【生命倫理とは】
生命については、生命の尊厳(SOL:Sanctity Of Life)という考え方があります。生命はとても尊く、神聖なものであるため、なにがあっても安易に死を選択するべきではない、という立場を指します。そのため、延命治療を進めて、1秒でも長生きすることが重要だという考え方が導かれます。
ところが、生命の尊厳とは違う考え方も登場しました。それが、生命の質(QOL:Quality Of Life)です。生命の「質」に注目するため、人間としていかに充実して生きるかに目を向けることになります。その場合、長生きが目的ではなく、「元気に長生き」が目的となります。そのため、終末医療などを重視することになり、尊厳死(延命治療を停止)や、安楽死(薬物投与などで人為的に死なせる)なども考えられるようになります。
このような、「生命」について様々な角度から考えていくことを生命倫理と呼びます。
【生命倫理の視点①:バイオテクノロジー】
近年は、バイオテクノロジー(生物に関する技術)が急速に進歩していると言われています。その結果、ゲノム解析(生物のDNAの配列を解読して、遺伝情報を解析すること)が進展し、ヒトゲノムにいたっては2022年4月1日に完全解読が完了したと宣言されるまできました。
さらに、現代のバイオテクノロジーではクローン技術と呼ばれる生物のコピーが技術的に可能であり、実際にクローン技術が発達してきています。その結果、体細胞を用いたクローン動物が誕生するまでになりました。(クローン羊ドリーがとても有名です。)なお、現在の技術ではヒトのクローンの作成も可能だと言われています。
だたし、日本はヒトクローンについて、ヒトクローン技術規制法を制定して、ヒトクローンを生み出すことを禁止しています。技術的には可能でも、倫理・宗教・文化などの視点を考えると、OKとは言えないのが現状です。
〈※参考:遺伝子組み換え技術の進展〉
現状は、2001年に指定食品への表示義務が課せられるようになったり、消費者の「選択の権利」が主張されるようになったりしています。
【生命倫理の視点②:再生医療の進歩】
再生医療とは「損なわれた臓器を自ら再生させる技術」を指します。
再生医療の代表はES細胞と呼ばれる万能細胞の一種です。ただし、再生医療で臓器を作れるようになるとすると、心臓などの臓器も作れる可能性があります。もし心臓を作るとすると、それは「命の操作なのではないか?」という議論も出てきています。
なお、倫理的な問題を克服した細胞として、山中伸弥教授によるiPS細胞が有名となっています。
【生命倫理の視点③:脳死と臓器移植】
日本には、臓器移植法という法律があります。この法律では臓器移植の場合に限って脳死が人の死になることを規定しています。
ちなみに、脳死は脳だけ死んでいる状態を指すため、臓器などは動いている状態となっています。また、脳死の判定基準は「自発呼吸の消失の確認後、6時間以上経過してもなお消失している」状態だとされます。
では、脳死の人の臓器移植が認められるのはどのような場合なのでしょうか。
臓器移植が認められるには条件が2つあり、その条件を両方満たす場合のみ、臓器移植が可能となります。
条件の1つめは、臓器移植の対象となる本人が「同意」しているか「意思が不明」な場合のどちらかです。
条件の2つめは、家族が「同意」している場合です。
つまり、本人が明確に否定していないこと、必ず家族が同意していることの2つが必要になるわけです。
なお、臓器移植については重たいテーマのため、細かいルールがいくつか存在します。
まずは同意の方法です。臓器提供の同意は臓器提供意思表示カード(ドナーカード)や書面で行います。
なお、臓器提供する本人が15歳未満の場合、本人の意思確認は必要ありません。
また、家族がいない場合は、本人の同意があれば臓器提供OKとされます。