企業の偉い人、会社で働く大人、政治にかかわる人など、多くの立場の人達が「景気が良い」ことを願います。
なぜ、多くの人達は景気が良くなることを願うのでしょうか。
はたして、「景気が良い」ことのメリットってなんなのでしょうか。
そもそも「景気が良い」とはどういうことなのでしょうか。
【「景気が良い」とはどういうことなのか】
「景気が良い」ことを、一般に好況と呼びます。逆に、「景気が悪い」ことを、一般に不況と呼びます。(ちなみに、急激な不況を恐慌と呼びます。)
また、景気は好況から不況へ向かうことがありますが、これを一般に後退と呼びます。さらに、不況から好況へ向かうこともありますが、これを一般に回復と呼びます。
つまり、景気は 好況 → 後退 → 不況 → 回復 → 好況 … のサイクルを繰り返します。このサイクルを景気循環と呼びます。
本題ですが、「景気」とはなんでしょうか。
これは、「お金が世の中を出回る勢い」のことを指します。そのため、「景気が良い」とは、「お金が世の中を出回る勢いが良い」ということになります。もう少し柔らかい表現をすると、「多くの人が多くのお金を使うこと」と考えてもらえればOKです。「消費が多い」という言い方でも良いかもしれません。とにかく、たくさんの人がたくさんのお金を使って、世の中でたくさんのお金が出回っている状態が景気の良い状態です。
では、実際に景気を良くする(多くの人がお金を使う)方法は、何が考えられるのでしょうか。
景気循環には「景気循環を引き起こす要因」と「景気循環の速さ(周期)」の2つの視点に注目すると大きく4種類あり、それぞれに発見した人の名前をつけて「~の波」と表現しています。
1人目は「キチンの波」です。
キチンは、企業の在庫投資が景気循環に影響を与えることを発見しました。なお、在庫の景気循環の周期は約40か月とされます。
2人目は「ジュグラーの波」です。
ジュグラーは、企業の設備投資が景気循環に影響を与えることを発見しました。なお、設備投資の景気循環の周期は約10年とされます。
3人目は「クズネッツの波」です。
クズネッツは、建築物の需要が景気循環に影響を与えることを発見しました。なお、建築物の需要の景気循環の周期は約20年とされます。
4人目は「コンドラチェフの波」です。
コンドラチェフは、技術革新が景気循環に影響を与えることを発見しました。なお、技術革新の景気循環の周期は約50年とされます。
【景気を良くする方法(基本的な考え方)】
景気を良くする(多くの人がお金を使う)方法の一般的な例として、3つ紹介します。
1つ目の方法は、世の中の通貨量を増やすことです。
通貨とは世の中で流通している貨幣のことを指します。要は、普段使っているお金のことです。世の中全体のお金の量が増えることで人々の手元に残るお金が増え、結果的に多くの人がお金を使うだろう、という発想です。
この発想を国として具体的に実行する政策は「金融政策」と「財政政策」の大きく2つです。(金融政策と財政政策の詳細は別で説明しています。)
2つ目の方法は、付加価値を形成することです。
例えば、お昼ご飯を買おうと考えたときに、100円の食パンと130円のカレーパンが売っていた場合、どちらを購入するでしょうか。
多くの人は、130円のカレーパンの購入を考えたのではないでしょうか。(ちなみに、あるアンケートで大学生の好きなパンのランキング第1位はカレーパンだそうです。)
でも、多くの人が食パンを買わずにカレーパンを買うのはヘンなことのはずです。本来、「市場のしくみ」という「需要」を考えれば、人は「価格が安いほどたくさん買う」という大前提がありました。だとしたら、人々はみんな食パンを選択するはずです。でも、多くの人は価格ではない部分に注目して購入しています。これが付加価値です。付加価値とは、他にはないプラスの要素という意味です。食パン+カレー=カレーパンだとするならば、カレーが付加価値となるわけです。
そうです、人は付加価値に魅力を感じれば価格が多少高くても買ってくれるというわけです。企業の商品開発などは、この付加価値を生み出すところが腕の見せ所になる、というわけですね。
3つ目の方法は、インフレーション(物価上昇)の実施です。(ちなみに、反対をデフレーション(物価下落)と言います。)
なぜ、インフレーション(インフレ)が景気回復につながるのでしょうか。一般的に考えれば、モノの値段が高いほうが商品が売れず、景気が悪くなるイメージがあります。
そこで、インフレをもう少し具体的に分析しましょう。
そもそも、なぜ物価は上昇するのでしょうか。
それは、「物価を上昇させても人々が買ってくれるくらい、人々の需要や消費が増えているから」です。
では、なぜ、家計の需要や消費が増えるのでしょうか。
それは、「家計の収入が実際に増えているから」です。人々の収入が増えれば、手元に残るお金も増え、「これだけお金が増えているなら、商品を買ってもいいか」と思うようになる、というわけです。
では、なぜ、家計の収入は増えるのでしょうか。
それは、「企業の儲け(利潤)や預金が増えているから」です。企業は、儲けが増えたりなにかしらの方法で手元の預金が増えたりしたときに、一部を働いている労働者(家計)に還元することをします。
では、なぜ、企業の儲け(利潤)や預金が増えるのでしょうか。
それは、「付加価値のついた価格の高い商品が売れているから」です。つまり、物価上昇の状態でも多くの家計が商品を買ってくれれば、企業は十分に儲けることができるわけです。
これら一連の内容をまとめると、
企業の利潤・預金増 → 家計の収入増 → 家計の需要・消費増 → 物価上昇 → 企業の利潤・預金増 …
という流れができますね。この流れのことを一般に好況と呼びます。そのため、逆も考えられますね。
企業の利潤・預金減 → 家計の収入減 → 家計の需要・消費減 → 物価下落 → 企業の利潤・預金減 …
という流れも想定でき、このような流れを一般に不況と呼びます。
この流れから分かることは大きく3つです。
1つ目は、「企業の儲け、預金、家計の収入、家計の需要、消費のどこに影響を与えても景気が良くなる/悪くなる可能性がある」ということです。
好況の循環を考えればわかりますね。ちなみに、好況または不況に日本銀行が通貨の面から影響を与えることを金融政策と呼び、政府の政策の面から影響を与えることを財政政策と呼びます。
2つ目は、「なにかしらの要因で、好況が不況に/不況が好況に転じる可能性がある」ということです。
物価上昇を続けても、あるタイミングで物価が上昇しすぎると、さすがにその値段じゃ買わないよね、といって物価下落に転じる可能性があります。また、企業によっては企業の利潤が増えても、利潤の一部を社員の給料に反映させず、社員の給料を減らすということだってするかもしれません。すると、家計の収入は減少に不況のループに入る可能性も考えられます。
このように、なにかしらの方法で好況のループから不況のループに突入することもあれば、不況のループから好況のループに入ることもあるわけです。
ちなみに、好況のループから不況のループに入ることを後退と呼び、不況のループから好況のループに入ることを回復と呼びます。
3つ目は、「インフレによる好況は、需要が増加することが前提である」ということです。
実は、インフレには2種類あります。1つは、今まで見てきたような好況で需要が増加していることによるインフレの継続です。もう1つは、商品を作るのに必要となる費用が高くなってしまい、商品自体を高く販売せざるをえないことによるインフレです。前者をディマンドプルインフレ(需要が引き上げるインフレ)と呼び、一般的に良いインフレとも言われます。一方で後者をコストプッシュインフレ(費用が押し上げるインフレ)と呼び、一般的に悪いインフレとも言われます。
景気を良くする基本の方法例は、通貨量、付加価値、インフレの3つです。
もちろん、景気回復はそんな単純な話ではないですが、景気回復をより深く学習しようと思ったら、高校レベルを超えて大学の経済学を学ぶ必要が出てきます。
【インフレは生活にどのような影響を与えるのか】
インフレとは「リンゴ1個100円が500円になりました」というような物価の上昇を指します。この物価上昇のポイントは「お金の価値が下がる」ということです。1000円を持っていた場合、リンゴ1個が100円であれば10コ買えますが、リンゴ1個500円になるとリンゴは2個しか買えません。つまり、リンゴが10個→2個しか買えなくなったくらいお金の価値が下がってしまったと考えられることになります。そのため、インフレは商品の買える量が減るということにもつながります。また、「お金の価値が下がる」ということは、それだけ買える商品が少なくなってしまうため、貯金を崩して生活している人にとっては苦しくなるでしょう。逆に、借金をしている人にとっては「お金の価値が下がる=借金の価値も下がる」ということにもつながります。つまり、インフレは貯金や借金の減少も同時に引き起こします。
ちなみに、デフレはインフレの逆なので、現象も全てインフレの逆で考えることになります。
つまり、デフレでお金の価値が上がり、商品の買える量が増えることになります。
また、デフレで貯金や負債は増えることにもつながります。