ある調査によると、高校生のお年玉の平均額は約1万円だそうです。
もし、1万円を使って「自分の満足度や幸福度を最も高めてください。」と言われたら、どのようにお金を使うのがよいのでしょうか。
そして、今考えたお金の使い方を実践した場合、満足度や幸福度を点数化すると何点になるでしょうか。上限無しで点数をつけると何点がつけられるでしょうか。
金額が1万円なので回答がある程度制限されそうですが、誰しもがそれなりに幸福度を高めることが予想されます。
では、もし「自分の満足度や幸福度を最も高めてください。」の質問に対する金額が100万円となった場合、どのようにお金を使うのが良いのでしょうか。
そして、実際にそのようにお金を使った時の満足度や幸福度は何点になるでしょうか。上限無しで点数をつけるとどうでしょうか。
ここで確認したいのが、「金額が100倍になったときに、なぜ幸福度や満足度は100倍にならないのか」です。多くの人が満足度や幸福度がぴったり100倍にならなかったと思います。むしろ、多くの人は金額を100倍にしても幸福度や満足度は100倍より低かったかもしれません。
仮に「お金の量=幸福度」だとするならば、金額と満足度や幸福度は比例するはずです。比例しないとするならば、それはなぜなのでしょうか。また、どのようにお金を使えばより高い満足度や幸福度を得られるのでしょうか。これを考える分野を経済と呼びます。
【経済とは/意思決定の基本:トレードオフと機会費用】
改めて、経済とは「限られたお金でより多くの幸福度や満足度を得る方法を考えること」です。
経済を考える際には、様々な視点があります。
ここでは、経済の基本となる意思決定の2つの視点を確認します。
〈トレードオフと機会費用:「選ばなかった最善の利益」まで含む考え方〉
代表的なものに、「トレードオフ」という考え方があります。
これは、「何かを選ぶと、別のなにかを失う」という関係を指します。
そして、何かを選ばなかった場合に得られた利益を「機会費用」と呼びます。
〈トレードオフと機会費用の具体的な考え方(計算の例)〉
例えば、アルバイトで3000円稼ぐところを、アルバイトに行かずにカラオケで2000円を使ったとします。
この場合、「カラオケを選び、アルバイトでの3000円を失った」ので、アルバイトとカラオケの選択がトレードオフの関係となります。
そして、カラオケを選択した場合に、アルバイトで稼げるはずだった3000円を失っています。しかも、カラオケで2000円を使っています。
つまり、カラオケに行くことで2000円だけでなく、アルバイトで稼げるはずだった3000円も失っていることになります。この合計金額の5000円が機会費用です。
このような例は、日常生活から人生の大きな選択まで、あらゆる状況で発生します。
そのため、人々はトレードオフを常に選択しながら、より少ないお金と時間で幸福度や満足度を高めていくことになります。
【経済の前提知識:財・サービス/生産の三要素/経済主体】
これから経済を考えていく上で、前提となるのは「財」と「サービス」です。
形が有るものを「財」、形が無いものを「サービス」と呼び、財とサービスの取引によって、経済が成立しています。
また、経済に必要な財やサービスを生むために必要なものを「生産の三要素」と呼び、資源・労働力・資本の3つが生産の三要素とされます。
そして、経済に関わる中心となるものを経済主体と呼びます。
経済主体は、家計・企業・政府の3つですが、企業が生産し、家計が消費し、政府が企業と家計を調整する、というようにそれぞれがやり取りをする状態を経済循環と呼びます。
これらの経済に関する前提知識をベースに、実際の経済の様々なしくみに注目していくことになります。
【経済の基本的な考え方(2つの論点)】
論点①:〈「効率性」と「公平性」の考え方〉
経済学には基本的な大きな考え方が2つあります。1つは「効率性」か、「公平性」か、です。
ある人にある仕事を任されたとしましょう。このとき、その仕事の成果に合わせて給料を払うということをすれば、効率よく人は働いてくれるでしょう。ただし、その仕事自体の内容の高度さなども考えると、一概に成果だけで判断することはできません。その仕事自体の給料が高いとすれば、その仕事に携わる人々は同じように一定程度の給料をもらえるという意味で公平性が保たれるでしょう。
このように、「資源をムダなく利用しているかどうか」を考える基準を効率性と呼び、「様々な立場の人達が、その立場に合わせて等しく扱われているか」を考える基準を公平性と呼びます。
この効率性と公平性はトレードオフの関係とされており、経済学の基本的な考え方とされます。
論点②:〈人はインセンティブで動く〉
もう1つの考え方はインセンティブです。
1つ例を考えましょう。
近年、全国各地で教員不足が叫ばれていますが、どうすれば教員不足が解消できるのでしょうか。
教員不足の原因は残業代が出ないことや土日を含めた勤務、長時間労働などが挙げられています。
だとすれば、それらを解消すれば教員不足も解消する可能性が高まるでしょう。
つまり、給料を増やして労働時間を減らせば教員になるという行動を引き起こす人が増えると考えられます。
このように、人々がある行動を引き起こす原因のことをインセンティブと言います。
経済の世界に注目すると人々の行動を引き起こすことができる可能性があるというわけです。
経済の世界におけるいろいろな考え方を活用しながら、「限られたお金でより多くの幸福度や満足度を得る方法を考えること」を考えていくことになります。
【参考:経済の基本のまとめ】
経済とは何か
経済は「限られた資源で、より大きい満足を得るにはどうするか」を考える学問。
お金が増えても幸福が比例しない“ズレ”を説明しようとすると、経済の視点が必要になる。
トレードオフと機会費用
何かを選ぶと、別の何かを失う(トレードオフ)。そして本当のコストは、支払った金額だけでなく「選ばなかった最善の利益」まで含む(機会費用)。
財・サービス/生産の三要素
形があるのが財、形がないのがサービス。財やサービスを生み出す材料は、資源・労働力・資本(生産の三要素)。
経済主体と経済循環
経済主体は家計・企業・政府。企業が生産し、家計が消費し、政府が調整する。
効率性と公平性
効率性は「ムダなく資源を使えているか」、公平性は「分け方として納得できるか」。両者はトレードオフになりやすく、政策を考える際の論点の軸にもなる。
インセンティブ
人はインセンティブ(行動を引き起こす原因)で動く。賃金・税・補助金・規制などを変えると行動が変わる、という発想が考えられる。