【世界経済を理解するために必要な経済の原則(経済の方向)】
経済の世界には、(特別な場合を除いて)前提となる原則が存在します。代表的なものを3つ確認しましょう。
〈①「農業→工業・商業」へ向かう〉
簡単に言うと、「農業よりも工業や商業のほうが儲かる」という理論です。
各国や各地域を分析すると、世界のどの地域でも、最初は農業を充実させるところからスタートします。人々の生命維持という意味では当然の流れです。ところが、農業生産にも一定のところで限界がきて、収入が頭打ちになります。そこで、よりお金を稼ごうとして機械の導入・より効率的に商品を作成しての販売などに切り替えていきます。そうすることで、その国や地域がさらに収入を増やしていくようになります。
〈②「閉鎖→開放」へ向かう〉
国レベルで考えたときに、「世界各国は自国で経済を全て解決しようとはしない」という理論です。要は、どの国も貿易していくことになる、という話です。国が貿易や資本などの取引をしない場合を閉鎖、国が貿易や資本などの取引をしている場合を開放と表現します。そして、閉鎖にも開放にも様々なメリット・デメリットはありますが、基本的に国は開放のほうが効率が良く、閉鎖から開放へ向かいます。
〈③「社会主義→資本主義」へ向かう〉
経済システムは社会主義と資本主義があり、対の関係になっています。
では、社会主義と資本主義の特徴はなんでしょうか。
社会主義は「計画経済・国家中心・国営(国有)」を中心とした経済システムです。基本的には労働者にノルマを課しますが生産意欲が低いという特徴もあります。
一方、資本主義は「市場経済・国民中心・民営(私有)」を中心とした経済システムです。基本的には労働者が競争する形を取るので、生産性が向上しますが、同時に格差も拡大します。
そして、世界全体での競争を考えた場合、社会主義よりも資本主義のほうが生産意欲が高く、経済成長しやすいので、世界各国は社会主義から資本主義へ向かっていきます。
経済の原則である「①農業 → 工業・商業 へ」「②閉鎖 → 開放 へ」「③社会主義 → 資本主義 へ」の3つの前提をもとに各国を確認します。
【中国経済】
中国は改革開放政策を導入しました。「開放=貿易」なので、「閉鎖→開放」のルールに即して、中国も貿易に目を向けだしたという話です。ただし、中国全土を一気に貿易する流れに持って行くのは難しいので、優先的に貿易を行う地域を設定しました。この地域を経済特区と呼びます。
ちなみに、経済特区は内陸部と沿岸部のどちらに設置されたのでしょうか。
貿易を行いやすいのは海沿いですので、沿岸部ですね。
また、中国は社会主義市場経済を導入しました。これは、「生産手段は国有/経営は民間という」仕組みです。「社会主義→資本主義へ」というルールに即して、少しずつ資本主義のような動きを取り入れていきました。
ところが、資本主義による経済成長は「格差拡大」という課題も発生します。つまり、中国国内でもすごく稼ぐ人と全然稼げない人との間で差が生まれるようになったというわけです。当然、所得の面でも大きな格差が生まれるようになりました。
では、所得格差の解消のためには、どのような方法が考えられるでしょうか。
中国が取った戦略は「格差の勝ち組に圧倒的に稼いでもらう」という方法です。先に格差の勝ち組の富を増やして余った富を格差の負け組に分配することで、結果として国全体が豊かになるという発想のために、格差の勝ち組に圧倒的に稼いでもらおうとしました。この発想を先富論(トリクルダウン)と呼びます。トリクルは雫という意味なので、格差の勝ち組のコップから雫があふれ出て格差の負け組に雫が行き渡るイメージです。
ちなみに、日本やヨーロッパの国々などの場合は格差の下側の人達の「社会保障を充実させる」という選択肢を取ることもあります。
また、経済成長をする場合、特に工業中心の経済成長となると工場のガスを出すなどの環境汚染がセットでついて回ることがあります。
さらに、格差拡大によって、格差の負け組が生活に困窮して様々な行動を取ることにより、治安が悪化することも予想されます。
なお中国は、イギリスから香港を、ポルトガルからマカオを返還されたことによって、1つの国に中国の社会主義と香港やマカオの資本主義という2つの制度が併存する形になりました。これを、一国二制度と呼びます。
近年の中国の経済成長はめざましく、GDPが2位になるくらいまで伸びてきています。そして、中国は「一帯一路構想(アジアとヨーロッパをつなぎ、物流を促進する)」を展開したり、「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」を導入して「人民元を国際化すること」を目指したりする動きが見られます。
【新興国の経済】
日本は景気が低迷していますが、どうすれば経済成長できるのでしょうか。
経済成長の方法を検討する際に、実際に経済成長している国をヒントにすることが考えられます。そんな「経済成長中の国」を新興国と呼ぶと思って下さい。
新興国は、資源が豊富であること、人口が多いために労働力が豊富で市場としても有望であること、労働力が安価(給料が安い)であることなどが特徴としてあげられます。これらの特徴を持って急激に経済成長している国々をBRICSと呼びます。(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国の頭文字を取るとBRICSになります。)
ただし、日本は資源がなく、人口が増えず、労働力が安価ではないため、BRICSとは違う戦略として「モノではなく、ヒトという資源の確保をする」ことが考えられます。(人的資源と呼ばれます。)そして、人的資源の質を高めることによって世界で日本が勝てるようにしていくことが大事だとされています。つまり、「教育」を充実させて人的資源の質を高めていくことが、日本を経済成長させる選択肢の1つとして考えられます。
また、NIES(新興工業経済地域)と呼ばれるエリアで工業が盛り上がることがあります。なかでも、アジア地域のNIESをアジアNIESと呼び、韓国、台湾、香港、シンガポールが該当します。これらの国々は、工業製品の輸出によって成長していきました。ところが、アジア通貨危機(タイの通貨バーツの暴落)によって、アジアNIESが衰退しました。そこで、アジアNIESの国々はIT化の推奨に切り替えて回復しました。
さらに、近年はASEAN諸国にも注目が集まっています。特にベトナムでは「ドイモイ(刷新)」政策を導入し、成長しました。これは、「国を社会主義から資本主義へ」切り替え、外資を導入するというものでした。
【BRICSの経済】
中国以外の4国に注目します。
ブラジルは、輸出を拡大させること、国内の消費を増やすことの2つを重点的に行い、経済を活性化させています。ただし、そのような状況の中で格差も拡大し、貧困層はスラム(不良住宅地区)を作る動きも出てきて問題となっています。
ロシアは、資源輸出を中心に経済を活性化させています。ただし、資源の価格は世界経済やロシア経済と連動することが多いため、不安定さも抱えていると言われています。
インドは、IT産業の育成に注力して経済を活性化させています。一方で、人口が10億人いるような状態のため、多くの貧困層は継続して貧困の状態が続いていると言われています。
南アフリカは、民主化が進んだことと、鉱業を活用したことで国を成長させようとしましたが、多くの貧困も残っていると言われています。
はたして、世界各国はこれからどのような政策を展開していくことが求められるのでしょうか。