国会の種類として、通常・臨時・特別・緊急集会という4つの言葉を覚えた方は多いと思います。
しかし、名前だけを覚えると、次のような疑問が残ります。
・「臨時」と「特別」は、何が違うのか。
・首相を指名するなら、いつでも特別国会なのか。
・参議院の緊急集会は、本当に国会の一種類なのか。
答えは、会議の名前ではなく、なぜその時に開く必要があるのかを見ると分かります。
平常の仕事なら通常国会
追加の必要なら臨時国会
衆議院の解散後の総選挙を受けるなら特別国会
衆議院がいない空白を緊急に埋めるなら参議院の緊急集会です。
| 場面 | 名称 | 一言でいうと |
| 毎年の平常運転 | 通常国会(常会) | 年に一度の基本の国会 |
| 会期外に追加の必要が生じた | 臨時国会(臨時会) | 必要に応じて足す国会 |
| 衆議院解散後の総選挙が終わった | 特別国会(特別会) | 新しい衆議院で政治を組み直す国会 |
| 衆議院解散中に国の緊急事態が起きた | 参議院の緊急集会 | 二院がそろうまでの仮の集まり |
最初に――正確には「三種類の国会+一つの緊急制度」
憲法と国会法が使う正式な言葉は、常会・臨時会・特別会です。
一般には、それぞれ通常国会・臨時国会・特別国会と呼びます。
一方、参議院の緊急集会は、衆議院が解散して国会を開けない期間に、参議院だけが活動する例外的な制度です。
憲法上、国会は衆議院と参議院の両議院で構成されます。
したがって、参議院だけの緊急集会を、常会・臨時会・特別会と同じ意味で「国会の一種類」とするのは正確ではありません。
国会は衆議院と参議院がそろって開きます。
そろえない解散中に限り、国を止めないための仮の例外として参議院の緊急集会を置きます。
通常国会――毎年の予算から、国の一年を始める
通常国会の正式名は、常会です。憲法は、毎年一回召集すると定めています。
国会法では、毎年1月中に召集するのが通例で、会期は150日です。会期の延長は一回までできます。
通常国会の中心は、4月から始まる新しい年度の予算です。内閣が作成した予算を、年度が始まる前に国会が審議・議決する必要があるため、1月に集まります。
通常国会が扱うのは予算だけではありません。予算に関係する法律案をはじめ、必要な法律案や条約なども審議します。「通常の内容なら何でもよい」ではなく、毎年必ず開き、予算審議が中心と理解します。
通常国会 = 毎年1月中・会期150日・延長は1回まで・予算が中心。
臨時国会――予定外の必要に、国会を追加する
臨時国会の正式名は、臨時会です。災害への対応、補正予算、急いで必要になった法律など、通常国会の後に新しい必要が生じたときに開かれます。
内閣は、必要があると判断すれば臨時会の召集を決定できます。
さらに、いずれかの議院の総議員の4分の1以上が要求した場合、内閣は召集を決定しなければなりません。
国会を開く機会を内閣だけに独占させず、少数派にも、国会で政府を問い直す場を開かせる力を与えるのが「総議員の4分の1以上」です。
臨時国会 = 内閣が必要に応じて決定/いずれか一院の総議員4分の1以上の要求があれば、内閣は召集を決定する。
両院の4分の1ではありません。
臨時会の会期は両議院の一致で決め、延長は二回までできます。
首相を指名しても、特別国会とは限らない
内閣総理大臣が辞任しても、衆議院が解散されず総選挙も行われていない場合があります。このとき、首相指名のために開くのは臨時国会です。
特別国会かどうかは、議題ではなく「衆議院解散後の総選挙を受けて開くか」で決まります。 首相を指名するというだけで、すべて特別国会になるわけではありません。
任期満了による総選挙の後も、特別国会ではない
衆議院議員の任期満了による総選挙が行われた場合、国会法は、原則として新しい任期が始まる日から30日以内に臨時会を召集すると定めています。
特別会になるのは、憲法54条が定める衆議院解散後の総選挙の場合です。「総選挙後」という言葉だけで特別国会を選ばず、解散があったかを確認します。
任期満了による総選挙の後も、初めて国会が召集されたときには内閣が総辞職し、国会が首相を指名します。首相指名が行われる点は同じでも、解散後ではないため、会の名称は臨時会です。
特別国会――新しい衆議院で、内閣との関係を結び直す
特別国会の正式名は、特別会です。
衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければなりません。この国会が特別会です。
解散 → 40日以内に総選挙 → 総選挙 → 30日以内に特別国会
総選挙では、衆議院の構成が新しくなります。すると、それまでの内閣が、新しい衆議院の信任を得ているとは限りません。
そこで内閣は、特別国会が初めて召集されたときに総辞職し、国会が改めて内閣総理大臣を指名します。
特別国会は、首相を選ぶためだけの会議ではありません。選挙で新しくなった衆議院と、行政を動かす内閣との関係を、もう一度作り直す国会です。
憲法は、首相の指名を他のすべての案件に先立って行うと定めています。首相指名が最優先ですが、特別国会が扱える議題が首相指名だけに限られるわけではありません。
特別国会=衆議院解散後の総選挙から30日以内/首相指名が最優先。会期は両議院の一致で決め、延長は二回までです。
参議院の緊急集会――衆議院が戻るまで、国を止めない仮の橋
衆議院が解散されると、参議院も同時に閉会し、国会は活動できません。
しかし、総選挙を行い、特別国会を開くまでには時間がかかります。その間に大災害などが起き、国会の議決が急いで必要になるかもしれません。
その空白を埋めるのが、参議院の緊急集会です。
内閣は、国に緊急の必要があるとき、参議院の緊急集会を求めることができます。
緊急集会には、四つの条件がある
1.衆議院が解散中である。
2.国に緊急の必要がある。
3.内閣が求める。
4.参議院だけが集まる。
緊急集会で採られた措置は、あくまで臨時のものです。次の国会が開かれた後、10日以内に衆議院の同意がなければ、その効力を失います。
つまり、緊急時には先に動きますが、議院が戻ったら主権者の新しい選択を反映した判断に確かめ直してもらうということになります。
緊急集会は、衆議院の任期満了中や、単に衆議院が休会しているときに開く制度ではありません。衆議院の解散中に限られます。また、内閣が示した緊急案件と、それに関係する案件を扱います。
40日・30日・10日は、一つの時間の流れで覚える
特別国会と緊急集会の数字は、次の順番です。
衆議院の解散 → 40日以内に総選挙 → 選挙の日から30日以内に特別国会 → 緊急集会で措置を採っていた場合は、開会後10日以内に衆議院が同意
| 数字 | 何の期限か | なぜ必要か |
| 40日以内 | 解散から衆議院議員総選挙まで | 国民が新しい代表を選ぶため |
| 30日以内 | 総選挙から特別国会の召集まで | 新しい国会と内閣を動かし始めるため |
| 10日以内 | 次の国会開会後、緊急集会の措置に衆議院が同意するまで | 参議院だけの仮の決定を早く確かめ直すため |
首相指名で衆参の議決が異なった場合にも「10日」が出てきますが、意味は別です。首相指名の10日は参議院の議決を待つ期間、ここでの10日は緊急集会の措置を衆議院が確かめる期間です。
四つの場面は、順番に判定する
問題文を読んだら、次の順に確認します。
1.衆議院解散中で、今すぐ国会の議決が必要か――参議院の緊急集会。
2.衆議院解散後の総選挙が終わったか――特別国会。
3.毎年の基本の国会か――通常国会。
4.それ以外の追加の必要か――臨時国会。
| 事例 | 正しい場面 | 決め手 |
| 1月に新年度予算を審議する | 通常国会 | 毎年の基本の国会 |
| 夏に内閣が辞職し、衆議院を解散せず新しい首相を指名する | 臨時国会 | 解散後の総選挙ではない |
| 衆議院解散後、総選挙を終えて新しい首相を指名する | 特別国会 | 解散後の総選挙を受ける |
| 衆議院解散中に大災害が起き、直ちに措置が必要になる | 参議院の緊急集会 | 衆議院不在の緊急時 |
「何を話し合うか」だけではなく、「なぜ今、だれが集まるのか」を読むことで、4つの区別を決められます。
試験問題で失敗しない誤りのパターン
- 「通常国会は、毎年4月に召集される」――誤り。毎年1月中が通例です。
- 「臨時国会は、両議院の総議員4分の1以上が要求する」――誤り。いずれか一院の総議員4分の1以上です。
- 「首相を指名する国会は、すべて特別国会である」――誤り。解散後の総選挙を受けないなら臨時国会の場合があります。
- 「特別国会は、首相指名以外を審議できない」――誤り。首相指名が他のすべての案件に先立つのであり、唯一の議題ではありません。
- 「参議院の緊急集会の措置は、そのまま国会の最終決定になる」――誤り。次の国会開会後10日以内に衆議院の同意がなければ効力を失います。