6-6. 日本という国の働き方を考える(現代の雇用・労働問題)

仕事ができない人は給料を下げてもいいのでしょうか。

仕事ができる人が給料を上げるのは普通かもしれませんが、仕事が出来ないからといって給料を下げたらその人の生活できなくなるかもしれません。
仕事ができなくて生活が苦しくなるくらい給料が下げられてしまうのは、仕事ができないその人の自己責任なのでしょうか。

 

【日本的経営方式の変化】

日本の雇用環境は日本的労使慣行と呼ばれる独特なものでした。

日本的労使慣行の特徴は「終身雇用」で「年功序列型賃金」だということです。

終身雇用は定年まで雇用を続けること、年功序列賃金は企業に勤めた年数に応じて給料が上がっていくことを指します。
つまり、日本の企業は一度採用した労働者をクビにせず、給料を高め続けるという特徴があります。
そのため、最初にどの企業に入るかがとても大切で、長くその企業にいたほうが、給料が増えやすいというわけですね。

ちなみに、その他の特徴として組合が企業別であること、新卒一括採用を行うことなどがあげられます。

 

ところが、現在は日本的労使慣行が崩れつつあります。

バブル経済以降、日本は不景気が続いたため、企業にも終身雇用で年功序列型賃金を維持する余裕がなくなってきました。(実際、終身雇用で年功序列賃金だとクビになることもなく、仕事が適当でも給料は上がっていくわけですから、企業でやる気がない人が出てくることも想像できます。)

そのため、企業によるリストラ(雇用調整)が始まりました。そして、1つの企業で一生を過ごすという発想が徐々に難しくなり、他の企業への転職を重ねる人達も出てくるようになりました。

このように、労働者が様々な職場へ移るようになる現象を雇用の流動化と呼びます。

 

このような流れを見ると、やはり仕事が出来ない人がクビになるのは仕方ないのでしょうか。

 

一方で、仕事が出来る人とは、具体的にどんな人でしょうか。

 

【雇用の流動化と雇用条件の格差拡大】

雇用の流動化では実際にアルバイトや派遣労働者などの非正規雇用者が増加しました。

特に、派遣労働者については労働者派遣法という法律が改正されたことを受けて、正規雇用ではなく派遣労働者として採用して良いという業種が製造業などを中心に増えました。

さらに、企業の余裕のなさから、企業が簡単に労働者を採用しなくなっていることもあり、若年層のフリーターやニートが増加しています。

そこで、改めて「仕事ができる」を考えます。

 

ここでの仕事ができる人とは、「仕事をこなす何かしらのスキルを活用できている人」と「その仕事に対する経験を積んで幅広く効率的に仕事を進められる人」の2つだと思って下さい。

なので、逆を考えると仕事が出来ない人も見えてきますね。
そもそもスキルを活用する必要の無い仕事であれば、基本的には誰がその仕事をしたっていいわけです。
つまり、単純労働は雇用の流動化の波を受けやすくなります。

また、経験をまだ積めていない人と言えば当然若者です。
そのため、若者はフリーターニートになってしまう可能性が高いというわけです。

 

これらを踏まえて考えると、はたして、フリーターやニートの増加は、本当にその人達の自己責任なのでしょうか。

 

なお、雇用環境については、こんな意見もあります。
「フリーターやニートになっても、好きでその仕事を選んでいるのならば問題ないのではないか」という考えです。
ところが、非正規雇用者については低賃金であることの指摘があり、働いているのに貧しいという衝撃の状況にあります。このような非正規雇用者の低賃金の状況ワーキングプアと表現します。

しかも、ついに正規雇用者の間でも給料に格差が出てきました。
代表的な給料制度に職能給と呼ばれるものがあります。
これは職務(仕事内容)と仕事を着実にこなせるその人の能力の2つで給料を決めるという方法です。つまり、その人の「勤めた年数」ではなく、「仕事内容と能力」に応じて給料が決まるようになったということです。だんだんと成果主義に近づいてきています。

また、雇用の対策として、1つの仕事を複数に分けて、雇う人を増やすという考え方ワークシェアリング)がありますが、本来1人で1つの仕事ができるという人からすれば迷惑な話でしょう。

また、ワークライフバランスという考え方も出てきました。仕事と生活の調和を図りましょうという考え方で、労働時間が長いと言われている日本人にとって時短につながる期待があるという意味で必要な考え方かもしれません。
ただし、残業の縮減などを目標とすると、ワークライフバランスによって働きたくても働けないという可能性もあり、日本の労働生産性の観点から議論も発生しています。

さらに、同一労働同一賃金(同じ労働内容であれば、正規や非正規などに関係なく同じ給料を払うという考え方)が叫ばれていますが、実現が難しい現状もあります。

 

【労働環境と労働問題】

これまでの話のように、日本の労働環境は厳しくなっているのが現状です。だったら仕事を辞めればいいじゃないかという人もいますが、自分の能力や環境などを考えると簡単に職場を変えることができない、なんて人もいるでしょう。

その結果、労働者が資本家に強く言うようなことができず、近年は労働問題と呼ばれる社会問題も発生しました。

代表的な例は残業です。
日本は、働き方改革などで少しずつ残業を改善しようとしていますが、それでも残業が多い国です。

しかも日本の場合は残業として働いているにもかかわらず、給料がでないということも普通にありえます。(本当は残業代を出さないのは違法なのですが。)このように給料が出ない残業サービス残業と呼び、実際にサービス残業の増大などを含む職場環境が劣悪な企業をブラック企業と呼んで社会問題となりました。

ブラック企業の影響として、ブラック企業に耐えられず辞めてしまうことなどから失業者の増加、辞める判断ができず死んでしまう過労死の発生などがあげられます。

本当に失業者の増大や過労死は自己責任なのでしょうか。そこで、以下のケースを考えます。

〈ケース〉
ある開業医がいました。このお医者さんは素晴らしく有名で、地域でも人気のお医者さんでした。このお医者さんが開いている病院は9時から18時までで1時間の休憩を取る1日8時間労働で労働基準法に適した病院でした。ところが、日本には医師法という法律があり、救急の患者が来た場合には対応しなければいけないことが明記されています。そのお医者さんは、人気で正義感もあったので救急患者にも対応していました。すると、ある日そのお医者さんは診察室で倒れていて、結果的に死んでしまいました。原因は過労です。
このケースに対して、過労死の医師は自己責任である、と言えるのでしょうか。

 

【現代の労働問題への対策例】

現代では、労働問題の対策として法整備が考えられています。

例えば、労働基準法改正によってより柔軟かつ多様な働き方を実現する、
障害者雇用促進法によって民間にも自治体にも一定の障害者雇用枠を設ける
男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法によって男女ともに働きやすい環境を作る、
育児・介護休業法の整備によって仕事とともに子育ても充実できるようにする、
などが考えられます。

ただし、これらを全て実現できたとしてもブラック企業や過労死が完全になくなることはないでしょう。

そこで、今後は自分自身のキャリアなどを考えながら、「働くこと」への注目が必要となります。

 

はたして、人々はなんのために働くのでしょうか。

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