3-2.【要点まとめ】 国会の権限と審議事項について

【国会の前提】

国会の前提として、日本は「二院制」を採用しています。衆議院参議院という2つの院で構成されています。

 

【国会の権限】

国会が持っている権限は大きく3つあります。

1つめは「憲法改正の発議」です。日本国憲法を改正しましょう!と日本国民に提案できるのは国会だけだという話です。なお、憲法の改正のためには各院総議員の3分の2以上の賛成が必要です。そして、憲法改正の発議を受けて、18歳以上の日本国民による国民投票が行われ、過半数の賛成で実際の改正になります。

2つめは「国政調査権」です。国会は、法律を作ったり、行政を監督したりするために、関係者への質疑や資料提出の要求などを実施することで国の政治について調査することができる権利を持っています。これを国政調査権と呼びます。

3つめは「行政の案や内閣の審議」です。国会の権限として最も大事なのは「審議です。

 

【国会では、何が審議されているのか】

国会の最重要の仕事は「行政の案や内閣の審議」です。ポイントはあくまでも「審議」をする役割を担っているという点です。審議する案を作ることと、審議が通った案を実行するのは内閣(行政権)の仕事です。つまり、行政の案を審議し、GOサインを出すのが国会の最重要任務だと思ってください。審議の内容は①~⑤の大きく5つあります。

 

①は「予算の議決」です。お金の使い道の予定を計算したものを予算と呼びますが、内閣が作った日本の予算について審議するのが国会の役割①です

 

②は「条約の承認」です。世界全体の約束を条約と呼びますが、この条約を結ぶ(締結する)のが内閣の役割です。ということは、国会は審議をするので、「内閣が締結した条約が本当にOKなのか」という点を審議することになります。そして「その条約を締結してOK」と認めることを条約の承認と呼びます。

 

③は「内閣総理大臣の指名」です。様々な人がいる中で「この人にしよう!」と決めることを指名と言います。内閣総理大臣については「国会議員の中から選ぶ」というルールがあるので、国会議員で話し合って国会議員の中から内閣総理大臣を「この人にしよう!」と決めることになります。

なお、「内閣総理大臣の任命」というのがあります。任命とは、指名された人に対してOKサインを出すことです。内閣総理大臣の任命は天皇が担当します。(国事行為の一つとして、内閣の助言と承認に基づいて任命します。)

 

④は「法律案の議決」です。内閣か国会議員が提出した法律案を審議するのが法律案の議決です。

 

〈※注意:法律は誰が作るのか〉

 法律を作るのは国会です。そのため、国会議員から出された法案を審議して法律として制定することになります。ただし、国会議員は全ての分野の専門家ではないので、制定しようとしている法律の内容全てを国会議員が作るのは現実的ではありません。そこで、法律は国会議員が提出しますが、法律の細かい部分を政令や省令などの形で内閣(官僚)が制定して、より具体的にしていくことがあります。このような政令や省令を通して法律の細部を整えていくことを委任立法と呼びます。ただし、現在は政令や省令などの細部でなく、法律それ自体を最初から内閣が作って提出してしまうという動きも見られるようになりました。これを内閣提出法案と言います。つまり、法案は「議員提出法案」と「内閣提出法案」の2種類があるということになります。ただし、内閣は行政の役割が本来の仕事であるため、法案を内閣が提出するのは国会(立法)の権限を奪っているのでは?という批判も出てきています。
なお、法案の成立件数を比較すると、内閣提出法案のほうが成立件数が多く、議員提出法案の約5倍とされています。それだけ内閣提出法案のほうが成立件数が多いのは、国会は多数派である与党が意見を通しやすく、与党のリーダーが内閣総理大臣となっているためだとされます。それだけ内閣提出法案を与党が通しやすいという特徴があります。

 

⑤は「内閣不信任決議」です。内閣が出してくる案や、そもそも内閣自体を信頼できなくなった時に、国会側から「内閣を信頼できません」と言って、内閣と国会の関係をリセットすることを行います。(リセットできる根拠を議院内閣制と呼びます。)

ちなみに、内閣不信任決議が出た場合、内閣は総辞職解散総選挙に持ち込むことを選ぶことになります。(ただし、解散総選挙の場合でもいずれにしろ内閣は辞職することになります。)

 

まとめると、①予算の議決/②条約の承認/③内閣総理大臣の指名/④法律案の議決/⑤内閣不信任決議の5つが審議の内容です。

なお、この5つの審議内容には「二院制」が理由で「衆議院の優越」という特殊なルールが絡んできます。

 

【「衆議院の優越」とは】

国会の審議の際には、(1)~(4)までの4つの特殊なルールが存在します。

現状、衆議院と参議院で意見が異なった場合は両院協議会という会議を開き、衆参の両方が集まって話し合うことで最終的な意見を決めますが、それでも衆議院と参議院の意見が異なったままでまとまらなかった場合は、衆議院の意見が採用されます。これが‘(1)のルールです。

ただし、審議の内容について、法律だけは特殊なルールが存在します。(法律は他の項目に比べて慎重に判断する必要があるとされているからです。)法律の審議について衆議院と参議院が異なった場合は、衆議院でもう一度審議を行い、「出席議員の3分の2以上の賛成で再可決」した場合に法律として成立します。これが(2)のルールです。

なお、予算については「先議権」というものがあります。予算は国の方向性を決めるとても重要な内容なので、衆議院が先に予算について審議するというルールがあります。これが(3)の「予算の先議権」というルールです。

そして、(4)のルールとして、内閣不信任決議は衆議院だけしか出すことができないというルールがあります。

このように、(1)~(4)までの4つの特殊なルールがあるのですが、これら4つの根拠となるのが、「衆議院の優越」と呼ばれるものです。つまり、衆議院よりも参議院のほうが優越されるルールが全部で4つあるということになります。

 

衆議院の優越が認められるポイントは「任期」と「解散」です。衆議院は任期が4年に対し、参議院は任期が6年です。つまり、衆議院のほうが、任期が短いのです。そして、衆議院のみ解散の可能性があります。(内閣不信任決議に対して内閣が解散を選択した場合、解散するのは衆議院のみです。逆に、参議院に解散はありません。)このような、任期の短さと解散があることによって衆議院のほうがより民意(国民の意見)を政治に反映させやすいという特徴があります。

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