授業をつくるとき、「せっかく扱うなら、あれもこれも教えたい」と考えることはよくあります。教師としては自然な思いですし、子どもたちに少しでも多くの力をつけたいという願いが表れていることでもあります。
ただ、授業は「教師がどれだけ話したか」ではなく、「学習者が何を持ち帰れたか」が重要になります。
だからこそ大切なのは、内容を足していくことより、最後まで理解できる量まで引き算することです。
授業づくりは、生徒の頭に学びを残すために焦点をしぼる作業だと考えると、実際に作った授業の内容が大きく変わります。
「何を増やすか」ではなく「何を残すか」で授業をつくる
授業づくりで最初に決めたいのは、「今日の授業で、子どもに何を持ち帰らせたいか」です。ここが曖昧なまま「あれも大事」「これも触れたい」と広げていくと、説明は増えるのに、その回の授業の核心が見えなくなります。
すると、子どもは何に集中すればよいのか分からなくなり、授業の後半ほど苦しくなります。
そこでおすすめなのが、授業内容を三つに分けて見る方法です。
一つ目は、その時間の核になる内容です。
二つ目は、その核を理解するために必要な支えの内容です。
三つ目は、あると豊かになるけれど、その時間になくても成立する内容です。
授業では、この三つ目を思い切って削ることが大切です。
削るというと、内容を薄くするように感じるかもしれません。しかし実際には逆です。中心がはっきりすると、説明も問いも活動も一本につながり、授業全体はむしろ深くなります。
たとえば、「この時間で必ず分かってほしいことは何か」「そのために本当に必要な説明は何か」「次の時間に回してもよいものは何か」と問い直すだけでも、授業案はかなり整理されます。
授業者の頭の中が整理されると、子どもに見える授業の流れも自然にすっきりします。
さらに、削る基準として有効なのは、「授業の最後に、子どもが自分の言葉で説明できるか」で考えることです。
説明できるようにしたい内容が一つに定まれば、生徒に示す例や資料の数も絞れます。
反対に、説明させたいことが三つも四つもある授業は、たいてい盛り込みすぎています。学習目標を短く言い切れるかどうかは、引き算ができているかを確かめるよい物差しになります。
なぜ「引き算」の授業は効果的なのか――コース料理で考える
引き算の授業が効果的なのは、人が一度に理解し、整理し、記憶できる量には限りがあるからです。
授業の中で新しい言葉、考え方、手順、例題、活動が次々に出てくると、子どもは目の前の内容を追うだけで精いっぱいになります。
すると、前半の理解を使って後半を考える余裕がなくなり、結局は「いろいろやったけれど、何が大事だったのか分からない」という状態になりやすいのです。
ここで授業をコース料理にたとえてみます。おいしい料理でも、短い時間に大量に運ばれてきたら、味わう前におなかがいっぱいになります。最後の料理は、目の前にあっても楽しむ余裕がありません。
授業も同じです。内容が多すぎると、学ぶ力が足りないのではなく、消化する時間が足りなくなります。
反対に、量が適切なコース料理は、一皿ごとの意味がよく分かり、全体としての満足感も高くなります。
授業でも、扱う内容をしぼると、子どもは「今はこれを考えればよい」と焦点を合わせやすくなります。
その結果、発言が具体的になり、活動にも見通しが生まれ、最後のまとめまでたどり着きやすくなります。
教師にとっても、何を見取り、どこを支援すればよいかが明確になります。
さらに、内容がしぼられた授業は、子どもに小さな成功体験をつくりやすいというよさもあります。
「今日はこれが分かった」「これなら自分でもできた」と感じられると、次の学びへの意欲が生まれます。
授業は一回ごとの積み重ねです。毎時間の達成感がはっきりすると、学級全体の学ぶ空気も安定していきます。
大事なのは、「多く教えた授業」ではなく、「確かに分かったことが残る授業」を目指すことです。
授業づくりで迷ったときは、足す前に一度削ることを考えてみてください。