差別には、非常に多くの種類が存在します。そして、実際の差別における判例を確認しましょう。
【女性差別】
女性差別については、世界での女性差別撤廃条約を背景に、日本国内で男女雇用機会均等法が成立しました。(条約の批准のために、男女雇用機会均等法を先に制定しています。つまり、男女雇用機会均等法→女性差別撤廃条約の順番です。)さらに、その後に男女共同参画社会基本法が成立しています。ただし、法律が制定してもジェンダー差別は未解決である点は注意しましょう。
芝信用金庫というところで働いていた女性職員13名が、昇進において差別的な待遇を受けたとして訴訟を起こしました。実は、女性職員13名以外にも同じタイミングで入社した男性職員が複数名いたのですが、昇進したのは男性職員ばかりでした。そのため、女性職員が「男性社員が最も遅く昇進したタイミングと同じタイミングで昇進しろ」と訴えた、という裁判です。男性だけ昇進していくのは女性差別だとする考えもあれば、昇進しないのは、その人たちの能力の問題なのかと言われたら、それも難しい問題です。
はたして、女性13名の昇進は認めるべきでしょうか。それとも、認めないべきでしょうか。
この裁判に対しては、最高裁判所で和解が成立しました。(高等裁判所では、女性差別だとした判決となっています。)
【部落差別】
江戸時代には、士農工商という有名な身分制度がありました。ところが、士農工商はあくまでも表面上に見えている差別であり、士農工商よりも下の人達というのが存在しました。この、士農工商よりも下の人達に対する差別を部落差別と呼びます。
部落差別の対策として全国水平社と呼ばれる組織が結成されていますが、この組織は1921年に組織されています。なお、現在も部落差別は一部で残っているとされます。
【民族差別】
名称の通り、一部の民族に対して発生する差別のことです。日本で有名な民族差別としては、アイヌ民族(北海道の先住民族)があげられます。そして、アイヌ民族に関する裁判も存在します。なお、アイヌ民族に対する法律としてアイヌ文化振興法がありますが、2019年にアイヌ民族支援法(アイヌ施策推進法)へ変わりました。(アイヌ文化振興法には「先住権」が明記されていませんでしたが、アイヌ民族支援法によって、先住権が明記されました。)
北海道庁が、ある地域にダムを建設しようと考え、ある地域の土地の買収しようとしました。しかし、その土地はアイヌ民族の聖地でした。そのため、アイヌ民族が役所による土地の買収を拒否しました。
はたして、北海道庁によるダムの建設はOKでしょうか、それともダメでしょうか。
判決は、「ダムの建設はダメ」でした。ところが、裁判は1日ですぐに判決がでるようなものではありません。長期間の裁判となると、年単位で行われるものも多いです。実際に、判決が出たときにはダムの建設が終了してしまっていました。
このように、行政処分が違法だとしても、裁判所が違法を取り消すと公共の利益を害すると判断する時、裁判所が請求を棄却することを事情判決と呼びます。
【外国人差別】
外国人に対しても差別かどうか議論すべき点があります。
例えば、定住外国人に日本での参政権を認めるべきでしょうか。「定住しているから、政治参加の権利はアリだ」という発想があれば「外国人に日本の政治参加をさせるのは良くないからナシだ」という発想も考えられます。
現状、日本では定住外国人の参政権を認めていません。
(なお、その地域のみで行われる住民投票については認めている自治体が増えてきています。)
【障がい者差別】
障がい者差別に関しては、障害者基本法という法律が制定されています。また、障害者差別に関する有名な裁判として、ハンセン病に関わるものがあります。
※参考:「がい」と「害」
「障がい者」と表現することがあれば「障害者」と表現することもあります。これは、どちらでも問題ないので、テストなどで解答する際は表記を統一しておけば問題ないとされます。
以前、「らい菌」というのが話題になりました。「らい菌」に感染した人をハンセン病患者と呼びました。そこで、ハンセン病患者は「らい予防法」に基づいて、ハンセン病に感染したら、隔離の対象として生涯施設に入れられることになりました。しかし、らい予防法は1996年に廃止されましたが、それまで隔離されたことによる苦痛があるため、損害賠償を求めて患者が国に訴訟しました。(苦痛で訴える患者vs法律を作った国)
はたして、患者と国はどちらが勝利したのでしょうか。
結果は、患者の勝利でした。実際に、患者に対して国の責任を認めています。
このように、世の中には非常に多くの差別が考えられています。
今後、世の中の差別をなくすために、個人や社会がすべきこと(できること)は、なにがあるのでしょうか。