「裁判員裁判で無罪判決」「少年法の厳罰化」など、
ニュースでときどき見かけるものでも、「どんなしくみなのか」 まで説明できる人は多くありません。
現在の日本では、
・検察の不起訴判断を市民がチェックできる 検察審査会制度
・市民が重大事件の刑事裁判に参加する 裁判員制度
・法科大学院・法テラス・ADR・公判前整理手続・被害者参加制度・公訴時効の廃止などの 司法制度改革
・少年事件の厳罰化・特定少年の扱いなど、少年法の見直し
といった変化が次々に行われてきました。
この記事では、これらの制度を
「どんなしくみか」「どんな論点があるのか」
など、様々な視点から整理し、入試や各種試験でも使えるレベルで理解していきます。
【検察審査会制度:市民が検察をチェックするしくみ】
ここでは、検察の不起訴判断を、市民がどのようにチェックできるのかを「検察審査会制度」を通して確認します。
検察審査会制度とは?(不起訴を市民が審査)
検察は、罪を犯した疑いのある人を有罪にするよう裁判にかけます。(これを起訴と呼びます。)
ところが、検察の調査の段階で起訴する必要が無い(不起訴)と判断した場合、裁判にかけられず、犯人を追及することはありません。
そこで、検察が不起訴と判断した事案に対してくじで選ばれた市民が「本当に起訴しなくてよいのか?本当は起訴する必要があるのでは?」というように、検察の判断に対して起訴すべきかどうかを審査できる制度があります。
これを検察審査会制度と呼びます。
2回「起訴相当」で強制起訴・指定弁護人のしくみ
実際に検察審査会では、不起訴となった刑事事件を審査し、検察審査会で起訴相当であると2回判断された場合に強制起訴することになります。
その際に起訴する人を指定弁護人と呼びます。
【裁判員制度:市民が刑事裁判に参加するしくみ】
ここでは、重大な刑事事件の裁判に市民が参加する「裁判員制度」のしくみと、陪審制との違いを整理します。
裁判員制度とは?(一般市民が裁判に参加する制度)
一般市民から選ばれた人達が裁判員として、裁判に参加する制度です。特徴が全部で4つあります。
1つめは、「裁判員6名+裁判官3名」であるという点です。
2つめは、「重大な刑事事件の第一審のみ」裁判に参加するという点です。
3つめは、裁判員は「有罪・無罪の決定」と「量刑に関して審理」するという点です。
(アメリカやイギリスの場合は陪審制と呼び、陪審員は事実認定のみ行って量刑までは判断しません。)
4つめは、評決(裁判の判決)は「過半数で決定するが、有罪の場合のみ裁判官1名以上を含む必要がある」という点です。
制度の評価:参加者の声・メリットとデメリット
なお、裁判員制度の経験者は、「人生観が変わった、家族や友人に対する接し方に変化が生じた」など、良くも悪くも自分の人生に影響を与えると言われています。(緊張感、ショッキングな映像を常に見るなど、様々な経験があるため)また、司法や法律に詳しくない人達が入ることで、判決がゆがむ可能性も否定できないため、裁判はプロである裁判官に任せたほうがよいのでは?という意見もあります。
はたして、裁判員制度はやめたほうがいいのでしょうか、それとも継続すべきでしょうか。
【その他の司法制度改革:法科大学院・法テラス・ADRなど】
法科大学院(ロースクール)の設置目的と現状
まずは、法科大学院(ロースクール)の設置です。
法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)になるために通う大学院ですが、法科大学院に進学する人は決して多くないとされます。
法テラス:気軽に弁護士に相談できる仕組み
他にも、法テラスの提供も注目されるようになりました。
一般の人々が弁護士に相談するのはハードルが高く、また費用の面でも心配になります。そこで、法テラスと呼ばれる気軽に弁護士に相談できるシステムが誕生しました。
また、裁判においても改革が進んでいます。
有名なのは裁判外紛争解決手続き(ADR)です。
ある事例に対して裁判で決めてもらおうとしたときに、裁判所がすぐに判断してくれるわけではありません。場合によっては結論を出すまでに年単位ということもあり得ます。そこで、裁判まで大々的にやらなくても小さな争いについては速やかに判断することで、より司法を身近にしようという取り組みです。
公判前整理手続き:裁判の前に争点や証拠を整理する制度
もし、実際に裁判として処理する場合も、裁判の前に情報を整理し、必要なポイントをまとめておくことでスムーズに効率よく裁判を進めることができます。
そのため、現在は公判前整理手続きと呼ばれる、事前の情報整理も行われています。このような裁判外紛争解決手続きや公判前整理手続きは裁判の迅速化を促すとされています。
被害者参加制度・公訴時効の廃止など、その他の改革
また、被害者参加制度(被害者が裁判所で意見を述べるなどの形で参加する制度)の充実や公訴時効の廃止(重大事件に対して犯罪行為が終わった時から法律の定める期間が経過しても、犯人を処罰することができなくなる制度の廃止)など、様々な動きが見られています。
【少年事件と少年法の見直し】
ここでは、少年事件と少年法の基本ルールを押さえたうえで、「保護」と「厳罰化」のバランスについて考えてみましょう。
少年事件の範囲:14歳以上20歳未満(18・19歳は特定少年)
少年事件とは、「14歳以上20歳未満の事件」のことを指します。(なお、18歳と19歳は特定少年という特別な扱いになり、17歳までと取り扱いが異なることになっています。)
少年法の目的:少年の保護と立ち直りを重視
また、少年に関する法律を少年法と言いますが、少年法では少年の保護を目的として、「立ち直らせること」を重視しています。
そのため、凶悪犯罪以外の犯罪の審判は非公開で、原則として保護処分となるため、保護観察か少年院で対応することになり、具体的な刑罰が無いという特徴があります。
(保護処分とは、少年事件での通常の裁判における最終的な判断の呼び方で、少年法の場合は単純な刑罰の判断となりません。)
厳罰化の流れ:刑罰適用年齢の引き下げ(16→14歳)
ただし、近年の社会の流れとして、凶悪犯罪について厳罰化している動きがあります。
そのため、刑事罰の適用年齢も16歳から14歳に引き下げ、犯罪について広く深く対処していくことになりました。
はたして、少年事件は今後も厳罰化するべきでしょうか。
【※参考:日本の司法制度改革のまとめ】
■ このブロックで確認すること
・検察審査会制度
・裁判員制度
・その他の司法制度改革(法テラス・ADRなど)
・少年事件と少年法の見直し
1.検察審査会制度
○何をする制度?
・検察が不起訴とした事件について、くじで選ばれた市民が「起訴すべきかどうか」を審査する制度。
○ポイント
・検察審査会が2回続けて「起訴相当」と議決すると、事件は強制起訴 される。
・このとき起訴を担当するのが指定弁護人。
2.裁判員制度
○何をする制度?
・一般市民が「裁判員」として、重大な刑事事件の第一審に参加する制度。
○4つの特徴(セット暗記)
・メンバー:裁判員6名+裁判官3名
・対象:重大な刑事事件の第一審のみ
・役割:有罪・無罪の決定+量刑の判断まで行う
・評決:過半数で決定(有罪のみ:裁判官1名を含む必要あり)
3.その他の司法制度改革
○法科大学院(ロースクール)
・裁判官・検察官・弁護士(法曹三者)を養成するための大学院。
○法テラス
・一般の人が気軽に弁護士に相談できる、公的な窓口・制度。
○裁判外紛争解決手続き(ADR)
・裁判まで行かずに、話し合いやあっせんなどで紛争を解決する仕組み。裁判の負担を減らし、迅速な解決を目指す。
○公判前整理手続き
・裁判の前に争点や証拠を整理し、裁判をスムーズに進めるための制度。
○その他の改革
・被害者参加制度:被害者が裁判に参加して意見を述べられるようにした仕組み。
・公訴時効の廃止:重大事件では、一定期間が過ぎても犯人を処罰できるようにした。
→ どれも「司法を身近に・利用しやすく・被害者にも配慮する」という共通のねらいがある。
4.少年事件と少年法
○少年事件の範囲
・14歳以上20歳未満の事件。
・18・19歳は「特定少年」として特別な扱い。
○少年法の目的と特徴
・少年の保護と立ち直りを重視。
・審判は原則 非公開、最終的な判断は「保護処分」(保護観察・少年院など)。
○厳罰化の流れ
・刑罰適用年齢が16歳から14歳に引き下げられた。
→ キーワードは 「市民参加」「利用しやすい司法」「被害者と少年の権利」。
この3つを意識しておくことが重要になります。