「幸せ」とはなにか、古代ギリシア哲学の3人が考えたこと

”効率的に勉強や仕事を進める方法・アイデアをたくさん出しましょう。”

 

この質問に対して、どのようなアイデアが考えられるでしょうか。

あるアンケート調査によると、効率的に物事を進める方法として、「やることの管理」、「スケジュールを立てる」、「効率化のためのシステム・ツールの活用」、「時間を区切る」、「整理整頓する」などがあげられるそうです。

 

ここで注目したいのは「効率的に進める」という点です。「効率的に進める」などのように、頭を使って論理的に物事を進めていく考え方を合理主義と呼びます。合理主義は理性(感情に振り回されず、物事を筋道立てて考えること)を重視することが前提となります。

ギリシアという国では、古代という昔の時代から理性を重視した合理主義が考えられ、代表的な人物が3人登場しました。そのため、ここでは3人に注目していくことになります。(理性のことをギリシア語で「ロゴス」と呼びます。)

そして、古代ギリシアを分析すると、古代ギリシアについて考える根本として「幸せ」に注目していたことがあげられます。つまり、理性で考えた「幸せ」をとても大切にしていたことが分かります。では、

” 理性で考えた「幸せ」とはなんなのでしょうか。”

この答えを古代ギリシアの3人の哲学者から確認します。

 

【ソクラテスの「幸せ」】

1人目はソクラテスという人です。

ソクラテスは考えました。

” 人は、なぜ「幸せ」になれないと感じることがあるのか ” と。

 

ソクラテスによれば、”人が幸せになれない”ことに対する答えは「幸せとはなにか」を知らないからだと考えました。ところが、多くの人が「自分が何が幸せかを知らない」という事実に気づいていないと思いました。

そこでソクラテスは考えました。「自分は何もわかっていない(何も知らない)」という事実を知れば、幸せに目を向けられるようになるのではないかと。つまり、自分が無知であることを知るのが大事だと考え、この考え方を無知の知と表現しました。そして、無知の知を自覚できれば、そこから知ることを愛せるようになると考えました。これを知への愛と表現しました。ただし、これだと1つ見落としている点があります。それは、「そもそも幸せとは何か」という視点です。では、

” ソクラテスの考える「幸せ」とは、具体的になんなのでしょうか。”

ソクラテスが出した答えは、「幸せ」とは「よく生きる」ことの重視である、です。そうなると、当然疑問に思いますね。「よく生きる」ってなに?と。ここで言うよく生きるとは、「立派に生きる」ことを指すと思ってください。では、

 

” 人生でなにをすると、人は「立派に生きる」ことができるのでしょうか。”

 

これもまた、かなり難しい質問ですが、この質問に対するソクラテスの答えは、魂(プシュケー)への配慮でした。魂とは人間の心だと思ってください。つまり、人間である自分自身の心に配慮すべきだとしました。では

 

” どうすれば自分自身の心に配慮することができるのでしょうか。”

 

突然ですが、あなたの好きな人を1人思い浮かべましょう。その人の考えていることで、1つだけ知ることができるとしたら、なにを知りたいでしょうか。

 

ソクラテスは、自分自身の心に配慮するためには、「なにがよいものなのか」を知ることが大切だと考えました。人は、相手のことを知れば、それに合わせて行動できるようになります。同じように、自分自身の心について「なにがよいか」を知ることができれば、自分自身幸せになれる、という考えです。これを善さ(徳、アレテー)を知ると表現しました。では、

 

” なぜ、善さ(徳)を知ることが大切なのでしょうか。”

 

それは、そもそも「徳がなにであるか」を知らないと、徳を行動に反映できないからだとされます。この考え方を「知行合一」と呼びます。そして、徳を知って行動に移せれば幸せになれると考え、これを「福徳一致」と呼びます。

つまり、プラトンは無知の知を前提に、徳が何かを知って行動に移すことで人は幸せになれると考えました。

 

【プラトンの「理想」】

”「(   )が私の理想の人生である。」”

という文章の空欄に、なにを入れますか。そして、その理想の人生はどうすれば実現することができるでしょうか。

 

古代ギリシア哲学の2人目であるプラトンという人は、幸せは理想(イデア)を追求することでした。その中でも「愛の理想(エロス」を追求することだとしました。エロスとは、愛に対する永遠の理想のことを指します。では、

 

” 人間の「理想の恋愛」とは、どのようなものなのでしょうか。”

 

プラトンは、「理想の恋愛」は「理性」で求めるものだとしました。つまり、合理主義にもとづいて理想を追求することに重きを置いたわけですね。(感情だけで激しくいくような恋愛ではないということです。)

 

このように、プラトンは理想をベースに様々なことを考えていきました。

 

※参考:理想をベースとした主張(「理想の徳」と「理想の政治」)

プラトンは、ソクラテスの言う徳について、理想の徳とはなにか?という視点で考えました。プラトンが考えた理想の徳は「四元徳」です。四元徳は、「理性」が「欲望」と「気概」を統制することで正義を実現するという考え方です。

また、理想の政治は哲人政治でした。哲学者が政治のトップに立つべきだという発想です。

 

 

【アリストテレスの「現実」】

古代ギリシア哲学の3人目であるアリストテレスは、幸せの定義のようなものを「形相」と名付けました。形相は個々が持っていて、個々によって違うと考えました。では、

 

” 人間の場合の形相はなんでしょうか。”

 

アリストテレスは、人間の場合は倫理的徳(習性的徳)が形相だと考えました。倫理的徳とは「人柄」のことだと思って下さい。では、

 

” 良い人柄とはなんでしょうか。”

 

これは、人によって答えが違うため様々な解答が予想されますが、良い人柄については、2つのことを注意すべきだとしました。

1つは、「体得が必要」だということです。つまり、その人柄がクセになるくらいまで身につけるべきだという発想です。(体得の理由は、感情に左右されないことが重要だとされるからです。クセになれば感情に左右されずにすむという話ですね。)そうすれば、習性として日頃から対応できるようになります。(なので、倫理的徳を習性的徳とも表現します。)

そして、もう1つは、「中庸を意識する」という発想です。中庸とは、「真ん中を目指すこと」です。極端な人柄にならず、真ん中を目指すべきだとしました。

 

※注意:「中庸」と「中道」

「中庸」とは真ん中を目指すことですが、似た言葉に「中道」があります。これは、仏教の考え方で「両極端を避ける」という発想です。注意しましょう。

 

また、アリストテレスは倫理的徳について2つのことを考えました。

1つめは、「具体的にどんな人柄が幸せか」です。これについてアリストテレスは良い人柄と悪い人柄を考えました。

悪い人柄は、「お金、名誉、快楽など」を追求する人柄だとしました。

一方、良い人柄は、「純粋に理性を働かせることを楽しむ」人柄だとしました。このような人柄を「観想(テオーリア)的生活」と表現しました。

2つめは、「良い人柄に必要なのは、幸せを願い、調整すること」だとした点です。アリストテレスは「友愛」と「正義」という2つを重視しました。友愛とは「他人の幸せを願う」こと、正義とは「全員の幸せを調整する」ことです。これを前提として、こんな質問が来たら、あなたはなんと答えるでしょうか。

 

” アンパンマンは正義でしょうか。”

 

この質問の答えは非常に難しいですが、アリストテレスは「正義」を以下のように考えました。

まず、正義を「全体的正義」と「部分的正義」に分けました。全体的正義は、名称の通りすべてにおいて正義を実現する状態です。一方、部分的正義は、「配分的正義」と「調整的正義」の2つに分けられると考えました。

配分的正義は、「その人の名誉や報酬などで配分する正義」を指し、調整的正義は、「公平になるように調整する正義」を指します。

そう考えたときに、もう一度注目します。アンパンマンは正義なのでしょうか。

お話全てでアンパンマンが正義を実現できているとしたら、全体的正義です。登場するキャラクターに合わせてアンパンマンがいろいろと配分を変えていたら配分的正義です。バイキンマンとかチーズとか、キャラクターに関係なく全員に公平になるように調整したら調整的正義です。

 

まとめましょう。

ソクラテスは、何が幸せかを知り、その幸せになるように行動していくことが大切だとしました。

プラトンは、理想(イデア)を追求することが幸せだと考えました。

アリストテレスは、純粋に理性を楽しむ人柄と、友愛・正義が幸せだと考えました。

 

ソクラテス、プラトン、アリストテレスの3人が、それぞれ「幸せ」について考えましが、今後、より多くの人々が幸せに生きていくためには、どのような考え方が必要なのでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました