1-6. 国のリーダーは誰が決める?大統領制・議院内閣制・民主集中制でみる世界の政治体制

以下の質問に、どのような答えを持ちますか。
ある国があり、そこに「国のリーダー」「国会議員」「国民」の3種類の人々が住んでいました。
そんなある国で ”その国のリーダー” を決めるとしたら、A~Cのうち、どの立場の人達が決めるのが最もよいのでしょうか。A 国民が直接国のリーダーを決める
B 国会議員が代表で国のリーダーを決める
C そもそも同じリーダーがずっと権力を握り続ける

 

ちなみに、この質問に対しては多くの人が「リーダーは国民が決めるべきだ」と考えるようです。

もし、そうだとしたら、リーダーを国民が決めない日本の政治システムに不満を抱えているということになるのでしょうか。

 

はたして、リーダーは誰が決めるべきなのでしょうか。
また、実際に世界の国々はリーダーをどうやって決めているのでしょうか。

▶ 先に政治システムの全体像を確認したい方はこちら(国民主権・議会制民主主義・多数決と権力分立)をご覧ください。
▶ 「そもそも政治って何?」から整理して、世界の制度比較に入りたい方はこちら(政治ってなに?政治のしくみと民主政治の成立)をご覧ください。

 

 

  1. 【大統領制(アメリカの例): 国民がリーダーを選ぶ政治体制】
      1. 大統領制の基本――「国民がリーダーを選ぶ」しくみ
      2. 教書送付権と法案拒否権――大統領は何ができるのか
      3. 拷問禁止法案のケースから考える「国民が選んだリーダー」の重さ
  2. 【アメリカの現在の政治制度(システム): 二大政党制・連邦議会・大統領選挙のしくみ】
      1. 共和党と民主党の二大政党制
      2. 上院・下院と議会の役割(条約・弾劾など)
      3. 大統領の任期と選び方――大統領選挙人と勝者独占方式
      4. 大統領制のまとめ
  3. 【議院内閣制(イギリスの例): 国会議員がリーダーを選ぶ政治体制】
      1. 議院内閣制の基本――議会が首相を指名するしくみ
      2. リクルート事件から考える「議院内閣制の弱点」
  4. 【イギリスの現在の政治制度(システム): 下院優位と二大政党制・影の内閣】
      1. 上院・下院と下院優位の原則
      2. 労働党・保守党の二大政党制と影の内閣(シャドーキャビネット)
      3. 国務大臣の兼職と司法制度(最高裁と違憲審査権の有無)
      4. 議院内閣制のまとめ
  5. 【民主集中制(中国の例): 共産党による一党支配の政治体制】
      1. 民主集中制とは何か――国家が計画的に管理する政治体制
      2. 中国共産党の一党支配と経済成長の評価
      3. 天安門事件と独裁のリスク
      4. 民主集中制のまとめ
      5. 開発独裁という政治体制
  6. 【フランス・ロシア・ドイツの政治システム(2つの制度の並存): 大統領制+議院内閣制の組み合わせ】
      1. 大統領制+議院内閣制を併用する国々
      2. フランス――強い大統領とコアビタシオン(保革共存政権)
      3. ロシア――議会による大統領弾劾決議権
      4. ドイツ――象徴的な大統領と首相中心の政治
    1. 【※参考:「国のリーダーは誰が決めるべきか」のまとめ】
      1. このまとめで確認すること
      2. 1.大統領制(アメリカ型)のポイント
      3. 2.議院内閣制(イギリス・日本型)のポイント
      4. 3.民主集中制(中国型)のポイント
      5. 4.大統領制+議院内閣制を組み合わせた国々
      6. ポイントのまとめ

【大統領制(アメリカの例): 国民がリーダーを選ぶ政治体制】

まずは、「国民がリーダーを選ぶ」代表的な仕組みである大統領制から確認します。

 

大統領制の基本――「国民がリーダーを選ぶ」しくみ

アメリカは大統領制を採用し、厳格な三権分立を実現させています。
ここでの三権は「大統領」「議会」「裁判所」を指します。

ちなみに国民は、議会の議員と大統領を選ぶ人の両方を投票で決定します。つまり、間接的ではありますが大統領も国民が選ぶことになるわけです。

 

教書送付権と法案拒否権――大統領は何ができるのか

また、大統領は教書と呼ばれる自分の意見を示したものを議会に送付できる教書送付権と、議会が提案してきた法案を拒否する法案拒否権の2つを持っています。(あくまでも拒否する権利しかないため、大統領は法案を提出する権利は持っていません。

 

では、もしあなたがアメリカ大統領だとしたら、以下のケースに対して法案拒否権を発動させるでしょうか。

 

拷問禁止法案のケースから考える「国民が選んだリーダー」の重さ

〈ケース〉
アメリカでは、テロに関わった疑いのある人をテロ容疑者として拷問するというルールがありました。しかし、あくまでも容疑者という段階で拷問することになるため、誤って拷問してしまった場合の問題や、そもそも拷問を実行すること自体に問題があるとも考えられます。(実際に日本では、憲法で「拷問の禁止」をうたっています。)
そこで、アメリカでテロ容疑者を拷問することを禁止する法律を作ることが議会で考えられました。この法案を認めますか、それとも拒否しますか。(法案を認める=拷問に反対/法案を拒否=拷問OK)

 

このケースに対して、当時のブッシュ大統領は法案拒否権を発動させました。

当然、拷問を認めるという判断を大統領がして良いのか?という議論も生じますが、思い出してほしいのが「法案拒否した大統領を決めたのは国民」だという事実です。それが大統領制なのです。そこで、もう一度考えましょう。

国のリーダーは誰が決めるべきでしょうか。

 

 

【アメリカの現在の政治制度(システム): 二大政党制・連邦議会・大統領選挙のしくみ】

アメリカの大統領制は、3つのシステムに注目する必要があります。

 

共和党と民主党の二大政党制

1つめは「政党」についてです。
アメリカは共和党民主党二大政党制を採用しています。
2021年から2024年までは民主党のバイデン大統領ですが、2025年からは共和党のトランプ大統領が就任しています。
(ちなみに、共和党は小さな政府で伝統を重視する、民主党は大きな政府で福祉や人権を重視する、という特徴があります。)

 

上院・下院と議会の役割(条約・弾劾など)

2つめは「議会」についてです。
議会は上院と下院に分かれ、上院は各州2名、下院は各州の人口に比例して議員数が決定するという特徴があります。また、議会の上院は大統領が締結した条約の同意を行ったり、下院は大統領の弾劾権(大統領をやめさせる権利)を持っていたりします。(ただし、大統領を議会が選んでいるわけではないため、大統領の不信任決議の権利は持っていません。

 

大統領の任期と選び方――大統領選挙人と勝者独占方式

3つめは「大統領」についてです。
アメリカの大統領は任期4年で三選禁止(2期連続までしか大統領になれない)とされています。

また、大統領の決め方は州ごとに存在する大統領選挙人という人が共和党と民主党のどちらの大統領にするか投票して決めることになりますが、各州の大統領選挙人を誰にするかをその州の州民が投票で決めるしくみをとっています。

なお、大統領選挙人が共和党か民主党のどちらかを選んだ場合、その州は全員が共和党または民主党を選んだという扱いになります。例えば、「ワシントン州内での多数決の結果、共和党が大統領にふさわしいということになった場合、ワシントン州の人達は全員が共和党に投票したとみなす」という選挙の制度を採用しています。このように、その州で勝った政党がその州の票を全て獲得する制度を勝者独占方式と呼びます。

つまり、アメリカの大統領選挙は「大統領選挙人による勝者独占方式」ということが言えます。

また、「大統領選挙人が大統領を選ぶ」という意味では間接選挙ですが、大統領を誰にするかを州民が意思表示できるという意味では、大統領をアメリカ国民が選んでいるとも言えそうです。(日本は、内閣総理大臣を決める人を日本国民が選ぶ、というような制度はありません。)

 

大統領制のまとめ

国民が直接または間接的にリーダーを選び、議会と大統領が厳格に分かれている政治体制を指します。

▶ 日本の三権分立についても確認したい方はこちら(日本の三権文分立の基本的な考え方)をご覧ください。

 

 

【議院内閣制(イギリスの例): 国会議員がリーダーを選ぶ政治体制】

次に、「国会議員がリーダーを選ぶ」議院内閣制を見てみましょう。日本もこのタイプの政治体制をとっています。

 

議院内閣制の基本――議会が首相を指名するしくみ

イギリスは、議院内閣制の代表的な国とされます。

議院内閣制とは、「議会が首相(内閣のリーダー)を指名し内閣が議会の信任を基礎に成立する制度」のことです。
すごく簡単に言うと、議院内閣制は議会と内閣が連帯責任を負う制度であると言えます。そのため、もし内閣が議会からの信任を失った場合、内閣は「総辞職」か「議会を解散する」かのどちらかを選択し、議会と内閣の関係をリセットします。それだけ、議会と内閣が信頼しあっているので、国のリーダーは国民が決めるのではなく、国会議員の中から国会が指名をします。

ちなみに、日本も議院内閣制の代表的な国の1つです。
日本の場合は、内閣総理大臣は国会議員であり、国会に指名された人が内閣総理大臣になっているという意味で、内閣と国会がお互いに信頼しあって、連帯責任を取るようにシステムが作られています。

 

リクルート事件から考える「議院内閣制の弱点」

これらを踏まえ、日本の事例を1つ考えます。

〈ケース〉
日本のある会社が自分たちの会社の今後のために、議員の一部と総理大臣に自分たちの会社の株式を配りました。このようなある会社の行為は許されるのでしょうか、それとも許されないのでしょうか。

 

このケースの場合は、当然ですが許されませんね。(日本ではワイロは違法なので。)

実際に発覚したこのケースによって、当時の首相だった竹下登(DAIGOの祖父)が辞任するなど、大騒ぎになりました。ちなみに、この時に株を配った会社がリクルートという会社だったので、このケースをリクルート事件と呼びます。

リクルート事件は、新聞記者がスクープを出して発覚したそうですが、仮に当時のスクープがなかったとしたら、リクルート事件は表に出てこなかった可能性があります。

つまり、国会議員と内閣が「お互いに内緒にしておこう」となったら、誰も事件を知らない可能性もあるわけです。
そのため、議院内閣制は国会と内閣の信頼関係で成り立っているとも言えますが、議院内閣制は逆に国会と内閣の癒着を生む可能性も否定できないかもしれません。

そう考えると、国会議員にリーダーを決めてもらうのは間違っているのでしょうか。

 

やはり、国のリーダーは、国民が決めるべきなのでしょうか。

 

 

【イギリスの現在の政治制度(システム): 下院優位と二大政党制・影の内閣】

上院・下院と下院優位の原則

イギリスの場合は、議院は上院と下院に分かれていて、下院優位の原則があります。

イギリスの上院は貴族院に近いものがあり、国民が選ぶわけではありません。一方で下院だけは国民が選ぶことになるので、より下院優位の原則が重要になるわけです。それだけ下院優位の原則を重視するのは、上院という議員集団の暴走を防ぐ(国会議員が他の国会議員を抑える)狙いがあるからだとされています。
そのため、首相は日本のような議会による指名ではなく、下院第一党の党首が担うとされます。(なお、イギリスの首相は国王が任命します。日本の首相の任命は天皇です。)

 

労働党・保守党の二大政党制と影の内閣(シャドーキャビネット)

また、イギリスは労働党と保守党の二大政党制を採用しており、野党は政権交代に備えるために影の内閣(シャドーキャビネット)を作るのも特徴です。

 

国務大臣の兼職と司法制度(最高裁と違憲審査権の有無)

そして、イギリスは議院内閣制が強いため、内閣の国務大臣は全員が国会議員を兼任します。
(日本の国務大臣は過半数が国会議員を兼任します。)

なお、司法について、イギリスは上院から独立した最高裁判所を設立していますが、違憲審査権はないとされています。

 

議院内閣制のまとめ

国会議員がリーダーを選び、議会と内閣が連帯責任を負う政治体制を指します。

日本の議院内閣制について先に確認したい方はこちら(内閣とは?内閣と行政権の基本)をご覧ください。

 

 

【民主集中制(中国の例): 共産党による一党支配の政治体制】

さらに、「国のリーダーが権力を集中して持ち続ける」タイプの政治体制として、民主集中制を確認します。

 

民主集中制とは何か――国家が計画的に管理する政治体制

民主集中制とは、国家の運営を国家が計画的に管理するしくみです。

大統領制や議院内閣制のように、国のリーダーを国民や国会議員に決めてもらわず、国のリーダーは常に国のリーダーとして存在し、国の管理を続けたほうがよいのではないか?という発想です。

 

中国共産党の一党支配と経済成長の評価

中国の場合は、共産党の独裁となっています。独裁と聞くとイヤな気持ちになるかもしれませんが、2024年現在はGDPが世界第2位にまで登りつめてくるくらいになりました。これは、中国は優秀なリーダーが続いていることも影響として考えられる、と評価されることもあります。一方で、人権や自由の制限について厳しい批判もあります。
さらに、独裁なので以下のケースも考えられます。

 

天安門事件と独裁のリスク

〈ケース〉
中国で、独裁を続ける共産党に国民が対抗したところ、対抗してきた国民を共産党の人達が殺してしまいました。それでも独裁を続けるべきでしょうか。

 

そんなことがあり得るのか、という疑問を抱くかもしれませんが、このケースには天安門事件という名称がついており、世界的に有名な事件です。ただし、天安門事件が発生した1989年のときの中国のGDPは世界第11位だとされていました。

つまり、天安門事件と現在を比較すると中国が経済成長しているのは事実です。だとしたら、国のリーダーはヘタに国民や国会議員が決めるよりも国のリーダーに任せ続けたほうがよいのでしょうか。

なお、中国での国権の最高機関は全国人民代表大会だとされます。この組織が中心となって、話し合いの内容がまとめられます。

 

民主集中制のまとめ

リーダーや政党が権力を集中し、長期的に国家を管理する政治体制を指します。

 

開発独裁という政治体制

ちなみに、政治体制には開発独裁と呼ばれるものもあります。これは、軍事政権などで人権が無視される政治体制で、現在も複数の国で採用されています。

 

理想の政治体制は誰に決めてもらうことなのでしょうか。

 

 

【フランス・ロシア・ドイツの政治システム(2つの制度の並存): 大統領制+議院内閣制の組み合わせ】

大統領制+議院内閣制を併用する国々

その他の国の政治制度として、フランス・ロシア・ドイツに注目します。ポイントは、「3カ国とも大統領制+議院内閣制の両方を採用している」という点です。

 

フランス――強い大統領とコアビタシオン(保革共存政権)

フランスは大統領の権限が強いとされています。そこで、大統領と首相は別の政党にしようという考え方があり、これをコアビタシオン(保革共存政権)と呼びます。保守の考え方と革新の考え方の両方を共存させるため、保革共存ですね。

 

ロシア――議会による大統領弾劾決議権

ロシアは、議会に大統領の弾劾決議権を認めています。

 

ドイツ――象徴的な大統領と首相中心の政治

ドイツは、政治の中心を首相に任せています。そのため、大統領は象徴的存在となっています。

 

はたして、国のリーダーは「国のリーダー」「国会議員」「国民」のうち、どの立場の人達が決めるべきなのでしょうか。

 

【あわせて読みたい】

 

【※参考:「国のリーダーは誰が決めるべきか」のまとめ】

このまとめで確認すること

・ 大統領制(アメリカ型)のポイント
・ 議院内閣制(イギリス・日本型)のポイント
・ 民主集中制(中国型)のポイント
・ 大統領制+議院内閣制を組み合わせた国々(フランス・ロシア・ドイツ)のポイント

 

1.大統領制(アメリカ型)のポイント

・ 国民が大統領と議会をそれぞれ選ぶ政治体制
・ 大統領は教書送付権・法案拒否権などの強い権限を持つ一方、任期や再選回数に制限がある
・ 大統領選挙は「大統領選挙人による勝者独占方式」という独特のしくみをとる

 

2.議院内閣制(イギリス・日本型)のポイント

・ 国会議員が首相(内閣のリーダー)を指名し、内閣と議会が連帯責任を負う政治体制
・ 日本とイギリスはどちらも議院内閣制だが、イギリスでは下院優位の原則や影の内閣など独自の制度がある
・ 議院内閣制は、国会と内閣の信頼関係で成り立つ一方で、「癒着」を生む危険もある

 

3.民主集中制(中国型)のポイント

・ 国家の運営を国家(共産党)が計画的に管理する政治体制
・ 一党支配のもと、リーダーが権力を集中して長く握り続けることが多い
・ 経済成長などのメリットがあるとされる一方で、人権侵害や言論の自由の制限といった問題も指摘される

 

4.大統領制+議院内閣制を組み合わせた国々

・ フランス・ロシア・ドイツなどは、大統領制と議院内閣制の両方の要素を持つ政治体制をとっている
・ フランス:大統領の権限が強く、コアビタシオン(保革共存政権)が特徴
・ ロシア:大統領に対して議会の弾劾決議権が認められている
・ ドイツ:首相が政治の中心で、大統領は象徴的な存在

 

ポイントのまとめ

ポイントは、「誰がリーダーを決めるか」で政治体制を整理することです。
・ 国民が決める → 大統領制
・ 国会議員が決める → 議院内閣制
・ リーダーや政党が決め続ける → 民主集中制・開発独裁 など

この視点で見ると、世界の政治体制の違いがぐっと分かりやすくなります。

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