6-8. 生活に困ったら、国はどうやって助けてくれるのか(日本の社会保障制度の4本柱)

あなたは、これからの自分の人生をどのように歩んでいこうと考えていますか。
どこかに就職しますか。
誰かと結婚しますか。
出産は考えていますか。
老後はどのように過ごしますか。

自分自身のライフプランを考えましょう。

 

ただし、基本的に自分の描いたライフプラン通りにはいきません。
突然病気になって多くのお金が必要になったり、自然災害に巻き込まれて人生が一変したりなど、人生には様々なリスクが存在するためです。

そこで、以下の①~⑥のリスクに対してどう対処するか、対処法を考えましょう。

〈①~⑥のリスク〉

①がんの治療のためにお金が大量に必要になった
②老後のお金がない
③ケガをして働けなくなった
④仕事をクビになってしまった
⑤親の介護でお金が大量に必要になった
⑥仕事につけず、生活ができなくなった

これら①~⑥に対してできる対策は、なんなのでしょうか。

 

【社会保障制度とは】

日本では、国で様々なリスクや困窮に対して保障してくれる制度が大きく4つ存在します。その制度が社会保険公的扶助社会福祉公衆衛生の4つです。

 

【社会保険について】

日本では、日本社会全体で支える保険制度が誕生し、社会保険と呼ばれました。

ちなみに、社会保険は1960年代初頭に日本国民全員が加入することになり、国民皆保険と呼ばれました。(このときに年金も日本国民全員が加入しているので国民皆年金とも呼ばれました。)

 

また、社会保険制度は全部で5種類あります。

1つめは医療保険です。
現在の日本で病院の治療費1万円に対して自分で負担する分が3000円で済むのは医療保険のおかげです。この医療保険では様々な部分でカバーしてくれます。例えば、高額療養費制度というのがありますが、この制度のおかげで病気の種類や治療内容など一定の条件を満たした場合に、一定程度の金額以上の医療費の支払いをすると戻ってきます。
つまり、リスク①(がんの治療のためにお金が大量に必要になった)は、ある程度対応できるようになります。

なお、高齢者の医療費については、老人福祉法という法律によって無料化されていましたが、老人保健制度というしくみによって、一部負担が生じることとなりました。

このように考えていくと、リスク②(老後のお金がない)は社会保険の中に含まれる年金保険である程度対応できますし、
リスク③(ケガをして働けなくなった)は労災保険で対応できます。
さらに、リスク④(仕事をクビになってしまった)は雇用保険で、
リスク⑤(親の介護でお金が大量に必要になった)は介護保険である程度対応可能です。

なお、年金保険は高齢者になったときにもらえる老齢年金以外にも、障害を持ったときにもらえる障害年金と、親族が亡くなった場合にもらえる遺族年金の大きく3種類があります。

というわけで、医療・年金・労災・雇用・介護の5つの社会保険を活用することでかなりの部分をカバーすることができます。

ちなみに、社会保険の費用負担は「政府・事業者・被保険者」の3者となっています。
ただし、介護保険については、事業者は関係ないため、「政府・被保険者」で費用負担をすることになっています。
また、労災保険はケガをさせる職場環境を提供している事業者の問題であるということから「事業者のみ」が費用負担することになっています。
医療・年金・雇用の3つの保険は「政府・事業者・被保険者」の3者で負担することになっています。

 

では、リスク⑥(仕事につけず、生活ができなくなった)はどうやって対処すればいいのでしょうか。

こんなリスクに対しても、日本は対策を準備してくれています。

 

【公的扶助について】

リスク⑥(仕事につけず、生活ができなくなった)の対処として日本が考えているのが公的扶助です。

扶助とは「力を添えて助けること」なので、公的な仕組みが力を添えて生活が難しい人を助けるのが公的扶助ということになります。

ちなみに、公的扶助を実施する際の根拠となる法律を生活保護法と呼びます。つまり、生活ができなくなった人の対策として生活保護制度が使えるということになります。では、

 

生活保護では、どこまで受給者の生活を保護してくれるのでしょうか。

 

生活保護では、全部で8種類の扶助が用意されています。

1つ目は「生活扶助」です。
水道光熱費や通信費、食費など日頃の生活を過ごしていくのに必要となるお金を毎月もらえます。自治体によって金額は大きく異なりますが、約10万円前後程度もらえます。ただし、これらはあくまでも生活に必要な扶助ですので、家賃が含まれていません。

そこで、2つ目が「住宅扶助」です。
家賃は生活扶助と別途もらえます。これも自治体によって大きく異なりますが、約3~5万円程度もらえます。というわけで、生活扶助と家賃扶助で13~15万円くらいもらえる計算ですが、この金額で多くの貯金を準備して将来のリスクに備えることは難しそうです。しかも、生活保護受給者には独居の高齢者も多くいます。そんな高齢者が医療や介護を使うことも十分に想定されます。

そのため、3つ目と4つ目が「医療扶助」と「介護扶助」です。
医療サービスや介護サービスを受ける場合、生活保護で全額負担してもらえます。(病院で薬代や入院代などを含めた費用を一切支払う必要がないということです。)これで、病気などになった場合も安心です。一方で、生活保護では片親の家庭などが受給していることもあり、特に小さな子供が生活保護受給に含まれていることもあります。そんな子供のための扶助も存在します。

それが、5つ目の「教育扶助」です。
18歳未満の子どもが確実に教育を受けられるようにするための扶助です。教育扶助には、給食費なども含まれます。さらに、近年は社会人で受給している人も決して少なくありません。生活保護という制度は、あくまでも生活を助けるだけであり、一人で稼いで生活できるのであれば生活保護の必要がありません。そのため、生活保護を受給している社会人はハローワークなど就労支援を受けることがあるのですが、日々の生活にお金を使ってしまうため、就労のためにお金を使うことが出来ません。

そこで、6つ目の「生業扶助」が存在します。
受給者の技能習得や就労支援に必要となる費用などを負担してもらえます。このように考えると、「生活保護」という名称の通り、生活全般を全て保護してくれているのです。

そのため、7つ目の「出産扶助」というのも存在します。
諸事情により出産に関する費用を使うことは十分に想定されます。そして、出産があれば死亡もあるわけですね。

よって、8つ目が「葬祭扶助」となります。
生活保護の制度を使って最期を見届ける、ということもあり得ます。

 

このように、生活保護は「生活・住宅・医療・介護・教育・生業・出産・葬祭」の全8種類あり、受給者の出産から死亡まで、生活の全てを自治体で扶助することになっています。

そして、生活保護の費用は当然ですが全額公費となっています。ただし、生活保護の目的はあくまでも「健康で文化的な最低限度の生活を保障」することです。
そのため、本人に資産や稼ぐ能力がある場合は受給が難しくなります。
また、親族の扶助で足りてしまえば生活保護を使う必要はありません。つまり、生活保護は親族が扶養する義務が優先されることになります。

このような生活保護については制度内容について賛否が分かれているところではありますが、社会保険や生活保護などの議論から、こんな考えが登場しました。

 

「社会保険と生活保護を全て廃止してベーシックインカムにするという考え方はアリかナシか」です。

 

ベーシックインカムとは、日本国民全員に毎月お金を配ろうという制度のことを指します。
国民は毎月基礎的な収入が保障されるのでベーシック(基礎的な)インカム(収入)と呼ばれます。

ベーシックインカムによって、様々なメリットとデメリットが考えられますが、この考え方を日本に導入するとどのようになることが想定されるのでしょうか。

 

【社会福祉と公衆衛生】

社会保険と公的扶助以外の社会保障として、社会福祉公衆衛生があります。

社会福祉は、社会全体としての幸福度を高める政策を指します。(福祉と似た言葉に幸福がありますが、幸福は個人の幸せの追求と考えて下さい。)

そして、日本は福祉六法を制定し、福祉六法の対象者を福祉事務所が中心に支えることで社会福祉を実現させようとしています。

六法の対象は「①児童/②老人/③身体障害/④知的障害/⑤生活保護/⑥母子及び父子並びに寡婦(子供が成人した母子)」となっています。

ところが、現在の日本は福祉を必要とする場面が多く、社会保険料の増加の一途をたどっています。

 

そこで、「社会保険料は今後も上げるべきか」という議論が考えられるようになりました。

 

社会福祉は何が正解なのでしょうか。

 

なお、社会福祉のサービスの決定は「措置制度→利用契約制度へ」移行しています。
今までは社会福祉サービスを行政が決定していましたが、近年は自らがサービスを決定するようになっています。行政が決定する場合を措置制度と呼び、自らがサービスを決定する場合を利用契約制度と呼びます。

 

また、公衆衛生は、人々の生活環境や医療体制などを充実させていく政策を指します。

担当は保健所で、コロナ対応などは公衆衛生の範囲になります。

 

このように、社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生の4本柱で、日本の社会保障が構成されていますが、どのような社会保障のあり方がのぞまれるのでしょうか。

 

〈※参考:社会保障の財源の2パターン〉

社会保障の財源は大きく2つあります。

1つは税金で、もう1つは社会保険料です。

社会保障の財源についてヨーロッパを例に考えた場合、税金を中心とする場合を英・北欧型と呼び、社会保険料を中心とする場合を大陸型と呼びます。(大陸型はドイツやフランスなどを指しますが、ヨーロッパ大陸の中心にある国々なので大陸型です。)

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