2-4. 憲法で守られる経済活動とは(経済活動の自由:財産権/居住・移転・職業選択の自由と公共の福祉)

「コンビニを開きたい」、「ネットでお店を始めたい」、「引っ越して別の仕事に就きたい」など、人々は毎日あらゆる場面で「経済活動の自由」に守られながら生活しています。

しかし、経済活動の自由は「無制限の自由」ではありません。
森林法や薬事法のように、安全や公平を守るために、あえて自由を制限する法律もあります。
そのとき、憲法はどこまで自由を認め、どこから制限をかけるのでしょうか。

この記事では、次の3つの判例を手がかりに、経済活動の自由のポイントを整理します。
①森林法・共有林分割制限規定(財産権の保障)
②薬事法薬局開設距離制限(居住・移転・職業選択の自由)
③成田空港問題(公共の福祉)

「経済活動の自由」と「公共の福祉」の関係を、判例で理解して確認します。

【経済活動の自由とは(憲法が守る2つの権利)】

経済活動の自由は、2つの自由を保障することを指します。

1つは、「財産権の保障」で、
もう1つは、「居住・移転・職業選択の自由」です。

それぞれの権利を確認します。

 

 

【財産権の保障(森林法・共有林分割制限規定)】自分の財産をどう使うかを守る判例

日本の憲法上、個人の財産の所有や利用の自由について、公権力が制限しないことになっています。

当然といえば当然ですが、これが裁判ではどのような扱いになるのでしょうか。

 

事件のあらすじと争点 ― 共有林の分割を禁止することは「財産権の侵害」か

[判例:森林法・共有林分割制限規定
 ある2人の兄弟がいました。2人兄弟は父からそれぞれ山林を2分の1ずつもらいました。(2人で共有する土地としてもらいました。)ある日、兄が弟の土地に入って森林を伐採してしまったために弟が怒り、森林を半分ずつに分けて保有したいと話をしましたが、兄は「森林法に、共有している森林を分割して持つことは認められない」と記載されていることを理由に拒否をしました。そこで、弟は財産権の保障を理由に提訴しました。はたして、この状況で土地をそれぞれが持つようにしたい弟の言い分は通るのでしょうか。(土地を分けていいのでしょうか。)

 

この判例から分かる「財産権の保障」と公共の福祉のバランス

結果は、「分けてもいい」ということになりました。日本国憲法に財産権の保障がある以上、分割に制限があることはおかしいとして、この裁判の後に、森林法の分割制限規定は削除されました。

財産権は強く守られるが、公共の福祉の名の下でも無制限には制約できないことが分かります。

 

 

【居住・移転・職業選択の自由(薬事法薬局開設距離制限)】仕事を選ぶ自由を守る判例

居住・移転・職業選択の自由とはどんな権利か

名称の通りで、人はどこに住んでも、どこに移転しても、どのような職業を選択しても、その人の自由である、というものです。
(職業選択が自由なので、自己の選んだ職業を営むことができる営業の自由も当然含まれます。)

これをもとにした裁判で、特に職業選択の自由に注目します。

 

薬局距離制限事件のあらすじと争点 ―「近すぎる薬局はダメ」?

[判例:薬事法薬局開設距離制限

ある人が薬局を営業しようとして県に申請したところ、薬局の営業許可が拒否されました。理由は「申請しようとしている薬局が、他の薬局と近すぎる」というものでした。距離が近すぎると安売り競争が発生してしまい、不良薬品が出てしまうかもしれない、という懸念です。そこで、ある人は「薬局の距離によって営業許可が拒否されるのは職業選択の自由に違反している」として訴えました。はたして、薬事法にある薬局の開設に距離を設ける規定は憲法に違反しているのでしょうか。

 

最高裁の結論と、規制が合憲か違憲かを判断する考え方

結果、不良薬品を理由に距離を一定程度取るという規定は難しいとして、職業選択の自由が勝利しました。(薬事法の薬局開設距離制限は、その後削除されました。)

特に許可制のように強い制限には、重要な公共の利益と、必要かつ合理的な規制であることが求められます。
この事件では、その合理性が認められないとされたわけです。

 

 

【注意:「公共の福祉」と「経済活動の自由」がぶつかるとき】権利どうしを調整するための考え方

「公共の福祉」とは何か――権利どうしのぶつかりを調整するルール

憲法では「公共の福祉」という考え方があります。

世の中では、ある権利とある権利が衝突することが想定されます。その際、他人との権利や利益の調整することで、おとしどころを作ろうと考えます。

このように、「他人の人権を守りつつ、社会全体の幸せを追求」する考え方を公共の福祉と呼びます。
人権を守るために、一部の人の人権を制限することが考えられる、ということです。

 

成田空港の滑走路問題――双方が納得する落としどころとは

[判例:成田空港問題]

飛行機が飛ぶためには滑走路が必要です。その滑走路を成田空港が作ろうとしたところ、どうしても滑走路に住民の土地が入ってしまいます。そこで、成田空港は住民にどいてもらうことをお願いしましたが、住民はどくことを拒否しました。そこで、裁判で滑走路をどのようにするか、という議論を行うことにしました。

 

結論は、住民の土地を避ける形で滑走路が作られました。
空港側と住民側がお互いに納得する形に落ち着いたわけですが、これが公共の福祉の具体例としては有名です。

このような公共の福祉は、経済活動の自由とぶつかることがあるため、注意が必要です。

 

経済活動の自由と公共の福祉がぶつかるときに考えるべきこと

経済的自由と公共の福祉がぶつかるときは、何の権利とどんな公共の利益が衝突しているのかをはっきりさせ、そのうえで目的の正当性、手段の必要性・合理性、制限の程度、代わりの手段の有無を比べて考えることが大切です。

 

【あわせて読みたい】

 

 

〖※参考:〗経済活動の自由と公共の福祉のまとめ

経済活動の自由の概要

– 経済活動の自由には、
「財産権の保障」と「居住・移転・職業選択の自由」がふくまれる。
– どちらも憲法が強く守る権利だが、公共の福祉のために一定の制限を受けることもある。

 

森林法・共有林分割制限規定の事件

→ 財産権への制限が、目的に比べて行き過ぎだとして違憲(憲法29条2項違反)。

 

薬事法・薬局開設距離制限事件

→ 職業選択の自由への制限の「必要性・合理性」がなく、よりゆるやかな手段も考えられるとして違憲(憲法22条1項違反)。

 

経済活動の自由に制限をかけるときの視点

① 何のための規制か(目的)
② 本当に必要で合理的か(必要性・合理性)
③ どれくらい強い制限か(制限の程度)
④ 他にもっとゆるやかな手段はないか
を比べて、権利の保障と公共の福祉のバランスをとることが大切だ、と押さえます。

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