突然ですが、以下の質問に対してあなたならどのように答えますか?
ある国の多くの銀行がつぶれそうな状態だとします。
この時、銀行を元気にするための解決策は、なにが考えられるのでしょうか。
このような銀行については、助けるべきでしょうか? 合併させるべきでしょうか? 競争させるべきでしょうか? 預金者に”自己責任”を求めるべきでしょうか。
実はこの問いに答えられるかどうかが、「金融の自由化・国際化」のポイントです。
戦後の日本は、銀行がつぶれないように「競争しない仕組み」を作りました(護送船団方式)。
しかしそれには限界が出て、やがて「規制緩和=金融ビッグバン」へ進み、さらに「ペイオフ」で預金の扱いも変わりました。
この質問を考えながら、この記事では、
・現代の金融を考える際の前提
・日本の金融の戦略
・今の日本の金融の世界で何が起きているのか
について、様々な角度から確認します。
【現代の金融の前提】
〈現代の金融の考え方 = 昔の金融の限界〉
現代の金融は、新しいモデルの構築を考える必要があると言われています。
簡単に言うと、昔の金融のしくみには限界があるということです。
では、昔の金融のしくみはなにが問題だったのでしょうか。
昔の金融システム = 護送船団方式という考え方
昔(戦後)の日本では金融機関をつぶなさいようにする戦略を考えました。
※銀行などの金融機関がつぶれてしまうと、企業の資金調達や家計の預金など、様々なトラブルが考えられたためです。
そこで、つぶさないようにするその戦略が、「銀行同士が競争することのない世界を作る」という発想です。
銀行同士が競争するから、競争に負けた銀行がつぶれてしまうのです。だとしたら、そもそも競争するような世界を作らなければよいのでは?というように考えるようになりました。
このように、競争を排除して金融機関同士が足並みをそろえる戦後の考え方を護送船団方式と呼びます。
(護送船団とは、一番遅い船に速度を合わせるという軍事用語のことで、一番体力のない金融機関に合わせた指導などが行われていました。)
つまり、護送船団方式には限界があり、新たな形の金融のモデルを考える必要が出てきたというわけです。
【日本が考えた新たな金融の戦略とは】: 1980年代の日本版金融ビッグバン
日本版金融ビッグバン =「強力な4つの規制緩和」という視点
日本が考えた金融の戦略を「日本版金融ビッグバン」と呼びます。
ビッグバンとは宇宙の誕生を表す、あのビッグバンです。
日本の銀行を元気にするために、それくらい、新しい形の金融を日本は考えたというわけです。
日本版金融ビッグバンを一言で言うと、「強力な規制緩和」です。
「フリー・フェア・グローバル」という3つのキーワードをベースに、様々な規制緩和を行いました。
(フリーとは規制がなく自由であること、フェアとは平等に競争ができること、グローバルとは対戦相手について世界まで視野を広げることを指します。)
では、日本の金融の世界で具体的にどのような規制緩和を行ったのでしょうか。
ここでは、4つの規制緩和に注目します。
規制緩和①:金融持株会社の登場
1つめは、金融持株会社の登場です。
持株会社とは、いわゆるコンツェルン(親会社と子会社が株式でつながる企業の一形態)のことを指します。
このような会社が解禁されるようになったことで、金融業界の再編が進みました。
(実際に、大きな金融機関は三大メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)に集約され、中小の金融機関は既存の状態での限界を迎えたことで、金融機関の間で格差が拡大したと言われています。)
規制緩和②:証券ビジネス・投資ファンドの活性化
また、規制緩和が進むということは「競争原理がより強力に働くようになる」ということでもあります。
金融業界での生き残りをかけて、証券ビジネスや投資ファンドが活性化したと言われており、2つめの規制緩和の例とされます。
日本版金融ビッグバン③:政府系金融機関の再編と縮小
3つめは、政府系金融機関の再編と縮小です。
いわゆる小さな政府になることで、競争原理がより働くようになり、稼げる金融機関と稼げない金融機関との間で徐々に格差も生じてきます。
規制緩和④:ペイオフの解禁
4つめは、ペイオフの解禁です。
ペイオフについては、以下の質問を考えます。
あなたが1億円を持っていました。
この1億円をA銀行の普通預金に預けていました。
ところが、ある日突然、A銀行が倒産してしまいました。
この時、あなたが持っていた1億円はどうなってしまうのでしょうか。
上記の質問に対して、当然全額返ってくるという解答が想定されますね。
その通りです。全額返ってくると信じているから、安心して銀行にも預けられるわけです。
でも、この質問の答えが「1億円が全額返ってくる」というのは昔の話です。
現在は、銀行が倒産した場合に、預けてある金額のうち1000万円とその利息しか返ってきません。
この制度のことをペイオフと言います。
つまり。ペイオフの解禁によって、1000万円と利息までしか保証されなくなってしまったというわけです。
4つの規制緩和からわかること=自己責任が進んだ社会へ
これら4つの規制緩和から分かることは、現在の日本の金融は「自己責任が進んでいる」ということです。
政府系金融機関が縮小していることで、民間のチャンスが広がるとも言えますし、金融持株会社や投資ファンドの活性化などで、稼げる金融機関と稼げない金融機関に大きな差も生まれるでしょう。ペイオフの今、資金の管理も自己責任が求められます。
では、このような自己責任が求められた結果、どのようなことが起こっているのでしょうか。
自己責任の例:不良債権問題
いろいろなことが発生していますが、その中でも特に有名なものの1つは、不良債権の滞積という問題です。
貸しても返ってこないお金を不良債権と呼びますが、競争に負けると不良債権がたまってしまい、銀行経営が苦しくなることが考えられます。
なお、銀行にはBIS規制と呼ばれる、一定程度(国際:8%/国内:4%)の自己資本比率を維持することがバーゼル合意で求められています。
そこで、BIS規制をクリアするために、銀行の貸し渋りという現象も発生しています。
また、ESG投資への注目もされています。(環境environment/社会social/ガバナンスgovernanceという3つへの投資)
はたして、これからの金融はどのようにあるべきなのでしょうか。
※参考:金融の自由化・国際化のまとめ
○護送船団方式=金融機関がつぶれないよう、競争を排除し足並みをそろえる戦後の考え方。
※昔の仕組みには限界があり、新しい金融モデルが必要になった。
○日本版金融ビッグバン=強力な規制緩和(フリー・フェア・グローバルを基盤)。
※規制緩和の例(4つ):
①金融持株会社の解禁→金融業界の再編(メガバンク化など)。
②証券ビジネス・投資ファンドの活性化→競争原理が強まる。
③政府系金融機関の再編と縮小→小さな政府・民間競争の拡大。
④ペイオフ解禁→銀行倒産時に戻るのは「1000万円+利息まで」。
○規制緩和が進むほど、金融は「自己責任」の色が強くなる。
※自己責任が進む社会で起きやすい問題:
(1)不良債権の滞積(貸しても返ってこないお金)。
(2)BIS規制(自己資本比率:国際8%/国内4%)を維持する必要。
その結果として「貸し渋り」が起きることがある。
○発展:ESG投資(環境・社会・ガバナンス)