【なぜ人は悩むのか(悩みの原因)】
悩みの要因は一言で表すと「欲求」です。ちなみに、この欲求は大きく2種類に分けられます。
1つ目は「生理的欲求」です。これは、生命の維持に必要な欲求で動物が持つ欲求だと言われます。食欲、睡眠欲、性欲、排泄欲などが該当します。
2つ目は「社会的欲求」です。これは、人間が持つ独特の欲求だと言われます。安全に過ごしたい、誰かと仲良くしたい(誰かに愛されたい)、誰かに認められたい、自分のやりたいことを実現したいなどが該当します。
ちなみに、生理的欲求が満たされないと社会的欲求は満たされないと言われています。逆に、生理的欲求が満たされていない状況では、社会的欲求は出てこないため、生理的欲求が満たされていない時にその人の本性が出ると言われています。
そして、欲求は満たされないこともあれば、欲求がたくさんあって困ってしまう、ということもあるでしょう。この、欲求が満たされない状態を「欲求不満(フラストレーション)」と呼び、欲求が重なる状態を「葛藤(コンフリクト)」と呼びます。
【悩みの対処法】
悩みの対処法として、現在は「防衛機制を活用しながら適応行動で対処する」のがよいとされています。
防衛機制とは、悩みに対して無意識のうちにごまかして時間を稼ぐことです。
また、適応行動とは、欲求不満や葛藤に適応することです。
【適応行動の方法】
適応行動には、大きく2つが考えられます。
1つ目は「欲求不満耐性(フラストレーショントレランス)を高めること」です。
ストレスに強い人は、欲求不満耐性が高いということになります。これを高めるためには様々な方法が考えられますが、欲求不満耐性の度合いは人それぞれなので、個人でも欲求不満耐性の高め方を検討していく必要があります。
2つ目は「成功体験を積み重ねること」です。
実際に経験を積む中で、成功したときを思い出して実践できれば、欲求を満たすことが出来る(悩みが解消できる)とされます。つまり、悩みの対処は経験を積んでいくことで見えてくる可能性があるということです。
そして、成功体験を多く積むために、試行錯誤を繰り返すことで、自分の適応行動を把握していくことが大切になります。
【防衛機制とは】
人間は、緊張やストレスがかかると、その緊張やストレスで自分の心がつぶされないように無意識のうちに自分の心をなにかしらの方法でごまかそうとします。この「無意識の心のごまかし」のことを「防衛機制」と呼び、フロイトという人が提唱しました。防衛機制には抑圧、合理化、取り入れ、投射、反動形成、逃避、退行、代償、昇華など、いくつもの種類があります。
抑圧とは、欲求を無意識に閉じ込める(なかったことにする)ことです。恋愛の場合は、「もう恋なんかしない」と思って自分を落ち着かせること、受験の場合は、「ムダに部屋の掃除」などを行い、受験を完全に忘れることなどを指します。
合理化とは、欲求に理由をつけて自分を納得させることです。恋愛の場合は、「自分のよさは30代になればわかる」と思って自分を落ち着かせること、受験の場合は「受験の後は明るい未来が待っている」などのようにポジティブにとらえることなどを指します。
取り入れとは、他人の行動を見て自分ごとのように満足することです。恋愛の場合は、「もてる友達を見て満足する」こと、受験の場合は、「勉強できる人を見て満足する」ことを指します。取り入れは、その人を憧れの対象(目標)にするならアリだとされます。
投射(投影)とは、自分が思っていることを相手が思っていると思い込むことです。恋愛の場合は、「相手が自分を好きだと思う」ことで、現代的にはストーカーに近いものが考えられます。また、受験の場合は、自分が勉強できないのにも関わらず「あいつは勉強ができない」と思い込むことなどを指します。
反動形成とは、自分の気持ちと反対の行動を取ることです。恋愛の場合は、「好きな子に冷たい態度を取る」ことで、受験の場合は、「自分にウソをつく(勉強しているのに、周りに勉強していないという)」ことなどを指します。
逃避とは、ある出来事から逃げようとすることです。恋愛の場合は、「好きな子と関わらない」ことで、受験の場合は、「受験から逃げる」ことなどを指します。
退行とは、子供のときのような行動を取ることです。恋愛の場合は、「幼稚な行動で好きな子の目をひく」ことで、受験の場合は「幼稚な行動で自分の心をコントロールする」ことなどを指します。
代償とは、欲求を別の欲求に置き換えて満たすことです。恋愛の場合は、「好きな子ではない別の子と付き合う」ことで、受験の場合は「別の形でストレスの発散を行う」ことなどを指します。
昇華とは、欲求を社会的に良いとされるものに置き換えて満たすことです。恋愛の場合は、「恋愛に失敗したからスポーツで頑張る」こと、受験の場合は、「ストレスを社会的に価値の高いものにぶつける(受験勉強への専念)」などを指します。
欲求の対処としては、これらのように「防衛機制」と「適応行動」が大切になってきます。
【悩みについて・補論①(欲求階層説)】
欲求は、生理的欲求と社会的欲求の大きく2つに分かれますが、マズローという人はこの欲求を5階層に分けて説明しました。これをマズローの欲求階層説と呼びます。
マズローは、自分の人生で成し遂げたいことを「自己実現欲求」と名付けました。また、自己実現欲求を満たすためには、4つの欲求を満たす必要があると考えました。
まず、「自己実現欲求」が生まれてくるためには、「自尊(承認)欲求」を満たす必要があります。「自尊(承認)欲求」とは、誰かに認められたいという欲求のことです。
次に、「自尊(承認)欲求」が生まれてくるためには、「所属愛情欲求」が満たされる必要があります。所属愛情欲求とは、誰かと精神的につながりたい、愛されたい、などの欲求のことです。
そして、「所属愛情欲求」が生まれてくるためには、「安全・安心欲求」が満たされる必要があります。これは、自分が安全・安心を感じる場所にいられる、という欲求です。いじめがある教室のクラスに所属したい気持ちが出てこないのは、「安心・安全欲求」が満たされていないことの表れです。
最後に、「安心・安全欲求」が生まれてくるためには、「生理的欲求」が満たされる必要があります。生命の維持に必要な欲求だと言われます。食欲、睡眠欲、性欲、排泄欲求などが該当します。人間は、極端な空腹や睡眠不足などの状態では、そのほかの欲求が出てこないということですね。
以上をまとめると、欲求階層説のポイントは4つで、
①「5つの階層」であるということ
②順番が固定されていること
③「生理的欲求」→「安心安全欲求」→「所属愛情欲求」→「自尊(承認)欲求」→「自己実現欲求」という順番になっていること
④前の欲求が満たされないと、次の欲求が表れにくいということが言えます。
もし、自分のやりたいことを実現したい場合には、生理的欲求~自尊(承認)欲求までに目を向けてみると良いのかもしれません。
ちなみに、生理的欲求以外の安心・安全欲求~自己実現欲求をまとめて「社会的欲求」と呼ぶことがあります。また、自己実現欲求以外の生理的欲求~自尊(承認)欲求をまとめて「欠乏欲求」と呼び、自己実現欲求を「成長欲求」と名付けて区別することがあります。
【悩みについて・補論②(葛藤の類型)】
葛藤は、複数の悩みが重なることを指し、レヴィンという人が提唱しました。レヴィンは、欲求を「~したい」または「~したくない」という2つに分類し、それぞれを接近欲求と回避欲求と名付けました。そして、レヴィンは(1)接近―接近型 / (2)接近―回避型 / (3)回避―回避型の3つに葛藤を分類しました。
(1)は「~したい」が重なる欲求、(2)は「~したい」と「~したくない」が重なる欲求、(3)は「~したくない」が重なる欲求です。