表現します。逆に、1ドル=1000円になると、同じ200万円の車でも2千ドルを支払うことになります。アメリカ人から見たら、本来1万ドルのところを2千ドルの支払いだけでよいくらい、日本の商品が安いと考えられます。つまり、本来より円(日本の商品や価値)が安いので円安と表現します。

これをベースにもう一度考えましょう。

「日本のアメリカへの輸出に有利なのは円( )ドル( )である」

この文章の空欄に入るのは「高」でしょうか。「安」でしょうか。

 

経済の大前提として、「(同じ商品であれば)人は価格が安い方を買う」というルールがあります。日本がアメリカに輸出して売れるのは、日本とアメリカを比べた場合に日本の商品のほうが安い場合ですね。つまり、円安のときのほうが輸出に有利というわけです。そして、外国為替市場は「シーソーの関係」なので、円安はドル高とセットになります。そのため、答えは円安ドル高になります

ちなみに、逆も考えられます。円高ドル安の場合は、アメリカの商品のほうが安いため、日本は輸入に有利になります。

そう考えていくと、1ドル=○○円の変動が、経済の世界ではとても重要だということが分かります。このように1ドル=○○円のような通貨の交換比率為替レートと呼びます。為替レートは相場とも表現されますが、この相場が昔は固定されていました。(戦後の日本は1ドル=360円でした。)そのため、昔は固定為替相場制と呼びました。ところが、現在は1ドル=○○円が日々変動していますね。なので、現在は変動為替相場制と表現されています。

 

【為替の練習問題】

空欄に入るのは、「円高ドル安」と「円安ドル高」のどちらでしょう。

 

①アメリカからの日本への観光客が増えるのは(     )である

この場合は、円安ドル高ですね。商品はアメリカより日本のほうが安く買えるので商品の安い日本にアメリカからの観光客が来ることが予想されます。

 

②日本よりもアメリカのほうが経済力が強い場合は(     )である

この場合は、円安ドル高ですね。「経済力が強い」というのは「商品が高くても売れる」ことだと思ってください。つまり、アメリカの経済力が強いということは、アメリカの商品が高くても売れるくらいアメリカの価値が高いという意味です。そのため、ドル高とセットの円安が入ります。

③日本よりもアメリカのほうが金利が高いときは(     )である

この場合は、円安ドル高ですね。「金利が高い」というのは、それだけその国の経済力が強く価値が高いという意味です。(金利が高いということは、債券などの金融商品の価値が高い=お金をたくさん生み出してくれる、捉えてもよいでしょう。)アメリカのほうが金利が高いということは、ドル高ですので、円安がセットされます。

 

【外国為替市場の決定要因】

では、外国為替はどのように決まるのでしょうか。いくつか確認しましょう。

1つは、購買力平価説です。購買力平価とは「ある商品を他国ならいくらで買えるか表したもの」です。例えば、リンゴ1こをアメリカでは1ドルで、日本では100円で買えるとします。だとしたら、1ドル=リンゴ1こ=100円が成立するので、1ドル=100円でよいのではないか、という発想です。ただし、ここではリンゴ1こを例としましたが、本当に1ドル=○○円を決める商品がリンゴで良いのでしょうか。

はたして、1ドル=○○円を決定する基準となる代表的な商品はなんでしょうか。

代表的な商品はビッグマックです。有名なマクドナルドで販売されているビッグマックです。そのため、ビッグマック指数という数値があるくらい重要なものなんですね。ビッグマックが注目される理由の1つは、ビッグマックを作るのに世界中の食材が関わっており、世界経済が詰まっているからだとされています。

 他には、ファンダメンタルズがあります。ファンダメンタルとは経済指標のことですが、経済指標は政治的な影響も当然含むため、ファンダメンタルは政治経済的要因による為替変動だと思ってください。

また、貿易や資本の移動による通貨交換なども影響します。これの具体例が国際収支と呼ばれるものです。(国際収支は次の回で扱います。)

さらに、日本銀行が公的介入して変動させることもありえます。なぜ、日本銀行が介入するのでしょうか。それは、円高が進みすぎてしまうと輸出産業に不利になり、円安が進みすぎてしまうと輸入産業に不利になってしまうためです。

これら以外にも、様々な要因が複雑に絡み合って外国為替市場が決まっていきます。

 

つまり、外国為替は、人々の生活にも大きく関わってくることがわかります。

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