現在の日本は、少子高齢化・人口減少が進むなかで、
・国の財政も苦しく、地方を助ける余裕が小さくなっていること
・地方公共団体は、自分たちの工夫と財源で生き残りを考えなければならないこと
などが、大きな問題になっています。
この記事では、
「地方自治の今の姿」と「お金=財源の仕組み・対策」を、入試でそのまま使えるレベルで整理していきます。
【地方自治の現状と地方公共団体のしくみ】
〈※確認:地方公共団体の分類〉
地方公共団体とは、都道府県と市町村の両方をまとめて指します。
また、地方公共団体は「普通地方公共団体」と「特別地方公共団体」に分かれます。
普通とは、先ほどの都道府県や市町村などの基礎的な自治体をまとめて指します。
一方、特別とは、特定の目的のために設置され、特定の事務を行う地方自治体を指します。
特別地方公共団体の代表は「特別区」と「広域連合」です。
特別区は、東京23区を指すと思ってください。
広域連合は、複数の自治体が広域的に処理した方が効率的な事務を、1つの団体として共同で処理するためのしくみを指します。
(みんなでまとめてやったほうが効率が良い事務は、それぞれの自治体に任せるのではなく、その事務専用の組織を作ってしまおう、という発想です。)
なお、広域連合の代表には、介護事業があげられます。
地方財政の現状(自主性強化とその背景)
現在の地方公共団体は、地方独自の自主性が強化されています。
その理由は、国の財政が苦しく、国が地方を助ける余裕がなくなってきたからです。
つまり、「国では助けられないから各地方自治体が自分達で頑張ってね」というのが国のスタンスです。
その結果、各地方公共団体の地方財政も苦しくなっています。
(近年は「消滅可能性都市」という言葉も出てくるようになるくらい、とにかく地方財政が苦しい状況になります。)
では、地方の自主性を強化することになった要因はなんなのでしょうか。
地方分権一括法とは?機関委任事務の廃止と自治事務・法定受託事務
それは、地方分権一括法という法律です。
この法律によって、機関委任事務(国が委任した事務)が廃止になり、自治事務(自ら実施する事務)と法定受託事務(法に基づき、国から地方に委任する事務)の2つを行うことになりました。
なお、地方に権限を委譲し、地方に頑張ってもらう前提のため、国が地方にお願いする仕事が発生すると、地方としてはやりたくないということもあるでしょう。
そこで、国と地方がモメたり、トラブルが発生したりした場合は、国地方係争処理委員会というところが対応することになっています。
このように、法律の面からも自主性の強化が進められているため、地方独自でいろいろと頑張る必要が出てきました。
地域活性化のための「お金」の視点
では、地方を盛り上げて元気にするためには、なにが必要なのでしょうか。
様々なアイデアが考えられますが、そのアイデアを実現して実際に地方を盛り上げるには、そのアイデアを実現するだけのお金がどうしても必要になります。
そのため、「アイデアを実現するお金をどこから集めてくるのか?」ということを考えなければなりません。つまり、お金の出所である財源を考える必要があります。
【地方の財源の現状:「三割自治」と財源4分類】
ここでは、「三割自治」と呼ばれる地方財政の現状と、4つの財源の分類の仕方を確認します。
「三割自治」とは?自主財源が3割しかないという現状
地方の財源は「三割自治」と表現されます。
これは、地方税など自分の自治体で用意できる財源(自主財源)が三割程度しかないために使われる用語です。
(自主財源以外の財源を依存財源と呼びます。)
つまり、約7割は自分で準備できず、なにかしらの形で他に頼っていることになります。
では、依存財源としての残りは、どのような財源が使われているのでしょうか。
「自主財源と依存財源」/「一般財源と特定財源」という2つの考え方
依存財源は大きく3つを確認します。
1つは地方交付税交付金、もう1つは国庫支出金です。
この2つはまとめて補助金と呼ばれますが、国が地方に渡すお金のことです。
では、地方交付税交付金と国庫支出金はなにが違うのでしょうか。
違いは「使途」です。
地方交付税交付金は「使途が無い」とされます。(使い道が限定されていません。)
一方、国庫支出金は「使途がある」とされます。(使い道が限定されます。)
つまり、使途があるかないかの違いだと思って下さい。
なお、使途がない財源を一般財源と呼び、使途がある財源を特定財源と呼びます。
そのため、地方交付税交付金は一般財源の依存財源、国庫支出金を特定財源の依存財源ととらえることもできます。
(ちなみに、地方交付税交付金は「地方公共団体間の財源の差を調整し、どの地域に住む国民にも一定の行政サービスを提供できるよう財源を保証すること」が目的とされているため、使途がありません。
また、国庫支出金は「地方公共団体の財政負担を軽減すること」が目的のため、お金の使い道を国が指定した上で渡すことになります。)
しかし、補助金に頼っても地方財政が不足する場合があります。
その場合は、依存財源の3つめである地方債に頼ります。
地方債について:地方の借金の注意点
地方債は簡単に言うと借金のことです。
つまり、地方は借金を財源の1つとして頼っているということになります。
そして、地方債も特定財源の一種です。
(将来的には住民の税金で返済するので、使い道が決まっている必要があるのです。)
なお、地方債は好きなように好きなだけ発行できるというわけではありません。
地方の負担の先送りという側面もあるため、地方債の発行は事前協議制がとられています。
つまり、地方債発行の前に、本当に地方債の発行が必要か話し合う必要があるというわけです。
ちなみに、事前協議をするのは、市町村の場合は知事、都道府県の場合は総務大臣ということになっています。
(なお、地方債の発行はあくまでも事前協議制であり、許可制ではないという点に注意が必要です。)
[※参考:財源の分類のまとめ]
・依存財源…地方交付税交付金、国庫支出金、地方債
・一般財源…地方税、地方交付税交付金
・特定財源…国庫支出金、地方債
また、地方債が増え続けると、地方財政が限界を迎えてしまうことも想定されます。
(実際に、北海道の夕張市は限界を迎え、財政破綻しました。このような財政破綻状態にある地方自治体を財政再生団体と言います。)
そこで、財政破綻をしないよう、可能な限りの対策が必要になります。
【財源不足への対策:三位一体の改革・合併・地方創生・ふるさと納税】
ここでは、地方の財源不足に対して、国や地方がどのような対策を取ってきたのかを整理します。
「三位一体の改革」とは:地方独自への切り替え
対策の1つは、三位一体の改革です。
①地方交付税の見直し/②補助金の削減/③税源の移譲(国→地方)という3つの改革を行って、地方独自で頑張ってもらう方向に切り替えていきました。
この改革によって国から地方への補助金の一部が削減・整理されましたが、税源も一緒に地方に移譲されているため、地方が頑張って税金を稼ぐことで地方を活性化できる可能性も含まれているとされます。
市町村合併:地域がまとまるという考え方
また、財源がないのであれば、他の市町村と協力することも考えられます。いわゆる市町村合併です。
なお、近年は市町村単位を超えて都道府県どうしが合併する道州制という考え方も登場していますが、道州制が実現した事例はまだありません。
ふるさと納税:応援したい自治体を選んで納税する制度
他にも、ふるさと納税という制度の活用があります。
これは、自分が応援したい自治体に納税することで、自分が本来納める所得税と住民税が減税されるというもので、納税した自治体から返礼品が届くためにふるさと納税は過熱しています。
(ただし、ふるさと納税の競争に負けた自治体は、さらに税収が減ってしまい、自治体間の競争を促しすぎてしまうという懸念も指摘されています。)
地方創生と国家戦略特区:ビジネス環境の整備と地域活性化
さらに、近年は地方創生の視点も注目されています。
代表的なものに、国家戦略特区の設置があります。
これは、地方創生のためにビジネスしやすい環境を一部の地域で作るというもので、盛り上がりを見せています。
なお、地方創生のために、国は「まちひとしごと創生法」を制定し、この法律によって「少子高齢化の対応」と「東京圏への人口集中の是正」を目指しています。
このように考えていくと、地方は今後消えないためにも、どのようにして生き残っていけばいいのでしょうか。
【※参考:近年の地方自治の動き】
近年の地方自治の動きとして、2つ確認します。
1つはナショナルトラスト運動です。
これは、市民が寄付でお金を集め、歴史的建造物などを守ることを指します。
もう1つは地方公務員の国籍条項についてです。
国家公務員は日本国籍のみですが、地方公務員は一部で撤廃が進んでいます。
(なお、国立大学の教員などの特殊な一部では公務員採用が進んでいます。)
〈※参考:財源の捉え方(4つの分類)〉
財源は、大きく2つの視点でとらえます。
1つは「自主財源か、依存財源か」という視点です。この2つは対立の関係にあります。
もう1つは「一般財源か、特定財源か」という視点です。この2つも対立関係にあります。
つまり、財源は「①自主財源の一般財源(地方税など)」/「②自主財源の特定財源」/「③依存財源の一般財源(地方交付税交付金)」/「④依存財源の特定財源(国庫支出金や地方債)」の大きく4つに分類することができるというわけです。
【※参考:地方自治の現状と財政のまとめ】
このブロックで確認すること
・地方自治の現状と地方公共団体のしくみ
・三割自治と財源4分類
・財源不足への対策(改革・合併・ふるさと納税・地方創生)
1.地方自治の現状と地方公共団体
・地方公共団体 = 都道府県+市町村(普通地方公共団体)+特別区・広域連合などの特別地方公共団体。
・地方分権一括法により、機関委任事務は廃止され、自治事務(自分で行う仕事)/ 法定受託事務(法律にもとづいて国から受ける仕事)の2つに整理された。
・国と地方が対立したときは、国地方係争処理委員会が調整役になる。
・国の財政も厳しく、地方に「自分たちで頑張ってね」という流れ → 地方財政も苦しくなり、「消滅可能性都市」という言葉が出てきている。
2.三割自治と財源4分類
○三割自治:地方税などの自主財源が3割程度しかなく、残りは依存財源に頼っている状態。
○依存財源の内訳
・地方交付税交付金(使途なし=一般財源)
・国庫支出金(使途あり=特定財源)
・地方債(借金。特定財源で、事前協議制がとられる)
○財源4分類(視点2つで整理)
・自主財源/依存財源
・一般財源/特定財源
→ ①自主×一般(地方税など)/②自主×特定/③依存×一般(地方交付税交付金)/④依存×特定(国庫支出金・地方債)。
3.財源不足への対策
○三位一体の改革(3点セット)
・地方交付税の見直し
・補助金の削減
・税源移譲(国→地方)
○他の対策
・市町村合併:複数の自治体が一つになり、行財政を効率化する。
・道州制:都道府県どうしの合併構想(まだ実現例はない)。
・ふるさと納税:応援したい自治体に納税し、所得税・住民税が減税され、返礼品も受け取れる。ただし、税収を失う自治体も出る。
・地方創生:国家戦略特区の設置や「まち・ひと・しごと創生法」によって、ビジネス環境の整備や人口分散を目指す。