「日本の評価できるところ」はなんでしょうか。
そのモノの良さは他と比較することで分かると言われます。日本の良さも、他国と比較することで分かります。
ちなみに、日本は水や治安の良さなどは有名です。一方で、日本の現状として1人あたりGDP(=その国の1人あたりの年収)が停滞していることなど、他国と比較して苦しい側面もあります。(なお、特に日本の経済はずっと停滞していると言われていますが、他国は1人あたりGDPが増加傾向です。しかも、多くの国が物価上昇を起こしていますが他の国は物価に負けないくらい年収が増加しています。ところが、日本は物価だけ上がり年収が停滞しているので、生活が苦しいと感じる人が増えていると言われています。)
そんな状況でも、これからの世界で日本が頑張って成長して生き抜いていくために必要なことを考えましょう。その時に考えられる手段の1つが「貿易」です。
【貿易とは(貿易の前提)】
貿易を考える際に、2つの前提を確認しましょう。
1つは、そもそも貿易とはなにか、です。貿易とは輸出と輸入の合計のことです。つまり、他国との商品やサービスのやり取りを貿易と呼ぶわけです。(そのため、「その国の貿易額が大きい」という場合は輸出と輸入のどちらが多いのか、それとも両方とも多いのかを注目する必要があります。)
もう1つの前提は、貿易は「自由貿易」か「保護貿易」か、という視点です。
そもそも、自由貿易・保護貿易とはなんなのでしょうか。
【自由貿易とは(比較生産費説)】
自由貿易とは、国家が介入しない貿易のことです。国が関わらないため、市場で自由に取引できます。自由貿易については、モデルケースを検討しましょう。
以下の条件で、日本と中国の両方の儲けの合計が最大となる戦略はどのような戦略でしょうか。
①日本も中国もそれぞれ100人いるとする
②日本と中国でそれぞれ自動車とテレビを作る場合を考える
③日本は2人で自動車を1台作ることが出来る
④中国は7人で自動車を1台作ることが出来る
⑤日本は3人でテレビを1台作ることが出来る
⑥中国は5人でテレビを1台作ることが出来る
⑦自動車は1つ200万円、テレビは1つ150万円で売れるとする
⑧その他の条件は考慮しない。
この①~⑧の条件だけを考慮した場合、日本と中国の儲けの合計が最大となるのは、どういう戦略なのでしょうか。
このときの最も効率が良くなる答えは「日本は自動車の製造に全振りし、中国はテレビの製造に全振りする」です。
モデルケースだけを考えると、日本は自動車とテレビを比較したら自動車のほうがより少ない人数で製造できます。また、中国は自動車とテレビを比較したらテレビのほうがより少ない人数で製造できます。だとしたら、自分の国で得意な製品の生産に全振りし、後で他の国と商品を交換すると、世界全体の儲けが増えるわけです。
この考え方を比較生産費説と呼び、リカードという人が提唱しました。そのため、リカードは全ての仕事を1つの国でやろうとしないで、世界全体で分業したほうが、効率が良いとして国際分業を推奨しました。
では、国際分業を前提とした場合、日本が貿易でウリにすべきものはなんでしょうか。
ちなみに、日本の輸出品の1位は自動車、2位は半導体です。こういう製品を貿易で今後もウリにしていくことが日本の戦略の1つとして考えられます。
なお、貿易の際は貿易依存度と呼ばれる国内総生産に占める貿易の割合に注目することがあります。この貿易依存度は先進国ほど低く、日本は約15%とされます。そして、貿易の中心になりやすい企業は世界各国に企業をかまえている場合があり、このような企業を多国籍企業と呼びます。
【国際分業の2種類】
また、国際分業には2種類の分類があります。
1つは水平的分業、もう1つは垂直的分業と言います。
前提として、「北半球に先進国が多く、南半球に発展途上国が多い」という状況があります。貿易の多くは、先進国どうし、または先進国と発展途上国で行われます。(発展途上国どうしで貿易することは少ないです。)
先進国同士の場合は、北半球だけで行われますね。これを地図上で考えると、赤道に対して水平に貿易が行われていることが分かります。だから水平的分業と呼びます。であれば、先進国と発展途上国で貿易する場合は北半球と南半球で行われるため、地図上で考えると赤道に対して垂直に貿易が行われていることが分かります。だから垂直的分業と呼びます。
つまり、先進国同士の貿易を水平的分業、先進国と発展途上国との貿易を垂直的分業と言います。
ちなみに、先進国と発展途上国の産業の特徴はなんでしょうか。
先進国の産業は資本集約的で、発展途上国の産業は労働集約的であるとされます。資本集約的は「少ない人で多くの資本を使うこと」で、労働集約的は「多くの人で少ない資本を使うこと」です。
先進国は労働に必要な人が少ない分多くのお金を使えるため、1人あたりの給料が高い傾向にありますが、その分少ない人数で多くのお金を稼ぐ必要があり、先進国の人々は頭を使って効率よく稼ぐことが求められると言われています。
一方で発展途上国は、労働に必要な人が多い分使えるお金が少ないため、1人あたりの給料が低い傾向にあります。また、たくさんの人を安い給料で雇用するため、労働内容は頭をあまり使う必要のない単純労働が多いと言われています。
なお、日本の場合は人や資本に加えて資源も少ない国なので、教育による人的資源の充実を図っているわけです。
このように、自由貿易は国際分業で交換すればハッピーになったり、国どうしの関わりも活発になったりするメリットが考えられます。
では、逆に自由貿易のデメリットはなんでしょうか。
【自由貿易のデメリット】
もちろん、自由貿易もメリットだけではありません。デメリットを大きく2つ紹介します。
1つは、各国の競争が激化することです。自国の産業が他の国に負けると消滅してしまうため、自国から新しい何かが生まれにくいとされます。
もう1つは、相手の信頼関係が前提で貿易が成り立つことです。信頼関係という前提が崩れると、貿易どころの話ではなくなってしまいます。
そこで、自由貿易の反対の考え方が出てきました。
【保護貿易とは】
保護貿易とは、国が貿易に介入することです。そうすることで、他の国に負けないように自国の産業を保護しようと考えます。この保護貿易はリストという人が提唱しました。
そして、国の貿易への介入方法は大きく2つあり、「関税」か「非関税障壁」のどちらかです。つまり、輸入時に税金をかけることで自国の産業を守ろうという話です。(このときに自国で育てていこうという産業を幼稚産業をと言います。幼稚産業の育成のためにも保護貿易は有効だというわけです。)ただし、税金以外の方法も考えられ、輸入量を制限することで自国の産業を守るという発想もあります。これらを踏まえると、
日本は、保護貿易と自由貿易のどちらを重視すべきでしょうか。
【貿易の現状】
では、貿易の現状はどうなっているのでしょうか。
まず世界は、貿易額が増加傾向にあります。
また日本は、貿易において3つの特徴が見られるようになりました。
1つ目は、日本の貿易の中心は加工貿易であるということです。日本は、「石油を輸入→製品を国内で加工→工業品(自動車や鉄鋼)を輸出」という流れになります。
2つ目は、輸出先に新興国向けが増加している点です。
3つ目は、近年の動きとして企業の海外流出が見られる点です。生産拠点の移転(→産業の空洞化)や直接投資の増大(海外で企業設立+海外の企業買収)などが見られます。
はたして、これからの日本の貿易はどうあるべきなのでしょうか。