「国会は法律を制定する」「内閣は予算を作成する」「国会は条約を承認する」――。
政治の三権分立の分野では、似た文が次々に出てきます。
そのため、用語だけを1つずつ覚えると混乱してしまい、苦しくなります。必要なのは、用語に関連する「国の仕事の流れ」です。
国家の重要な仕事は、案を作る→審議して決める→実行する→監視するという流れで進みます。この流れにある4つの仕事を、国会と内閣で分けています。
そして、国会と内閣の仕事を理解する最大のポイントは以下の一文です。
内閣は「案を作って実行」し、国会は「国民の代表として審議して決定し、内閣の実行を監視する」。
この2つのポイントを中心に考えます。
もちろん、国会議員が法律案を出すこともありますが、この大きな役割分担が分かれば、細かな例外も正しく整理できます。
国会と内閣の学習のゴール(なにを覚え、理解するのか)
国会と内閣の学習のゴールは、以下の表を覚えることです。
| テーマ | 案や準備をする | 決める | 実行・仕上げをする |
|---|---|---|---|
| 法律 | 内閣または国会議員が法律案を提出 | 国会が法律を制定 | 天皇が公布し、内閣が執行 |
| 予算 | 内閣が作成 | 国会が議決 | 内閣が執行 |
| 条約 | 内閣が交渉・締結 | 国会が承認 | 内閣が外交を処理 |
| 内閣総理大臣 | 各議院が候補者を議決 | 国会が指名 | 天皇が任命 |
| 行政の監視 | 行政が政策を実行 | ― | 国会が国政調査などで監視 |
試験問題は、用語の意味だけでなく、主語と動詞の組合せを入れ替えてきます。この表があれば、「国会が予算を作成する」「内閣が法律を制定する」のような誤文を誤りと判断できます。
ただし、これを全て丸暗記するのは苦しくなります。
そこで、
ポイント①(国家の重要な仕事は、案を作る→審議して決める→実行する→監視するという流れ)と
ポイント②( 内閣は「案を作って実行」し、国会は「国民の代表として審議して決定し、内閣の実行を監視する」。)
を組み合わせて活用します。
つまり、内閣が準備する → 国会が決める → 内閣が動かす → 国会が見張る。
この核となる流れに、法律・予算・条約・内閣総理大臣・行政の監視の5項目を入れていくのです。
そもそも、なぜ国会と内閣は、仕事を分けるのか
国会は、選挙で選ばれた議員が集まる場所です。さまざまな国民の意見を出し合い、公開の場で慎重に決めることに向いています。
しかし、国会が毎日の行政をすべて行うのは現実的ではありません。災害への対応、外交交渉、社会保障の運営などには、専門的な情報と速い判断が必要です。
そこで、行政の専門組織をまとめる内閣が案を準備し、政策を実行します。
ただし、内閣だけで重要なことを決めると、選挙で示された国民の意思が弱くなり、権力が暴走するおそれがあります。
だから、重要な決定には国会の議決や承認を通します。
内閣の強みは専門性と速さ、国会の強みは国民の同意と公開の審議です。国会と内閣が仕事を分けることで、政治は「動けること」と「勝手に動かないこと」を両立させます。
国会で話し合うこと自体が目的なのではありません。話し合いを通して、国家の決定に民主的な根拠を与えることが目的です。
国家の仕事は「4つの動詞」で流れている
ここからは、ポイント①( 国家の重要な仕事は、案を作る→審議して決める→実行する→監視するという流れで進む)にしたがって、政治の流れを4つの動詞で確認します。
(1)「内閣が」案を作る――まだ国家の決定ではない
政策は、最初から法律や予算として存在するわけではありません。内閣や国会議員が、実現したい内容を法律案などの形にします。
ここで大切なのは、案は決定ではないということです。
内閣が法律案を作って国会へ出しても、その時点では法律ではありません。
国会が可決して、初めて国民をしばる法律になります。
法律案を提出するのは内閣または国会議員、法律を制定するのは国会です。
「内閣提出法案」が認められていることと、「国会が唯一の立法機関である」ことは矛盾しません。内閣は案を作れますが、最後に法律にするかどうかを認めるのは国会だからです。
(2)「国会が」審議して議決する――理由と問題点を見えるようにして、国家として一つの答えを出す
審議とは、案の内容を調べ、質問し、問題点を明らかにすることです。必要なら修正も考えます。
意見が違うからこそ、審議が必要です。反対意見には、賛成側が見落とした問題が含まれているかもしれません。
また、議決とは、賛成か反対かを決めることです。
審議だけでは、国家の意思はできません。しかし、議決だけを急げば、少数意見や問題点を見落とします。
つまり、審議は考える段階、議決は決める段階です。二つは似ていますが、役割が違います。
国会が決めるのは、法律の制定、予算の議決、条約の承認、内閣総理大臣の指名の4つです。
(3)「内閣が」実行する――決定を現実の社会へ移す
国会が決めただけでは、社会は動きません。
内閣が法律と予算に基づいて政策を実行し、行政機関が具体的な仕事を行い、初めて動き出します。
また、法律の細かな実施方法を、法律の委任に基づいて政令や省令で定めることもありますが、これは行政が法律を無視して自由に決めることではありません。
国会は法律で枠を決めるだけで、行政がその枠の中の細部を決めます。これが委任立法の基本です。
(4)「国会が」監視する――任せた後こそ、確かめる
権力は、任せたら終わりではありません。
衆議院と参議院は、それぞれ国政調査権をもちます。証人の出頭や証言、記録の提出を求め、行政の仕事を調べることができます。
国政調査権をもつのは、衆議院と参議院のそれぞれです。
4つの重要テーマ(法律・予算・条約・首相指名)を整理して頭に入れるために
法律・予算・条約・首相指名という4つの重要テーマは、別々に見えても、すべて同じ考え方で整理できます。
それぞれのテーマのポイントは「分ける」ことです。
1つのテーマに関わるのが1カ所だけだと、権力が集中している状態と同じになってしまいます。分けることで、複数の関わりが生まれることが必要です。
法律――「法律案」と「法律」を分ける
内閣または国会議員が法律案を提出し、国会が審議・議決して法律を制定します。その法律を天皇が公布した後、内閣が執行します。
成立した法律は、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署した後、天皇が国事行為として公布します。
提出=内閣または国会議員/制定=国会/公布=天皇
予算――「作成」と「議決」を分ける
予算は、国が一年間にどれだけお金を集め、何に使うかという計画です。
行政の仕事を知る内閣が作成し、税金の使い道を国民の代表である国会が議決します。その後、内閣が予算を執行します。
予算は、内閣が作成し、国会が議決する。
条約――「締結」と「承認」を分ける
外国と交渉し、条約を締結するのは内閣です。しかし、外国との約束は日本の行動や国民生活を長くしばることがあります。
そこで、条約には国会の事前または事後の承認が必要です。
条約は、内閣が締結し、国会が承認する。
首相――「指名」と「任命」を分ける
国民は、内閣総理大臣を直接選びません。
国民が国会議員を選び、国会が国会議員の中から内閣総理大臣を指名します。その指名に基づき、天皇が任命します。
政治的に「この人を首相にする」と決めるのは国会です。天皇が政治的に人物を選ぶわけではありません。
指名=国会/任命=天皇。
憲法改正だけは、最後の決定者が国民である
法律は国会が制定します。
しかし、憲法改正について国会が行うのは、最終決定ではなく発議です。
各議院の総議員の3分の2以上の賛成で発議し、国民投票で有効投票の過半数の承認を得なければ改正できません。
憲法改正は、国会が発議し、国民が承認する。
憲法は、国家権力をしばる最高法規です。そのため、権力を使う国会だけで最終決定すると最高法規を国会自身で自由にコントロールできることになります。しかも、憲法の主権は国民です。そのため、憲法改正の最終決定は主権者である国民が行うのです。
試験問題では「主語・動詞・段階」の三つを見る
試験問題で長い会話文や資料が出ても、見る場所は三つです。
2.動詞――作成・制定・議決・締結・承認・指名・任命のどれか。
3.段階――案を作る前か、決定するときか、実行した後か。
たとえば、次の文を見てください。
【例】 「国会が予算を作成し、内閣が議決する。」
主語が逆です。正しくは、内閣が予算を作成し、国会が議決するです。
【例】 「内閣が法律案を国会へ提出したので、法律が成立した。」
段階が飛んでいます。提出されたのは法律案です。国会の審議と議決を経なければ、法律にはなりません。
【例】 「天皇が内閣総理大臣を選び、国会が任命する。」
動詞と主語が逆です。国会が指名し、天皇が任命するが正解です。
まとめ――覚えるのは、一つの流れと四つの組合せ
最後に、この記事の内容を最小限にまとめて確認します。
内閣が案を作る→国会が審議して決める→内閣が実行する→国会が監視する。
法律は国会が制定/予算は内閣が作成して国会が議決/条約は内閣が締結して国会が承認/首相は国会が指名して天皇が任命。