選挙で選ばれて、国会で話し合っている人達を国会議員と言います。
この人たちは、具体的になにを話し合っているのでしょうか。
そして、話し合うことで我々の生活はどのように変わることが期待できるのでしょうか。
そもそも、話し合うことに意味があるのでしょうか。
国会には
・3つの大きな権限
・5つの代表的な審議事項
・衆議院だけに認められた4つの特別ルール(衆議院の優越)
があります。
これらの内容を踏まえ、このページでは「国会議員は何を話し合っているのか?」という素朴な疑問からスタートして、ニュースや入試問題が読みやすくなる『国会のイメージ』を作るところまで確認します。
【国会を理解する前提:二院制】
国会について理解すべき前提があります。
それは「二院制である」という点です。
衆議院と参議院という2つの院で構成されているのは確認しましょう。
【国会が持つ3つの権限とは】
国会が持っている権限は大きく3つあります。
① 憲法改正の発議:各院3分の2と国民投票の流れ
1つめは「憲法改正の発議」です。
日本国憲法を改正しましょう!と日本国民に提案できるのは国会だけだという話です。
なお、憲法の改正のためには各院総議員の3分の2以上の賛成が必要です。
そして、憲法改正の発議を受けて、18歳以上の日本国民による国民投票が行われ、過半数の賛成で実際の改正になります。
② 国政調査権:政治をチェックする「調べる力」
2つめは「国政調査権」です。
国会は、法律を作ったり、行政を監督したりするために、関係者への質疑や資料提出の要求などを実施することで国の政治について調査することができる権利を持っています。
これを国政調査権と呼びます。
③ 行政・内閣の審議権:案を出す内閣/チェックする国会
3つめは「行政の案や内閣の審議」です。
国会の権限として最も大事なのは「審議」です。
つまり、話し合ってOKなのかダメなのかを決めていくという権限が国会は最も重要となります。
では、具体的に国会はなにを審議しているのでしょうか。
【国会で審議される5つの内容】
国会の最重要の仕事は「行政の案や内閣の審議」です。
ポイントはあくまでも「審議」をする役割を担っているという点です。
審議する案を作ることと、審議が通った案を実行するのは内閣(行政権)の仕事です。
つまり、行政の案を審議し、GOサインを出すのが国会の最重要任務だと思ってください。
(ただし、1つだけ例外がありますが、それは後ほど触れます。)
審議の内容は①~⑤の大きく5つあります。
① 予算の議決:お金の使い道を決める審議
①は「予算の議決」です。
お金の使い道の予定を計算したものを予算と呼びますが、内閣が作った日本の予算について本当にその予算で良いのかどうかを審議するのが国会の役割①です。
例えば、2021年に東京オリンピックが開催されましたが、オリンピックの予算はいくらまでだったら審議で賛成を出してもよいのでしょうか。
当時の議論では7000億円までOKとなりました。
(実際は紆余曲折あって1兆4000億円まで膨れ上がったそうですが。)
このように、お金の使用予定を議論していくことになります。
② 条約の承認:世界との約束に「GOサイン」を出すかどうか
②は「条約の承認」です。
世界全体の約束を条約と呼びますが、この条約を結ぶ(締結する)のが内閣の役割です。
ということは、国会は審議をするので、「内閣が締結した条約が本当にOKなのか」という点を審議することになります。
そして「その条約を締結してOK」と認めることを条約の承認と呼びます。
③ 内閣総理大臣の指名:国のリーダーをどのように選ぶか
③は「内閣総理大臣の指名」です。
様々な人がいる中で「この人にしよう!」と決めることを指名と言います。
内閣総理大臣については「国会議員の中から選ぶ」というルールがあるので、国会議員で話し合って国会議員の中から内閣総理大臣を「この人にしよう!」と決めることになります。
なお、「内閣総理大臣の任命」というのがあります。
任命とは、指名された人に対してOKサインを出すことです。
内閣総理大臣の任命は天皇が担当します。
(国事行為の一つとして、内閣の助言と承認に基づいて任命します。)
ちなみに、総理の指名で注意すべき点に「参議院議員からでも総理大臣になれるのか?」という問題があります。
結論から言うと、内閣総理大臣は衆議院からでも参議院からでもなれます。
「衆議院議員でなければ総理になれない」ということはありません。
(ただし、通常の場合は衆議院から選ばれることが多いというのが現状です。)
また、内閣総理大臣の指名については、
衆議院が指名の議決をした後に10日間を経過しても参議院が指名の議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となることになっています。
④ 法律案の議決:法律は「誰が作り、誰が細かく決める」のか(議員立法と内閣提出法案・委任立法)
④は「法律案の議決」です。
内閣か国会議員が提出した法律案を審議するのが法律案の議決です。
〈※注意:法律は誰が作るのか〉
そのため、国会議員から出された法案を審議して法律として制定することになります。
ただし、国会議員は全ての分野の専門家ではないので、制定しようとしている法律の内容全てを国会議員が作るのは現実的ではありません。
そこで、法律は国会議員が提出しますが、法律の細かい部分を政令や省令などの形で内閣(官僚)が制定して、より具体的にしていくことがあります。このような政令や省令を通して法律の細部を整えていくことを委任立法と呼びます。なお、現在は政令や省令などの細部でなく、法律それ自体を最初から内閣が作って提出してしまうという動きも見られるようになりました。これを内閣提出法案と言います。つまり、法案は「議員提出法案」と「内閣提出法案」の2種類があるということになります。ただし、内閣は行政の役割が本来の仕事であるため、法案を内閣が提出するのは国会(立法)の権限を奪っているのでは?という批判も出てきています。
なお、法案の成立件数を比較すると、内閣提出法案のほうが成立件数が多く、議員提出法案の約5倍とされています。
それだけ内閣提出法案のほうが成立件数が多いのは、国会は多数派である与党が意見を通しやすく、与党のリーダーが内閣総理大臣となっているためだとされます。
それくらい内閣提出法案を与党が通しやすいという特徴があります。
〈補足:「法律の公布」の注意点〉
法律の公布(成立した法律を公表すること)は、誰が行うのでしょうか。
現在の日本では、法律は天皇の名で公布することになっています。
その際、公布する法律に最も関係の深い省の国務大臣が署名することが必要になります。
さらに、公布する法律に総理の連署も必要になるという特徴があります。
①法律は天皇の名で公布
②中心の国務大臣の署名
③総理の連署が必要
という3つの特徴があるというわけです。
⑤ 内閣不信任決議:内閣と国会の関係をリセットする最後のカード
⑤は「内閣不信任決議」です。
内閣が出してくる案や、そもそも内閣自体を信頼できなくなった時に、国会側から「内閣を信頼できません」と言って、内閣と国会の関係をリセットすることを行います。
(リセットできる根拠を議院内閣制と呼びます。)
ちなみに、内閣不信任決議が出た場合、内閣は10日以内に2つの選択肢のうち、どちらかを選ぶことになります。
1つは、「確かに国会の言う通りで我々は内閣に向いていませんでした」として内閣の構成メンバー全員が辞職をする(これを総辞職と呼びます。)という選択です。
もう1つは、「内閣に不信任を出すのは、国会が内閣の人達をちゃんと見ていない証拠だ。だから、国会が間違っている」として解散総選挙に持ち込むという選択です。
つまり、内閣不信任決議が出た場合、内閣は総辞職か解散を選択することになります。
国会は、それだけの覚悟を持って内閣不信任決議を出す選択肢を持っているということになります。
まとめると、
①予算の議決
②条約の承認
③内閣総理大臣の指名
④法律案の議決
⑤内閣不信任決議の5つが審議の内容です。
ちなみに、この5つの審議内容には「二院制」が理由で特殊なルールが絡んできます。
例えば、衆議院で賛成した法案が参議院で否決された場合、その法案はどのような扱いを受けるのでしょうか。
【「衆議院の優越」とは何か(衆議院の4つの特殊なルール)】
国会の審議の際には、(1)~(4)までの4つの特殊なルールが存在します。
(1)まずは両院協議会で話し合う:それでもまとまらないときは?
1つ考えましょう。もし衆議院で賛成した審議内容が参議院で否決された場合、審議内容は賛成となるのでしょうか。それとも否決となるのでしょうか。
現状、衆議院と参議院で意見が異なった場合は両院協議会という会議を開き、衆参の両方から各10人が集まって話し合うことで最終的な意見を決めますが、それでも衆議院と参議院の意見が異なったままでまとまらなかった場合は、衆議院の意見が採用されます。
これが(1)のルールです。
なお、両院協議会は、予算の議決/条約の承認/内閣総理大臣の指名の時に行われる可能性があります。
(2)法律案の再可決:衆議院出席議員3分の2以上で成立させる仕組み
ただし、審議の内容について、法律だけは特殊なルールが存在します。(法律は他の項目に比べて慎重に判断する必要があるとされているからです。)
法律の審議について衆議院と参議院が異なった場合は、衆議院でもう一度審議を行い、「出席議員の3分の2以上の賛成で再可決」した場合に法律として成立します。
これが(2)のルールです。
(3)予算の先議権:なぜ予算は衆議院から審議を始めるのか
なお、予算については「先議権」というものがあります。
予算は国の方向性を決めるとても重要な内容なので、衆議院が先に予算について審議するというルールがあります。
これが(3)の「予算の先議権」というルールです。
(4)内閣不信任決議は衆議院だけ:政治を動かす「解散」との関係
そして、(4)のルールとして、内閣不信任決議は衆議院だけしか出すことができないというルールがあります。
つまり、
(1)基本は両院協議会で再審議→まとまらない場合は衆議院の意見を採用
(2)法律だけは衆議院の出席議員の3分の2以上で再可決
(3)予算は衆議院に先議権
(4)衆議院のみ内閣不信任決議を出せる
の4つのルールが存在します。
このように、衆議院にだけ(1)~(4)までの4つの特殊なルールがあるのですが、なぜこのようなルールがあるのでしょうか。
(このルールが存在する根拠はなんなのでしょうか。)
その根拠となるのが、「衆議院の優越」と呼ばれるものです。
つまり、参議院よりも衆議院のほうが優越されるルールが全部で4つあるということになります。
そうすると、当然疑問が生じます。
なぜ、参議院よりも衆議院のほうが優越を認められるのでしょうか。
なぜ衆議院が優先されるのか:任期4年・解散ありと「民意の反映」
ポイントは「任期」と「解散」です。
衆議院は任期が4年に対し、参議院は任期が6年です。
つまり、衆議院のほうが、任期が短いのです。
そして、衆議院のみ解散の可能性があります。(内閣不信任決議に対して内閣が解散を選択した場合、解散するのは衆議院のみです。逆に、参議院に解散はありません。)
このような、任期の短さと解散があることによって衆議院のほうがより民意(国民の意見)を政治に反映させやすいという特徴があります。だとしたら、
参議院は必要なのでしょうか。
衆議院と参議院で意見がズレた場合に、ルール上は結局のところ衆議院の意見が採用されることのほうが圧倒的に多いわけです。
そうであるならば、二院制を辞めて一院制でも問題ないのではないでしょうか。
もちろん、二院制であれば「より慎重に審議できたり、より多様な民意を反映できたりする」という意見もあります。だとしたら、三院制とか四院制ということも考えられます。
あえて二院制を採用しているのに衆議院の優越が認められているとすると、参議院の存在意義はなんなのでしょうか。
【あわせて読みたい】
・国会について細かい部分にまで目を向けてみる(議員特権・国会の運営と種類)
・かたくて難しい政治に「参加する」なんてことが可能なのか(参政権/選挙・国民投票・住民投票について)
【※参考:国会の権限と審議のまとめ】
このブロックで確認すること
・国会の3つの権限
・国会で審議される5つの内容
・衆議院の優越4ルールと、その理由
1.国会の3つの権限
①憲法改正の発議
・各院総議員の3分の2以上で改正案を提案
・国民投票で有権者の過半数が賛成 → 憲法改正
②国政調査権
・質問・資料提出などで、行政や内閣をチェックする権限
③行政・内閣の審議権
・予算・条約・法律案などに最終的な「OK/NG」を出す
2.国会で審議される5つの内容(5つの審議事項)
・予算の議決:1年のお金の使い道を決める
・条約の承認:内閣が結んだ条約にGOサインを出すか決める
・内閣総理大臣の指名:国会議員の中から総理大臣を選ぶ
・法律案の議決:議員立法・内閣提出法案を審議し、成立させる
※細かい部分は政令・省令などに任せる「委任立法」もセットで確認
・内閣不信任決議(ふしん):内閣に「NO」を出す最後のカード
※可決 → 内閣は「総辞職」か「衆議院解散」を選ぶ
3.衆議院の優越4ルールと、その理由
①法律案
・両院協議会でも合意できない → 衆議院の議決を優先
・衆議院で出席議員3分の2以上の再可決で成立
②予算:衆議院が「先議」(先に審議する権限)を持つ
③条約:一致しない場合、一定条件で衆議院の議決が優先されるパターンを確認
④内閣不信任決議:出せるのは衆議院だけ
理由(おさえ)
・衆議院…任期4年・解散あり → 選挙が多く、「より新しい民意」を反映
・参議院…任期6年・解散なし → 長期的・安定的な視点
・→ だから最終的には、衆議院の意思を優先する仕組みになっている