【ライフサイクルと発達課題とは】
ライフサイクル(人生周期)という言葉があります。
これは、「人生の流れはいくつかの段階に分けてとらえられる」という考え方のことです。
このライフサイクルについて考えた人物の1人にエリクソンという人がいます。「心理・社会的モラトリアム」を提唱した、あのエリクソンです。
エリクソンは、ライフサイクルの枠組みを「乳児期→幼児期→児童期→青年期→成人期→中年期→老年期」と考えました。
そして、ライフサイクルについて研究する中で、「人生の次の段階へ進むために、各段階で達成すべき課題(発達課題)がある」ということを考えました。
そこで、エリクソンの発達課題のとらえ方に注目します。
例を1つ考えましょう。
この質問に対するエリクソンの出した答えは、「勤勉性」です。
勤勉性が身につくか、またはつかないか、がはっきりしたときに次の段階へ進みます。(小学生のころまでは宿題を提出していたのに、中高生になったら面倒くさいが勝って宿題を提出しなくなるのは、ライフサイクルが児童期から青年期に移行した例と言えます。)
では、青年期の発達課題は何でしょうか。言い換えると、何を身につけることができれば青年期から成人期に移行することができるのでしょうか。
【青年期の発達課題】
青年期の発達課題は、「アイデンティティ(自我同一性)」の確立です。よく聞いたことのある用語ですが、どのような意味なのでしょうか。
突然ですが、1つ考えましょう。
この質問に対して、自分が考えた長所と周囲の人が考えたあなたの長所が一致すると、アイデンティティ確立だと言われます。
つまり、アイデンティティとは『「自分から見た自分」と「周囲から見た自分」が一致する』ことを指します。
そのため、青年期に悩む人の多くは、自分に対する自己認識と他者からの認識が違うことが多いということになります。
ちなみに、アイデンティティが確立しないとどうなるのでしょうか。
アイデンティティが確立しないことを「アイデンティティ拡散」と呼びます。この状況になると、人は無気力(アパシー)になってしまうとされます。(受験勉強を終えた生徒が大学に入学して、無気力になるのは「受験勉強している自分」がアイデンティティであり、そのアイデンティティを受験終了後に失ってしまうからだと言われます。(このような学生をステューデントアパシーと呼ぶことがあります。))
そう考えると、青年期においてやはりアイデンティティは確立することがどうしても重要になります。
では、具体的にどうすればアイデンティティを確立させることができるのでしょうか。
【アイデンティティ確立のためのヒント】
アイデンティティ確立のために必要なことはなんでしょうか。言い換えると、何をすると「自分を発見することができる」のでしょうか。
突然ですが、あなたのコンプレックスを1つあげるとしたら、何が考えられるでしょうか。
確立のためには様々な考え方がありますが、1つは劣等感(=コンプレックス)の苦しみと向き合うことだとされます。これは、アドラーという人が提唱しましたが、劣等感と向き合い、コンプレックスのとらえ方を変えることがアイデンティティの確立につながる可能性があると考えました。自分で考えたコンプレックスをどのように認識するかがとても重要ということですね。
他には、自己実現を目指すことも効果的とされます。ただし、自己実現のためには様々な欲求をクリアする必要があるため、様々な経験を重ねながら自己実現を目指す必要が出てきます。
そして、インターンシップやボランティアなど社会的な活動への参加もアイデンティティの確立に有効とされます。
つまり、劣等感と向き合いながら、社会参画をはじめとした様々な経験を積んでいくことでアイデンティティの確立に近づける可能性がある、ということになります。(アイデンティティの確立を経て、成人期に向かうことになります。)
そのためにも、ぜひ自分の生活や人生を振り返り、自分の心と向き合ってみましょう。
例えば、「あなたが、人生で最も感動したことはなんですか?」
このような質問に、あなたの心はなんと答えるのでしょうか。