内閣は実際にどんな仕事をしていて、今の行政はどう動いているのでしょうか。
この記事では、「内閣の仕事」と「現在の行政のしくみ・問題点・改革」の全体像を整理していきます。
【内閣の3つの仕事(職務と権限)】
内閣は具体的になにを行っているのでしょうか。
内閣は大きく3つのことを行っていると思ってください。
仕事①:政策づくりと実行…予算案・条約・政令
内閣の仕事の1つめは「案や政策の作成と実行」です。
様々な案や政策を作成して国会へ提出し、国会の審議を経て案や政策を実行していきます。
政策を実行していくので行政ですね。
ちなみに、内閣の話し合いを閣議と呼びますが、この閣議は全会一致制とされています。
では、具体的にどのような案を作成しているのでしょうか。
内閣が作成している案は大きく3つです。
1つめは「予算案の作成」です。
内閣が日本政府の年間のお金の使い道を提案します。
そして、その予算案を国会が審議して、OKであれば、実際に内閣が予算案に基づいて政策を実行していきます。
つまり、内閣は予算案の作成と審議を終えた予算案に基づいて行政を進めるという2つの役割を持っているわけです。
あくまでも国会は予算案にOKを出すかどうかだけの役割です。
2つめは「条約の締結」です。
外国と条約を結びます!という提案をします。
(国会は、内閣が締結した条約に対して「了解しました!」と承認します。)
3つめは「政令の制定」です。
政令とは、法律の範囲内で内閣が独自に作成するルールを指します。
なお、近年は法律自体を内閣が作って国会の審議にかけるという動きも出てきました。これを内閣提出法案と言います。
(ただし、内閣提出法案は国会の権限を奪っているのでは?という批判もあります。)
さらに、法律の範囲内で作られるルールのもう1つに省令というのがあります。
これは、法律の細かい部分について各省が作成したルールのことを指し、「○○法施行規則」という形で表現されます。
つまり、内閣が作るルール=政令/各省が作るルール=省令という違いがあります。
ただし、政令と省令を比較したときに、政令のほうが大きいという特徴がある点は注意が必要です。
(「法」は憲法 → 法律 → 政令 → 省令という順番で言葉の大きさが並ぶということになります。)
「予算案の作成/条約の締結/政令の制定」という、これら3つの案を内閣が作っていくと思って下さい。
〈※注意:法律は誰が作るのか〉
ここまで、行政は「案の作成」、国会は「行政が作成した案の審議」という役割分担を行っていることが分かりました。
ただし、行政の「案の作成」でも「法案の作成」については触れてきませんでした。
「行政が「案を作成する」という役割を担うとするならば、法律も行政が作るのでは?」と考えられます。
しかし、日本で法律を作る権利(立法権)を持っているのは国会です。
では、法律は内閣と国会のどちらが作るのでしょうか。
仕事②:天皇の国事行為への助言と承認
内閣の仕事の2つめは「天皇の国事行為に関する助言と承認」です。
内閣総理大臣の任命などの国事行為を天皇が行う場合に、内閣が助言と承認を行う、という感じですね。
〈※参考:天皇の国事行為一覧〉
天皇の国事行為は、大きく「①任命/②認証/③国会関連/④国民への提示/⑤その他」の5パターンに分けられ、全部で13の国事行為があります。
①任命は、別の人たちの指名によって決められた人に対してGOサインを出すことです。
天皇の任命は「内閣総理大臣」と「最高裁判所長官」の2つだけです。
(総理の指名は国会の、最高裁判所長官の指名は内閣の役割です。)
②認証は、天皇が認めることです。
天皇が認証するのは、「国務大臣や大使」/「恩赦(減刑や刑の執行の免除)」/「条約」の3種類です。
③国会関連は2つだけで、「国会の召集」と「衆議院の解散」です。
ただし、国会の召集は「通常国会/臨時国会/特別国会」の3種類だけで、参議院の緊急集会は該当しない点に注意です。
④国民への提示は2つだけで、「法の公布」と「国会議員の総選挙の公示」です。
ここでいう「法」は、憲法改正/法律/政令/条約の4種類を指します。
⑤その他は4つあり、栄典の授与/外国の大使や公使の接受/儀式の実施/病気などの際の国事行為の委任が該当します。
仕事③:最高裁判所長官の指名と、裁判官の任命
内閣の仕事の3つめは「最高裁判所長官の指名」です。
大事なのは、あなたに決めた!と指名するのは「最高裁判所のリーダーだけ」だという点です。
(なお、最高裁判所のその他の裁判官と下級裁判所の裁判官は、内閣が任命をします。また、下級裁判所の裁判官は最高裁判所が指名します。)
このように、内閣の仕事は「案や政策の作成と実行/天皇の国事行為に関する助言と承認/最高裁判所長官の指名」の大きく3つを担っています。
【行政国家と官僚政治・官僚制とは何か】
近年の日本は、行政国家と呼ばれます。
官僚政治とは?官僚の役割と影響力
これは、行政が中心となって国が進んでいるという話です。
その代表が「官僚政治」と呼ばれるものです。
官僚とは中央省庁に勤めている人達のことで、この人達の様々なアイデアによって政治が動いていることを考えると「官僚政治」と表現されるようになります。
官僚制の特徴:セクショナリズムと縦割り行政
なお、官僚は官僚制で動いているとされます。
官僚制とはいわゆるお役所など規模の大きい組織に見られるシステムでマックスウェーバーという人が分析しました。
役所の仕事は、部署ごとに明確に職務の権限が決まっており、「自分たちの仕事は自分たちの部署で」対応するというセクショナリズムの考え方が一般的です。
そのため、お役所は横のつながりがかなり少なく、縦割り行政とも呼ばれます。
「お役所仕事」と呼ばれる理由(ヒエラルキー・非効率性など)
また、役所は入庁後すぐがヒラのポジションでも、主任→係長→課長→部長と徐々に出世していくピラミッド型の上下の序列があり、ヒエラルキー(階層性)が明確になっているという特徴もあります。
さらに、役所は合理性を追求する一方でミスも許されないため、文書や法律にこだわるという特徴もあります。
そのため、「文書や法律にないことはできません」というように融通がきかず非効率になることもかなり多くあります。
「お役所仕事」と揶揄されるのはこのあたりからきているとも言われます。
【委任立法・内閣提出法案・許認可行政】
委任立法とは?政令・省令など「細かいルール」を行政が作ること
また、近年は委任立法も増加したと言われます。
委任立法とは、「法律の細部を内閣府や各省が作ること」で、政令や省令などが委任立法の代表例です。
「法律を作るのは国会の仕事では?」という疑問が生じますが、法律を作るための必要な知識を全て国会議員が持っているとは到底考えられません。
そこで、大枠は国会議員が作って、それぞれの分野に詳しい官僚に細かい部分を委任しようとしているのが現状です。
ただし、近年は法律の全ての官僚が作るという内閣提出法案も見られるようになりました。
許認可行政とは?法律外でも行政が規制できる場面と、その問題点
さらに、許認可についても注目されるようになりました。
許認可とは、特定の事業を行うために行政機関から取得する許可や認可のことを指しますが、この許認可は法律とは関係ないところで規制をかけることもでき、各省庁が独自の権限を持つことにつながるため、行政の力が増大していると言われています。
このように、官僚の力が大きくなってくることで懸念される事項もでてきました。
それは「官僚のやりたい放題になってしまうのでは?」という点です。
実際に、「天下り」(官僚が退職後、関係する民間企業に幹部として再就職すること)などへの批判も出てくるようになり、行政における透明性の確保が必要だと言われるようになってきました。
そこで、透明性や天下りへの対応が以下のように考えられるようになりました。
【行政の民主化を進める制度(行政委員会・オンブズパーソン)】
行政委員会とは?一定の独立性をもつ行政機関
まずは、行政委員会と呼ばれる、一定の独立性を保って行政権を行使する組織の設置です。
(公正取引委員会や国家公安委員会など、○○委員会と呼ばれるものが該当します。)
行政委員会で特に有名なものが教育委員会です。
(教育委員会のメンバーは、知事が議会の同意で任命します。)
なお、行政委員会は独立しているという点から、準立法的機能/準司法的機能を持つ、という特徴があります。
これは、行政委員会が独自でルールを作成したり、独自に裁判的な判断を行ったりすることが認められているというものになり、行政から独立している分、それだけ行政委員会に強い権限が与えられているというわけです。
行政監察官制度(オンブズパーソン制度)とは何か
また、行政監察官制度(オンブズパーソン制度)も出てきました。
オンブズパーソンは、「苦情申立人と市役所の間に入って市民の要望を速やかに解決する人」という意味ですが、こういう人達の活躍によって、市民の意見が行政に反映されるようになることが重要だとされています。
ただし、オンブズパーソンは設置が義務ではない点に注意が必要です。
(なお、オンブズパーソン制度は、地域レベルの実施のみで国では実施されていません。)
【行政の透明性と行政改革(行政手続法・情報公開法など)】
そして、最近は行政改革も進み、「透明性の確立」が一層叫ばれるようになりました。
具体的には透明性を確保するための法律を作ることで対応しています。
行政手続法と情報公開法
有名な法律の1つが行政手続法です。
許認可などについてルールを設けています。
また、情報公開法も有名です。
国の行政が持つ情報を公開する法律ですが、あくまでも国の行政のみで、国会と裁判所は含まれません。
また、個人情報が含まれる場合など、一部の情報は不開示となります。
なお、情報公開については外国人も請求できるとされています。
天下り批判への対応:官民人材交流センターと内閣人事局
さらに、天下りの批判については、内閣府に官民人材交流センターという機関を作ることで、天下りをまとめて扱うようにしました。
その後、内閣人事局を作り、内閣の幹部の人事を一元的に管理するようになりました。
内閣人事局が(採用や異動などを含めた)人事のプランを作り、官民人材交流センターが離職後の就職の支援を具体的に行うイメージです。
なお、官僚の人事について「人事院」という言葉が扱われることがありますが、人事院は官僚の給与を担当する役割を担っているので、注意が必要です。
このように、近年は行政で様々な動きが見られるようになり、注目が集まるようになりました。
はたして、これからの日本の行政はどうあるべきなのでしょうか。
【※参考:内閣と現在の行政のまとめ】
このブロックで確認すること
・内閣の主な仕事(行政権の中身)
・行政国家・官僚政治・官僚制
・委任立法と許認可行政
・行政をコントロールするしくみ(委員会・法律など)
1.内閣の主な仕事(行政権の中身)
○政策づくりと実行
・予算案の作成/条約の締結(国会の承認が必要)
・法律の範囲内で政令を出し、細かいルールを決める
○天皇の国事行為への助言と承認
・天皇は、内閣の「助言と承認」に基づいて国事行為を行う
○裁判所との関係
・最高裁判所長官の指名、その他の裁判官の任命に関わる
→ 「政策を決めて実行する」「国事行為を支える」「裁判所トップを指名する」 が内閣の仕事。
2.行政国家・官僚政治・官僚制
○行政国家
・福祉国家の発展などで、行政(内閣・官僚)が国の中心になって動いている状態
○官僚政治
・中央省庁の官僚が、政策づくりで大きな影響力をもつ状態
○官僚制の特徴
・セクショナリズム(縦割り行政)/階層性(ヒエラルキー)が強く、「お役所仕事」と批判されることも
3.委任立法と許認可行政
○委任立法
・法律の細かい部分を、政令・省令などで行政が決めるしくみ
・専門性とスピードの面では便利だが、行政の権限が強くなりやすい
○内閣提出法案
・官僚+内閣が作成し、内閣の名で国会に出す法律案
・「国会の立法権が弱まらないか」という点が問題になりやすい
○許認可行政
・行政が、許可・認可を通じて実質的に規制を行うしくみ
・法律に書かれていない部分でも、行政の力が大きくなりやすい
4.行政をコントロールするしくみ
○行政委員会・オンブズパーソン制度
・行政委員会:一定の独立性をもつ「〇〇委員会」(公正取引委員会など)
・オンブズパーソン:市民の苦情を受け、行政の仕事ぶりをチェックする役目
○行政手続法・情報公開法
・行政手続法:許認可や行政指導のルールを明確にし、公平・透明にする法律
・情報公開法:行政が持つ文書の開示を国民が請求できるようにした法律